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企業建て直し名人、高塚猛(福岡ダイエーホークス社長)さんの経営に学ぶ -その1
~リクルート江副浩正社長の命を受けて、赤字のホテルを1年で黒字に~
ツガミ元社長の大山梅雄さんや来島ドック元社長の坪内寿夫さんに代表されるように、かつての日本には『再建王』の異名を持つ経営者が何人かいた。しかし、そのほとんどがオーナー経営者だった。ところが、ここに紹介する高塚さんは、根っからのサラリーマンである。サラリーマン時代に実績を上げ、それが評価されて経営者として再建を任され、いずれも成功させている。それも江副浩正、中内功という稀代の経営者からだ。二回にわたって、高塚猛さんに焦点を当ててみる。
最近会った経営者の中で、これぞ『プロの経営者』との思いを強く持ったのは、福岡ダイエーホークスの高塚猛社長だ。サラリーマン社長として、企業経営に群を抜く才を発揮する高塚さんの略歴をまず紹介しておこう。
1947年生まれの高塚さんは、1968年にリクルートに入社、新入社員当時から営業で好業績をあげ、これなら自分でやったほうがいいのではないかとの思いから、若くして独立を意識し、会社名まで考えていた。当時のリクルート社長の江副浩正さんに、独立したとの思いを伝えると、「君は独立しても成功するだろうが、うちで管理職を経験してからでも遅くないのではないか」との答えが返ってきたという。結局、高塚さんは独立をあきらめ、22歳にして福岡営業所長に就任している。
当時のリクルート福岡営業所は赤字で年商は500万円に過ぎなかったが、高塚さんは1年後には年商5700万円を売上げるまでに業績を伸ばしている。どのようにして高塚さんは営業成績をあげたのか。一例を挙げておこう。
「グリーン車作戦です。グリーン車には福岡の経済界の偉い方々が乗っている。そこで面識を得てリクルートブックに求人広告を出す事のメリットを話して、『リクルートには高塚という面白い男がいる』と思ってもらうのです」
この作戦で、当時九州財界の重鎮であった安川電機の安川社長と出会い、同社からの受注に成功したという。「『一点突破』したあとは、この実績を武器にして『全面展開』ですよ」と高塚さんは笑って話す。
その後は、リクルート躍進の原動力となった、「就職情報」「住宅情報」をてがけ、1977年、29歳のときに江副社長の命をうけ、経営難に陥っていた「盛岡グランドホテル」の総支配人として赴任している。「盛岡グランドホテル」は、「盛岡の迎賓館」として1965年に開業したが赤字の連続、再建の見通しの立たない状況の中で1977年にリクルートに経営譲渡されたのだった。
同ホテル建て直しの命が、リクルート社内でも異色の存在だった高塚さんに下ったのだ。ホテル経営では素人の高塚さんだが、見事なまでに江副社長の期待に応えて、1年後には単年度黒字に転換させている。当時の年間売上は三億五千万円。それがいまでは優に30億円を超え、「盛岡グランドホテル」は、岩手県を代表する優良企業のひとつに数えられるまでになった。
高塚さんが、どのような手を打ったかについては紙面の都合で詳しくは書けないが、ひとつだけあげろといわれれば、筆者は、「従業員の意識を変え、人使いのうまさによって建て直した」と答える。
その例として、賃上げ交渉を上げておく。当時の「盛岡グランドホテル」の給与水準は低かった。当然のように社員のモラルも低かった。ここに問題があると考えた高塚さんは、赴任した年の賃上げ交渉で5000円のベースアップ要求に対して10000円の回答を出したのだった。ただし、単純に要望以上にベースアップしたわけではない。
高塚さんは、10,000円の回答をする一方で、新たな売上目標を設定し、それをクリアすることを条件として出している。10,000円もベースアップすれば、同ホテルの人件比率は40%を超えてしまう。ホテル業界の常識的な人件比率は30%前後だといわれるだけに、常識はずれのベースアップといってもいい。そこで高塚さんは、ベースアップ後の総枠の人件費率が30%になるためには、いくらの年商が必要だとはじき出したのだ。それが五億五千万円。この数字を達成するために、なにをすべきかを従業員と徹底的に考える。あとは、毎年の昇給10,000円を約束し、それにふさわしい年商を挙げるための努力を従業員に求める。基本的には、これで高塚さんは従業員の意識を変え、業績を伸ばすことに成功したのである。(この項続く)
著者プロフィール
疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰- 日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp
[2002年10月20日 掲載]
- 第63回 「我が道を行く」で超優良企業になったオオゼキに学ぶ
- 第64回 企業建て直し名人、高塚猛(福岡ダイエーホークス社長)さんの経営に学ぶ --その1
- 第65回 企業建て直し名人、高塚猛(福岡ダイエーホークス社長)さんの経営に学ぶ --その2
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