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トップが変われば組織は変わる

~早稲田大学ラグビー部清宮克幸監督にみる新しいリーダー像~

日産自動車を再建したカルロス・ゴーン社長、早稲田大学ラグビー部を復活させた清宮克幸監督、ダイエーの福岡3点セットを黒字化させた高塚猛社長らの姿を見るにつけ、組織が活性化するもしないもトップ次第との思いを強く持つようになった。ゴーン社長、高塚社長については本連載でも紹介したことがるので、今回は、清宮監督に焦点を当てて、いまの時代に求められるリーダー像を考えてみたい。

カルロス・ゴーン社長、清宮監督、高塚社長は、いずれもが強烈なリーダーシップの持ち主ではあるが、「黙って俺について来い」といったタイプの指揮官ではない。共通するのは、説明能力が高く、社員や選手たちの意識を変えることで、組織を活性化させたところだ。

ゴーン社長は、某テレビ番組に出演した折、リーダーに求められる資質を問われて、(1)現実を認識して手を打つ、(2)コミュニケーション上手、(3)勇気を持って決断する、(4)思慮深くスピーディーに行動する、と4つのキーワードをあげていたが、清宮監督も、全国大学選手権優勝後、いくつものマスコミに登場して同様の話をしている。

二年前、不振に苦しむ早稲田大学ラグビー部の監督に就任した清宮さんは、まずは、早稲田大学ラグビー部の前年度の全試合をビデオで見てから、選手とのミーティングに臨み、何を成すべきかを説明した、と聞く。これはまさしくゴーン社長のいうところの、「現実を認識して手を打つ」ことの実践にほかならない。リーダーは往々にして、まず理想的な姿を掲げ、そこへのアプローチ方法を考える。確かに、これも大事なことなのだが、「現実を無視した理想」は絵に描いた餅にすぎないということだ。

自身も慶応大学でラグビー経験を持つ、玉塚元一ファーストリティリング(ユニクロ)社長は、雑誌「ナンバー」の二月六日号での清宮監督との対談で次のように話している。

「何をするにしても、現状を客観的に正確に細かく把握することって、大事じゃないですか。最初の一歩ですよね。清宮さんは、早稲田のラグビー部を極めて客観的に分析して、それを分かりやすい形で、選手やコーチと共有していたと思うんです。やはり、良い指導者がいるかいないかで、チーム力ってすごく変わると思うんですよ。それが具体的に表れたのが、今年の早稲田ラグビーだったのではないでしょうか」

まさに、その通りだと筆者も思う。玉塚さんは、「分かりやすい形」でといっているが、清宮監督は、ゴーン社長いうところの、コミュニケーション上手なリーダーでもあるのだ。清宮監督は、筑紫哲也さんの番組に出演した折、リーダーとして心がけてきたことはと聞かれて、(1)情熱、(2)分かりやすく伝える、(3)結果をフィードバックする、(4)スピーディーな決断といった主旨の答えをされたが、(2)についてはとりわけ腐心したようだ。清宮監督は、就任後の1ヶ月間で、なぜ早稲田が勝てなかったのかを徹底的に分析して作成したデータをもとに説明したという。

「僕は、データ=理屈だと考えている。本当は、早稲田がなぜ勝てないのか、データなしで言葉でも説明できた。でも学生はデータを見せられることで、僕をはじめとしたスタッフが、ものすごい時間をかけてチームの立て直しを図っていることに気づいたはずです。学生はデータの向こうにこちらの情熱をみる」(週刊現代2003年2月1日)

筆者は、ここに新しいリーダー像を見る思いがするのだ。相手の立場に立って、こちらの思いが伝わるように教え方にも工夫を凝らす。俺が言っているのだから、黙ってついてこいでは、誰もついてこないのだ。ゴーン社長は、コミュニケーション上手であれというが、日本の経営者に最も欠けているのが、これだと思う。筆者は、職業柄経営幹部にインタビューする機会が多いが、説明能力に長けた人は意外に少ない。 「うちの上司は何を考えているのかわからない」と部下に思われているようでは、リーダーシップを発揮しようがないではないか。

経営の神様とよばれた松下幸之助さんは、経営を実践する上で大事なことはとの質問に、「部下に対しての情熱を持っての語りかけ」だといった主旨の発言をされたと聞くが、そのとおりだと思う。ただし、松下さんは、語り掛けに際しては、語りかけるべき言葉を持たないといけないともおっしゃったという。単純に「会社のために頑張って欲しい」と語りかけるだけでは、部下はやる気を出してはくれないということだ。

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2003年5月9日 掲載]

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