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サンエーの人材育成と組織運営に学ぶ - その1
~7期連続増収を支える「仮免許制度」~
本連載でも紹介したことのある、沖縄のスーパー「サンエー」の業績が相変わらず好調だ。2002年度2月期は年商944億円で経常利益は52億円だった。これで7期連続の増収増益で、いずれの年も経常利益が5%を超えている。大手量販店の中では勝ち組といわれるイトーヨーカ堂の経常利益は3.1%、イオンで1.7%だから、サンエーの5%超は、異常に高いといっていい。今回は、サンエーの好業績を支える「仮免許制度」を紹介したい。
サンエーの創業者、折田喜作(1995年没)氏が好んで使った言葉に「人を残すは大」というのがある。この言葉を文字通りに実践することで、サンエーは業績を伸ばしてきたのだ。筆者は生前の折田氏と機会あるごとにサンエーの経営について意見交換しているが、話題の大半は人材育成に関してのものだった。なぜ、それほどまでに人材育成に力を注ぐのかと、聞いたときの折田氏の答えは次のようなものだった。
「これは当り前のことですが、社長ひとりの力だけでは企業は成長しません。社員一人一人の知恵と力が結集されて初めて企業は躍進できるのです。社員一人一人の成長が会社の成長に結びつきます。そうした意味では、サンエーの歴史は人材育成の歴史といっていいでしょう。私の仕事は、サンエーを利益集団に育てることではなく、サンエーを舞台に人材を育成することだと考えています。とはいうものの、人材育成ほど難しいこともありません。サンエーが、これまで人材育成に成功したかと聞かれれば、100%の自信を持って「ハイ」と答えることができないのが実情でしょう。しかし、『人が企業をつくり、企業が人をつくる。優秀な人材こそ、最大の経営資産』と考えて、人材育成に最大のポイントをおいて、経営を実践してきたことだけは、自信をもっていえます」
これは亡くなる数年前の発言だが、その後の7期連続の増収増益ぶりをみれば、折田氏が100%人材育成に成功したといってもいい。それではサンエーはどのようにして人材を育成してきたのだろうか。折田氏は、常々「人の能力は任せてみないとわからい」とも語っていた。そうした考えから、折田氏は、これはと思える社員に、仕事を任せることで育成しようとしていた。ところが、この社員ならばと考えて思いきって管理職に登用すると、昇進したことで満足するのか、それ以上に伸びてこない。登用した人間に思いきった権限委譲すると、独断先行するケースが目立ち、マイナス面ばかりが出てくるのだ。
何度かそういうケースに直面した折田の思いは、「権限委譲のしっぱなしでは人は育たない」というものだったと聞く。この教訓から折田が思いついて取った策が、人事における「仮免許制度」だった。
たとえば、入社間もない社員でも、これはと判断すれば、思いきって店長に登用する。しかし、正式の店長としての管理職手当てはつかない。そのかわり、仮免店長には同額程度の効果手当が支給される。結果、立派に店長が務まると判断されれば、正式に昇進し、効果手当は本給なり管理職手当に振りかえられるのだ。逆に駄目だと判断されれば、降格していま一度やり直し、効果手当は外されてしまう。
仮免許制度導入のねらいは三つあると、人事担当の今中泰洋取締役はいう。
「一つは、旧来からの社員に対する刺激です。新入社員にでもできる姿を見せることで、やれば誰にでもできるのだと意識を変えてもらいたいのです。二つめは、地位と仕事を与えることで、若手社員を育てることです。三つめは、サンエーは若手を抜擢する実績主義の会社との社風をつくって、いい人材を採用したいというものです」
この狙いは、すべて成功しているといってもいい。ちなみに、2001年にサンエーは、沖縄県内での就職を目指す大学生や専修学校生を対象にした調査で、「就職希望企業」の一位に選ばれたのだが、その事実がそれを証明している。
人材育成に悩める企業には、サンエーの「仮免許制度」は参考になると思えるがいかがなものか。
著者プロフィール
疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰- 日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp
[2002年12月10日 掲載]
- 第66回 「失敗は成功へのワンステップ前」―マクドナルド価格変更の真意
- 第67回 サンエーの人材育成と組織運営に学ぶ --その1
- 第68回 サンエーの人材育成と組織運営に学ぶ --その2
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