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カルビーに見る「ロングセラー商品」誕生の秘密 --その2

~「コモディティー商品」を追いかけると経営はおかしくなる~

コンビニにおける弁当やおにぎりの売れ筋商品の寿命は40日程度だと聞いたことがある。この期間は短くなるばかりだとも聞いたが、こんな時代にあって、ベストセラー商品は、どうすれば誕生させることができるのだろうか。「かっぱえびせん」「ポテトチップス」といったロングセラー商品を持つカルビーを題材にその答えを探ってみたい。

1975年に発売した「ポテトチップス」を、生鮮食品と考えることで、一気に売上を5倍以上に増やしたことは前回書いた。しかし、その快進撃は80年代半ばには行き詰まることになった。松尾社長は、「時代が量から質に転換したのにもかかわらず、量産型でやってきた結果」だと分析するのだが、その打開策は次のようなものだった。

「一番に取り組んだのは、お客様からみて選択の幅をひろげていこうということです。ポテトチップスでいろいろな味のバリエーションを作っていったのですが、これでマーケットが一段広がりました。普及率から選択率へという考えがありますが、豊かな時代になれば、選択肢が多い売場にお客様は足を運ばれるということです。ひとつのヒット商品ができれば、それでずっと飯が食えるわけではありません。売れても改良していかないといけないのです。改良を続けることがロングセラー商品になるのです」

松尾社長は、「ロングセラーの裏には涙ぐましい努力があるのです」と前置きした上で次のように続ける。

「はっきりいえるのは、新しいサービスが伴ったときに初めて、ロングセラーのチャンスがでてくるということです。我々は『ポテトチップス』では後発だったけれども、鮮度管理という新しいサービスをつけたことで、うす塩味のポテトチップスが、ロングセラー商品になるチャンスを得ました。次に、いろいろの味を出しますよ、ということで開発したコンソメパンチもロングセラーになりました。しかし、コンソメパンチの後に出したいろいろな味の『ポテトチップス』は短命でした。なぜなら、ビール味とかガーリック味とかは、コンソメパンチとの対比の中ででてくるのですが、対比の対象、すなわち尺度となる商品を追い越すのは難しいということです。尺度となれる商品はロングセラーだともいえますが、『味変わりでは私がナンバーワンよ』というのを維持するための苦労がまたありますよ。ほかには、『秋ポテト』や『春ポテト』のように、季節限定で出す商品や、『ギザギザポテト』のように、形を変えた商品もあります。いまは、もので新しいというのはほとんどありません。ですから、お客様サイドに立って、新しい価値(サービス)を見出したものが長続きするのです」

カルビーの「ポテトチップス」という名称そのものに変わりはないが、商品の中身は、変わってきていると言うのだ。

「変わり、進化してきています。高級料亭にいくと、メニューが季節毎に変わるでしょう。変わることが高級で変わらないのは大衆なんです。ですから、ロングセラー商品でも、変わらないのは『コモディティー』いくのですが、そんなものを推奨していたら経営がおかしくなってしまいます。人気歌手が、NHKの紅白に選ばれ、人気を維持しようとすると、ヒット曲を出し続けないといけませんが、これと同じなんです。小売業の店頭で、『ポテトチップス』という棚を維持するためには、新しい提案を常にやっていかないといけないのです。これが現在のビジネスですよ」

最近のカルビーは、こうした考えを具現化して、年間40もの新商品を開発し、店頭でのテスト販売を繰り返しているという。40のうち何品が生き残れば成功とお考えですかと聞くと、「我々のビジネスには、『成功した』と言う考えは無いんです。商品は消えていくものですから、常に新チャレンジが求められているのです」との答えが返ってきた。この精神がヒットセラー、ベストセラーを生み出す原動力になっているのだ。

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2003年7月9日 掲載]

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