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「本業を続けるな、本業から離れるな、中身を変えていけ」で様変わり

~町場の自動車修理工場のホームページに一日100件のアクセスが~

本連載の中で、筆者は、「絶えざるチャレンジ」が元気印企業をつくると指摘し、その事例をいくつか紹介してきた。しかし、どこから手をつけていいかわからないという経営者が中にはいるだろう。そういう経営者に、是非とも紹介したいのが、車のDIYを売り物にして躍進する「ジュントール」だ。

ジュントールの創業者、谷田貝孝一さんは、1988年に自動車の塗装・板金業者として、栃木県都賀町で独立を果たしたのだが、順調だったのは当初だけで、数年もしないうちに限界を感じるようになる。9割がたの仕事は、自動車ディーラーからの紹介だったのだが、バブル崩壊後の不況の中で、車販売が不振におちいったディーラーが、少しでも売上を増やしたいと、自らの手で、板金、塗装までを含めた修理業を手掛けるようになり、受注が落ちこみはじめたのだ。

ディーラーに依存する形態に、創業時から疑問をもっていた谷田貝さんは、なんとか活路を開きたいと考えるのだが、なかなかアイデアが浮かんでこない。そんなときに耳にしたのが、「本業を続けるな、本業から離れるな、中身を変えていけ」の言葉だ。その意味するところを、まず、本業をこのまま続けていいのかどうか考え、その上で、本業で培ったノウハウ、信用をベースに本業から離れないで時代に合わせて中身を変えていけばいいと、理解した谷田貝さんは、自分の仕事に置き換えて考えてみたという。

「自動車の修理で、『世の中の変化に合わせて、中身を変えていく』というのは、どういうことなのかを考えてみました。当時、車の雑誌を毎月二十冊ぐらい読んでいて気がついたのは、『車の色を人と違えて、個性的にしたい』と言う人や、『自分で出来そうな修理を自分でやって修理代を安く済ませたい』と言う人がたくさんいるということでした。私たちの業界では、五十年もの間、素人が手を出すというのは考えられないことでした。しかし、ちゃんとしたスペースと道具、ノウハウがあれば、素人でも塗装や外板修理はそこそこできるのです。当然、素人がやれば、プロの仕上がりとは差が出てきますが、価格は10分の一から5分の一程度ですみます。そこで、自分の車にこだわりと愛着を持って、自分で自分の車の塗装や修理をやりたいと思っているカーユーザーのために、『セルフ板金塗装、車のDIY』を謳い文句に、『レンタルガレージ』のサービスを始めたのです。

ユーザーには、私どもの作業場に隣接するガレージを1時間三百円でお貸しします。そこで、自分の車のへこみや傷の補修、塗装、コーティング、フィルム加工、車検、消耗品の交換、洗車などができ、工具の貸し出しや技術指導は無料です」

谷田貝さんの狙いは、まさに若いカーユーザーのニーズに応えるものだった。1995年に、当時の運輸省が、「車の保守管理はユーザーの自己責任において行える」と決定したことで、ユーザー車検が急速に伸びたのも追い風となった。ユーザー車検が可能になり、パーツも容易に手に入るようになったが、「場所と道具、ノウハウ」を提供するところがなかったことで、『レンタルガレージ』の出番があったのだ。オープン直後から、カー雑誌の取材が相次ぎ、評判が広まるに連れて、北海道、広島といった遠隔地からもお客さんが殺到したと聞く。

いまも自動車板金の仕事は続けているが、ディーラーから紹介されるのは1割程度で、残りは、顧客が自ら訪ねてきてくれているという。あまりにも遠隔地の顧客が多いので、いまは、ゆるやかなフランチャイズシステムで、全国展開を図っており、すでに沖縄、東京、茨城等々、10数カ所で、「レンタルガレージJUNTOHRU」が活動していて、そのホームページには、一日に100件を越えるアクセスがあると聞く。

自動車修理業は、成熟したビジネスで、ディーラーからの参入もあって、既存の独立系の事業者は、厳しくなるばかりだった。そんな業界でも、長年培ってきたノウハウを、時代の変化に対応して中身を変えて生かしていけば、活路が開けることを、谷田貝さんは教えてくれている。

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2003年9月22日 掲載]

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