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「失敗は成功へのワンステップ前」・マクドナルド価格変更の真意

~マクドナルドは迷走しているのか?~

本連載で何度も紹介してきたマクドナルドの経営に限界があるような指摘がされるようになってきた。今年2月14日に、ハンバーガーを平日は65円から80円に値上げし、週末は130円から80円に値下げしたと思ったら、8月5日からは、全日59円に値下げをしている。その現象だけを見ると、右往左往しているように考えるのも無理はないと思うが、筆者のように、長年に渡って、マクドナルドをウオッチしていると、そうは思えない。度重なる価格変更をスピーディーに行えるところにこそ、マクドナルドの真骨頂があるのだ。

マクドナルドが、思いきった価格破壊をスタートさせたのは、平成7年の4月ことだった。それまで210円で売っていたハンバーガーを130円にまで値下げをしている。7年年初に、藤田田さんにお目にかかったのだが、その時点で4月から値下げに入ることを宣言され、その理由として「円高」と「デフレ」をあげておられた。

マクドナルドの食材のほとんどは輸入品だけに、円高差益が出ていて、マクドナルドは予定以上の利益を出していた。その一方で、藤田さんは、日本は既にデフレに突入していると読んでおられた。デフレであれば、価格訴求がなにより顧客には受け入れられる。幸いなことに円高による差益がある。そこで130円となったのだ。それを平成12年には、平日に限っては65円にまで価格を下げた。理由は、平日と週末の集客力の格差だ。全日130円のときの売上は、平日は週末の半分以下だった。設備はピークに合わせて能力を持たせている。当時の一番の経営課題は、平日の集客力を高める ことだったのだ。そこで、平日に限って、65円と、極端に値段を下げたのであった。

結果、マクドナルドの平日の集客力がたかまり、ファーストフード業界では一人勝ちとなったのは、周知の通りだ。ところが、昨年の半ばから、藤田さんは、円高は円安に、デフレはインフレに転換するのではないかと考えるようになってきた。そのうえ、平日65円セールを一年半も続けてくると、週末よりも平日の集客力が高まるようになってきていた。そこで、今年の2月14日の全日80円への価格変更だった。

マクドナルドにとっては、計算し尽くした上での、価格変更だったが、今回ばかりは誤算だった。円安になると予想したのが、逆の円高で、相変わらずデフレが続いている。80円のハンバーガーは、思うように売れなかったのだ。そこで、8月5日からの59円バーガーの登場だ。結果はどうだったのか。8月5日からの一週間でみると、来店客数は前年同期に比べて18、3%増で、売上は8、6%増えている。

さて、今回のあわただしい価格変更を見てどう考えるかだ。マスコミは、批判的にみているようだが、筆者は違う。誰だって、読み間違いはある。マクドナルドだって、打つ手がいつも成功することはありえない。問題は失敗した後の対応のほうなのだ。間違ったとわかったから、躊躇なく路線を変更する――これが今回の価格変更なのだ。逆にもっと高く評価されてしかるべきではないかと思っている。

昨年、藤田田さんにインタビューした折に、これまで失敗したことはないのかと聞いたが、答えは次のようなものだった。

「ないね。失敗しても失敗だと思わないからね。いまは、こういう状態だけれども、よく考えなおして、そのワンステップ先にいけばいいじゃないかと――。普通の人は、失敗した、大間違いをしたとダメージを受けるんですよ。ところが、私のところは、傍からは失敗に見えるようなことも、それが、結果プラスになってくる。失敗は失敗と思わないですね。成功のワンステップ前だと思っている。だから失敗したという経験はないですね。これはちょっと考えが及ばなかったということはあります」

この話を聞けば、今回のたび重なる価格変更の意味がご理解いただけるだろう。2月14日の価格変更は、失敗ではなく成功へのワンステップ前だったということだ。

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2002年11月22日 掲載]

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