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話題のショッピングモールを検証する -- その2

~小田急・海老名駅「ビナウォーク」になぜ人は集うのか~

最近は、郊外の商業集積のありようがずいぶん変わってきた。とりわけ、私鉄沿線の住宅地を背景にもつ駅前が、商業地として見なおされ始めている。そのひとつの例として、前回は南町田「グランベリーモール」を取り上げた。今回は、今年4月19日にオープンした「ビナウォーク」を例に最近の流通事情を分析する。

新宿から小田急線の急行で約45分の海老名の駅前が、平成14年4月19日から様変わりしてしまった。小田急電鉄が駅前に開発したショッピングモール「ビナウォーク」が、予想以上の賑わいを見せているのだ。

食品の売り場を持つ「マルイファミリー」とシネコンの「ヴァージンシネマズ」の中核テナントと約130の専門店で構成する「ビナウォーク」の年間集客目標は1700万人だった。それが4月19日のオープン以来の1ヶ月で約400万人が来場したと聞く。

「ビナウォーク」がなぜこれほどまでに人を集めることが出来たのか。ひとつには、「賑わい」と「憩い」を両立させるというコンセプトが評価されてのことだ。「ビナウォーク」は、駅前の海老名市中央公園を取り囲むような形で店舗展開をしているのだが、二階レベルにはテラスが巡らされており、駅、店、公園を回遊できるようになっている。アメリカ人の女性デザイナーによる環境デザインも心和ませ、なんとも居心地がいいのだ。

いまひとつには、「賑わう」ための工夫が至るところで施されていることがあげられる。テラスを中心とした広場では、大道芸や音楽活動が頻繁におこなわれ、飽きることがない。なにより評価したいのは、集客力の高い個店を徹底して集めていること。それも同じ業種を複数でというのが新しい試みだ。

例えば、「マルイ」の食品売り場には、鮮魚の専門店が二軒並んで競い合っているし、ラーメン屋は全国の人気の高いご当地ラーメンが7店舗軒を連ねている。ちなみに、このうち二店舗は、新横浜のラーメン博物館にも出している。筆者は、日曜日の午後1時過ぎに訪ねたのだが、7軒のラーメン店すべてに行列が出来ていた。

シネコン「ヴァージンシネマズ」は、小田急電鉄ビナウォーク管理センター・鞠子篤也所長が、「史上最強の映画館」というほどに自慢の施設だ。座席数は約2300でスクリーン数は10だが、そのうちのひとつは横22、5メートルで日本最大級とのこと。鞠子さんは、このスクリーンで映画を見るために九州から足を運んだお客様がいるという。

上不振に陥った百貨店や大手スーパーの多くは、集客力に定評のある「ダイソー」(百円ショップ)「ユニクロ」をテナントとして誘致して急場をしのいできた。いま量販店では、集客力の低いテナントを集客力の高いテナントに入れ替える「リーシング」という仕事が重要視されている。モノが売れないとはいえ、今の日本にも集客力の高い専門店はいくつもある。それらを見つけ出して、自分たちの売り場に取り込もうとの考えだ。

筆者は、「ビナウォーク」の開発コンセプトそのものも評価するが、それ以上に、「リーシング」での頑張りを高く評価したい。7軒ものラーメン店を同時に出店する――これはラーメン博物館のコンセプトを真似たといわれるかもしれないが、鞠子さんたちは、同博物館に了解を得にもいっている。

「ビナウォーク」を訪ねた経営者は、ここを見学して安心したという。それは、集客力の高い専門店の多くが、価格訴求型ではなかったからだ。ここ数年、日本で売上を伸ばして話題になった店は、「ユニクロ」「ダイソー」「マクドナルド」と、価格訴求型が多かった。ところが、『ビナウォーク』には、「ユニクロ」はあるものの、そのほとんどは価格訴求型ではない。フードコートも専門店化され、価値訴求型のほうが圧倒的に多かった。日本の消費のあり方の新しい姿が、『ビナウォーク』からは見て取れる。

では、「グランベリーモール」のように、年々集客力が落ち込むようなことはないのかどうか。筆者は、オープン当初の賑わいは別にして、通年ではコンスタントに集客する力は、「ビナウォーク」にはあるように思える。それは、「ビナウォーク」の場合には、「通客」すなわち、繰り返し通ってもらえることを意識したリーシングをおこなっているからだ。

『ビナウォーク』には、マルイの食品売り場があれば、託児所、クリーニング店、クリニック、理・美容室までそろっている。そこが「グランベリーモール」とは違う。百聞は一見にしかず、小売業のみならず、製造業の方にも、「ビナウォーク」は一見の価値があると思う。

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2002年8月20日 掲載]

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