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自然界の法則を原理原則にするメガネの「三城」の経営
~ありとあらゆる外部環境を知ることが経営の第一歩~
経営では、二者択一の選択を迫られることが多い。そうしたときの判断基準はどこにおけばいいのだろうか。様々な考えがあるだろうが、メガネの「三城」の中興の祖、多根裕詞さんは、「決断の基準は自然界の法則にある」というのだから、ユニークだ。
筆者は、20数年にわたって企業経営者にインタビューし、それを原稿にまとめることを主たる仕事としてきた。最近は圧倒的に講演にとられる時間のほうが多いのだが、話のベースになっているのは、そうした取材で得た情報だ。話を聞いた経営者の数は、1000人を軽く超えているが、最も印象深かった人物を一人だけ上げろといわれれば、メガネの「三城」の多根裕詞さんと答える。
一昨年社長を退いた多根さんが、親父さんから継いだのは、兵庫県姫路市の商店街にある小さなお店ひとつだった。それがいまでは、海外6店舗を含めて950店舗を超え、年商800億円強で経常利益が160億円を超えるまでに成長した。これだけの企業を育て上げた多根さんに10年も前にインタビューした時の印象が実に強烈だったのだ。
冒頭、成功の秘密はと聞いたときに、「企業経営に、自然界、生物界の法則をそのままとりこんでいることが良かったのではないかと思う」との答えが返ってきたのだ。物理学を経営に応用しているという経営者には、過去にもお目にかかったことがあるが、寡聞にして、経営者から「自然界、生物界」の話を聞くのは始めてだったので、本当に驚いた。
「自然界の法則」と「企業経営」の接点はどこにあるのだろうか。
「何万年と続く歴史の中で、生物、植物、動物といった生命体が、絶滅と成長を繰り返してきたわけですが、そこに生命体が自然の中で生き長らえる方法を見出すことができると思います。歴史が証明している自然界にある科学的事実から目を背けてはいかんということです。それは、企業が生き長らえ、成長する法則でもあるんです」
それでは、多根さんが自然界から学んだ、企業経営にも通用するという法則はどのようなものなのか。
「外部環境の変化に対応できるものは存続できるが、それができないものは駄目になる。逆に、内部からおかしくなる場合もあります。また、環境に順応しすぎても進歩がないとか、逆境のときにかえって成長するとか、突然変異的な創造開発が、自然界にはあることを知っておくべきでしょう」
多根さんは、こうした自然界の法則が、企業経営で決断を迫られたときの判断基準になっているという。まず、外部環境がどのように変化しているのかを考え、そうした変化を受けてお客さんはどう変化するのか、「三城」はどう対応すればいいのかを、ひたすら追求することで、「三城」は生き長らえるばかりでなく、いまなお成長し続けているのだ。
こんな考えを持つ多根さんは、あらゆる外部情報に興味を示す。政治、経済、社会、風俗を問わず、変化するものの情報は必ず手に入れておきたいともいう。「店がひとつしかないときから、大真面目に国際情勢の分析をやっていました」というのだから、見事なまでのこだわり振りである。
「何千万年の歴史を持つ自然界の法則を尺度として経営を行うのはおかしい、といわれれば、うちは全部おかしい。だけれども私は、これは方向を示すわけだから非常に正しいと考えています。経営では、ふたつのものからどちらかを選ぶといったことが大事なわけですが、それを決めるには自然界の法則がいいのです」と、多根さんは最後を締めくくった。
多根さんは、「そんな尺度では駄目だといわれればそれまでなんですが」と前置きした上で、先のような話をしてくれたのだが、現在の好業績を見る限り、自然界の法則が、経営の世界にも通用すると考えて間違いはないと思える。(「三城」の「顧客本位の経営」については、本連載47回をご参照下さい)
著者プロフィール
疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰- 日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp
[2003年1月22日 掲載]
- 第68回 サンエーの人材育成と組織運営に学ぶ --その2
- 第69回 自然界の法則を原理原則にするメガネの「三城」の経営
- 第70回 「失敗に寛容」な企業が業績を伸ばす
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