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「世界にない機械をつくる」―島精機製作所の経営に学ぶ その2

~フォード、ベネトン、ギャップも注目する島精機製作所の技術力~

「全自動手袋編み機」で世界シェアの80%弱、「コンピュータ横編み機」で世界シェアの60%を持つ島精機は、コンピュータグラフィックスでも独自の技術を開発した。最近は、「無縫製型コンピュータ横編み機」でニット業界に旋風を巻き起こした。なぜ、島精機製作所は画期的な機械を開発し続けることができるのだろうか。

島精機製作所は、「全自動手袋編み機」の成功に慢心することなく、その後も「コンピュータ横編み機」を筆頭に、次々と新商品を開発することで世界市場を制覇してきた。まさに、技術力で伸びて来た企業だが、その経営上の特徴は、「会社の小さな頃から、開発とものづくりを分離させてきた」ところにあると、同社の田中常務は分析する。

注文が殺到すると、会社が小さな時には、モノづくりに全社員がかりだされて商品開発に人をさけないが、島精機の場合にはそれがない。「忙しいときにこそ、次ぎの商品開発に力を入れる」と、田中常務はいう。これは、いうは易く行うは難しことだが、島精機は、意識して会社が小さな頃からこの姿勢を貫いてきた。だからこそ、「世界にない機械」が次々と誕生させられるといえる。

島精機の技術力が生み出した機械で特筆されるべきは、「コンピュータグラフィックス」(以下CG)と「無縫製型コンピュータ横編み機」だ。

なぜCGなのかを簡単に説明しておく。島精機では、コンピュータで制御する横編み機を開発したが、デザインはコンピュータと連動していなかった。消費者の多様化するニーズに対応するためには、ニット業界も多品種少量生産に移行せざるを得ない。そこで島精機では、コンピュータでデザインを自在に考え、そのデータを入力するだけで編み機を制御するシステム開発に取り組んだのだ。その結果誕生したのが、島精機独自のCGシステムだった。

島精機のCGは、自社で活用されているばかりではない。印刷、自動車、テレビ等々、実に多くの企業で採用されている。自動車業界では、まずフォードに入り、その後、ホンダ等々の日本の自動車メーカーでも相次いで採用されている。ちなみに、7年前のNHKの大河ドラマ「吉宗」のタイトル画面は、島精機のCGシステムで作成されたもので、その後も頻繁に活用されていると聞く。

「無縫製型コンピュータ横編み機」とは、その言葉通りに、一切の縫う作業がなくて、編み機からニット製品が出てくるという、画期的な商品だ。従来のニット製品は、型紙を作り、生地をカットし、縫製する作業に時間も人も取られていた。まさに労働集約型産業だった。これでは、生産コストの安い中国に生産拠点が移行するばかりで日本のニット業界は衰退するばかりだ。この現象に危機意識をもった島正博社長が、小ロットで「消費地で生産できる」ことを意識して、開発したのが「「無縫製型コンピュータ横編み機」だった。

CGとこの「無縫製型コンピュータ横編み機」があれば、コンピュータでデザインを起こして入力すると30分もすると、オリジナルのニット製品が完成する。労働集約とは程遠い生産が可能になるだけに、国内のニット業界の救世主になれると島社長は考えていた。ところが、日本のニット業界の反応は鈍かった。イタリアのベネトンやアメリカのギャップといった著名企業の協力工場では採用されるのだが、日本の企業からの注文は少なかった。

全く新しい発想の機械とあって、成り行きを見守っていた日本企業が多かったようだ。しかし、最近はこの機械を使って、新しい商品開発に挑戦する日本企業も増えて来たと聞くだけに、今まで以上の好業績が期待される。

島精機の島社長は、「人間の特性は、創造する、考えるところにある」といい、「会社では知識を知恵することが求められる」と社員に話す。「考える」ことが、社風といってもいいだろう。筆者はかつて本連載で、不況の中で好業績をあげる企業に共通するのは「考える経営」であると書いたことがある。その代表的企業として沖縄のサンエーを紹介し、同社の玄関には、ロダンの「考える人」が鎮座していることを紹介した。

こんな企業はサンエー以外にはないだろうと思っていたが、間違いだった。島精機製作所の本社玄関ホールにも「考える人」が設置されていたのだ。それも本物が。あらためて、「考える」ことの重要性を思い知らされた企業訪問であった。

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2002年7月17日 掲載]

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