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企業建て直し名人、高塚猛(福岡ダイエーホークス社長)さんの経営に学ぶ -その2

~ダイエー総帥中内功さんに請われて赤字の「福岡3点セット」を再建~

赤字に苦しむ「盛岡グランドホテル」とダイエーの「福岡3点セット」を見事なまでに建て直した高塚猛さんは、「再建」という言葉を嫌う。高塚さんは、過去を否定しないで、軌道修正をすることで、赤字を黒字に転換させるという。高塚流経営の真髄はどこにあるのか―――。

リクルート江副浩正社長に次いで、経営者としての高塚猛さんの能力に白羽の矢をたてたのが、リクルートを買収したダイエーの総帥中内功さんだった。経営不振に陥ったダイエーには本業以外でも問題企業がいくつかあった。そのひとつが、福岡ダイエーホークス、福岡ドーム、福岡シーホークホテルのいわゆる「福岡3点セット」と呼ばれる事業だ。

高塚さんが中内さんに請われて「福岡3点セット」の事業を経営者として面倒を見るようになったのは1999年春のことだった。当時、「福岡3点セット」は、年間70億円を超える赤字に苦しんでいた。それを高塚さんは、わずか1年半で33億円の営業黒字に転換させた。そればかりでなく、球団は2年連続で優勝を果たしている。

「盛岡グランドホテル」同様、見事な再建振りなのだが、高塚さんは「再建」という言葉を嫌う。なぜなのか、その真意を高塚さんは次の様に説明する。

「『再建』という言葉は絶対に使ってはいけません。なぜなら、再建という言葉には、『君たちが今までやってきたことは間違いだ』と過去を否定する意味があります。過去を否定されれば、従業員もやる気にはならないでしょう。私が取り組んできたのは、再建ではなく軌道修正なのです」

高塚さんは、赤字を出したことの責任を従業員に問うこともない。赤字については、高塚さんは次のような考えを持っている。

「過去、赤字であったことは恥ではない。ただ、赤字であることを知りながら直そうとしないことは恥ずかしいことです。過去と他人は変えられないが、未来と自分は自分の手で変えることが出来るのです」

サラリーマン社長であるがゆえ、高塚さんには従業員の心理が手に取るように分かるのだろう。前回の盛岡、今回の福岡、いずれにおいても高塚さんは従業員を味方につけるところから、事業の建て直しをスタートさせている。それだけに、高塚さんは、従業員とのコミュニケーションを重要視している。従業員とコミュニケーションを密にした上で、「共通の言葉」と「共通の思い」をもって事業を推進することが何より大事だと高塚さんはいう。この共通の言葉、共通の思いとして、高塚さんが従業員に提示したのが、先の「赤字は恥ではない――」との考えだとご理解いただければいい。

高塚流の経営で、筆者がとりわけ興味を持ったのは、「正しいことを捨てる勇気が大事」とする考えだ。

「軌道修正(再建)とは、いいものを見つけてそれを伸ばし、悪いところを見つけてそれを直す、ことと思われがちですがそれは間違いです。正しい意思決定とは、大切なものを得るためにほかの正しいものを捨てなければいけないということなのです」

この話の後、高塚さんは、ダイエー優勝後の1999年のシーズンオフに優勝の立役者だった工藤公康投手と、あえて契約更新しなかったことを例に出した。1999年に優勝したダイエーの次なる目標は連覇だった。二連覇がダイエーにとって得るべき大切なものだった。工藤投手との契約に際して高塚さんが考えたことは、二連覇に彼が必要かどうかということにつきる。データを調べてみると、工藤投手は2年連続で好成績をあげたことはない。工藤投手は二連覇に貢献できない可能性のほうが高い。とするならば、高給な工藤投手とは契約を更新せずに、浮いたお金をほかの選手に投入してやる気を高めたほうがいいと高塚さんは考えたのだ。

大切なもの(二連覇)を得るために、正しいもの(工藤投手)を捨てる――これが高塚流の経営の大きな特徴といっていい。ただ、正しいものを捨てると風当たりは強くなる。誰かが悪者にならないといけなくなる。その悪者役に、トップの高塚さんがなることで、周囲は納得するとも高塚さんはいう。

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2002年11月6日 掲載]

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