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日本国内メーカーの勝ち組、島精機製作所の経営 --その1

~生産拠点は和歌山だけで、世界的メーカーに~

本連載の57回、58回で、和歌山県の島精機製作所を紹介した。その後ちょうど1年が経過したが、同社の経営は、年商363億円で経常利益54億円と相変わらず順調だ。同社の創業者で、今も社長を務める島正博社長に、改めて話を伺う機会があった。そこで、今回は島社長の声を交えながら、同社の経営を紹介したい。

昭和37年の創業以来、手袋の自動編み機、コンピュータ横編み機、コンピュータグラフィックスの分野で、「世界で初めて」の機械を次々と開発することで、現在の地位を築き上げた島精機製作所だが、その成功の秘密を聞くと、次ぎの様な答えが返ってきた。

「当社の基盤を作ったのは、昭和40年に販売した『手袋の自動編み機』でした。しかし、『手袋の自動編み機』は線香花火のようなもので、ドカーンと当っても、受注が一巡すると島精機は左前になるよ、といわれたものです。専門紙の社長や編集長からも、『こんな機械は日本に500台もあれば、満タンになる』ともいわれました。僕は1万台は十分にいけると考えていましたが、これだけに頼っていると、いずれは言う通りになるかもしれない――これはいいことを指摘してもらったと考えて、資金に余裕があるうちにと、昭和41年に、開発専門の会社、島アイデアセンターを作ったのです。これがよかったと思います」

島社長は、社内に開発部門を設置せずに、別会社にしたのだが、なぜなのか。

「別会社にしなければ、製造部門だけが忙しいとなれば、『こっちは寝ないで一生懸命にやっているんだから、お前らもこっちにきて手伝え』と、開発部門の人間が引っ張り込まれてしまうこともあります。逆もあるかもしれませんが、これが怖かったのです。結果として考えれば、昭和41年に、生産と開発を分離して、並列思考のできる組織にしたことが、一番の収穫ですね」

中小の製造業の場合は、注文が殺到すると、全社員がものづくりに借り出されて、商品開発に人を投入することが難しくなってくる。ところが島精機の場合は、会社の小さい頃から、開発部門を分離させたのだ。このときの英断が、他社が追随できない、高い独自の技術を持つ島精機を作りあげる原動力になっていると考えて間違いない。

ちなみに、いまは、組織もできあがり、お互いが邪魔をするようなことも起こり得ないので、開発部門も社内にある。

手袋の自動編み機で80%、コンピュータ横編み機で60%もの世界シェアを持つ島精機は、次々と新機種を開発することで伸びてきた会社だ。なぜ、島精機は同業他社が追随できないような新機種を次々と開発できるのだろうか。その原動力になっているのが、島社長ならではのアイデアを具現化する手法だ。

「例えば、手袋を編んでいて、機械が汚れてくると、汚れなくするにはどうすればいいのかと、考えるのです。そんな疑問を持つと、すぐに案が浮かんでくるのですが、すぐには試作にはかかりません。次に、頭の中で、真似されないかどうか、真似されないためにはどうすればいいのか、といった具合に、何段階か進んだ案を作っていきます。そうするとコストがいらないじゃないですか。思いついたら、一週間以内には、チャンとできているといった感じです」

いまでは、約1000件もの特許を持つ島精機製作所だが、疑問を持ち、解決案を考え、それを具現化する手法は、当時と変わりないともいう。

日本国内メーカーの多くが、コストの安さを求めて中国、ベトナム等々へ生産拠点をシフトする中で、島精機は創業以来一貫して和歌山県に居を構えながら世界的な企業になった。開発力を武器に躍進する島精機に、日本メーカーの将来の姿が見えるように思える。

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2003年5月23日 掲載]

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