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「データは売り方を教えてくれない」-繁盛する店舗はここが違う

~現場を重視すればデータは生きる~

繁盛する店としない店、その違いはどこにあるのだろうか。チェーンオペレーションをやっていながら、売れる店と売れない店がある。繁盛する店、繁栄する企業に共通するのは、現場重視の視点だ。なぜ、現場が大事なのか、繁盛店の店長と、サム・ウォルトンの声に、その理由を学ぶ。

最近、ある会社の依頼で、首都圏で評価の高い流通店舗を10数回に渡って連続して視察する機会があった。筆者は、流通業を専門にフィールドワークしているわけではなく、小売業の現場とは縁遠い存在だ。それだけに、ひたすら、顧客の立場で店舗を見て回ったのだが、これほど勉強になったこともない。

イトーヨーカ堂の竹の塚店(東京)、大和店(神奈川)、大井町店(東京)、イオン(ジャスコ)の大和店、品川シーサイド店(東京)、ヤオコーの所沢北原店(埼玉)、狭山店(埼玉)等々、同じ企業がチェーン展開する店舗をそれぞれ複数見て回ったのだが、店によって活気がまったくと言っていいほど違うことには本当に驚いた。

ここでは、本人の名前を明かすことはできないが、筆者が、顧客の立場で一番だと思った店の店長は、いつ行っても売場に顔を出していた。そこで、なぜ、店長自身がそんなに売場に出るのですかと聞いたのだが、その答えは次のようなものだった。

「データは売り方までは教えてくれませんからね」

この店長の会社でも、当然のようにPOS(販売時点管理)を導入しての単品管理を実践している。それだけに、いつどこでどの商品がどれだけ売れたかは、パソコンのキーを叩けばすぐにわかる。しかし、売上数字はデータでわかっても、どういう売り方をすればどれだけ売れるかをデータは教えてくれないというのだ。

小売業の場合、ちょっと売り方を変えたり、売り場を変えるだけで、売上が大きく変化する。どういう売り方をすればどれだけ売り上げが伸びるかは、売り場で試行錯誤を繰り返しながら見つけ出していくしかない、だからこそ、売り場(現場)に出るのだと、その店長は説明する。

例えば、すいか売り場の向きを90度変えただけで売上が1.5倍になるようなケースもあると聞く。ものが売れないといわれるが、このスーパーは着実に売上を伸ばしてきているのだ。

たまたま、世界一の小売業者「ウォルマート」の創業者、サム・ウォルトンの書いた「私のウォルマート商法」という本を読んでいたのだが、同様の指摘があった。氏は何よりも店舗視察を重要視しているのだが、その理由を次の様に説明している。

「コンピュータは、実際に店に出向き、状況を目で見て学ぶことに代わるものではないし、将来も代わらないだろう。言い換えれば、コンピュータはある店がどれほど多く売ったかは教えてくれるが、実際にどれほど多く売れるはずだったかは教えてくれないのだ。だからこそ、わが社では本社の管理職やバイヤーに店に出向くよう、やかましくいっている」

サム・ウォルトンは、コンピュータを必要ないといっているわけではない。それどころか、世界中のどの小売業者よりもIT投資をしていることは周知の事実で、氏自身その効果のほどを本の中にもかなりのページを割いて書いている。しかし、コンピュータで得たデータをより有効に活用するためにも、現場に出向けとサム・ウォルトンはいうのだ。

現場重視の経営を実践する、日産自動車のカルロス・ゴーンは、いまでも六週間に一度は、販売店を回って、現場の声に耳を傾けていると聞く。筆者は、本連載でも度々、「現場第一主義の経営」が、元気印企業をつくると書いてきたが、益々その思いを強くした視察だった。

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2003年8月22日 掲載]

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