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「世界にない機械をつくる」―島精機製作所の経営に学ぶ その1

~コンピュータ横編み機で世界に敵なし~

日本企業は、物真似は上手だが独創性に乏しいといわれるがそんなことはない。ここ何回か本連載でも紹介したマブチモーターの小型直流モーターなんかは、アイデアのカタマリといってもいいほどに独創性に富んでいる。しかし、マブチばかりが例外ではない。ここに紹介する島精機製作所も同様の会社だ。

島精機の創業者で今も社長を務める島正博さんは、「機械いじりが好きで、発明好き」の少年だった。乗りながら操作のできる自転車の発電ランプのアイデアは、三洋電機で実用化されてもいる。8歳のときに父親を戦争でなくした島少年は、中学時代卒業後、銀行就職を希望するが「母子家庭では無理」といわれて、編み機の修理工場に就職。昼間は働き、夜は県立和歌山工業高校夜間部に学んでいる。母親は、機械で手袋を編む内職をしていた。

現在150を超える特許を持つ島精機だが、第1号特許は高校時代の島さんが取得したものだ。当時の軍手は、指先は縫合されていてごわごわしていた。また手首にはゴムが入っておらず抜けにくかった。そのため軍手をはめての作業中に機械に巻き込まれて、手や指を失う事故が続出していたという。そこで島さんが出したアイデアは、指先を丸く編み上げ、手首にはゴムを入れて編み込むというものだった。

島さんは、このアイデアを商品化するための「ゴム入り手袋編み機」を自ら作り、工場の片隅においてもらった。早朝と昼休みに島さんは、この機械でゴム入り手袋を製作し、1ヶ月に1万円強も稼いでいたという。この稼ぎを資金に、島さんは高校4年生の時に、「ゴム入り手袋編み機」の特許を出願し、受理されている。

高校卒業後も修理工場で働いた後、島さんは昭和37年に独立を果たす。島さんが特許を取った編み機は半自動だった。これの完全自動化を目指しての会社設立だった。紙数の都合で詳しくは書けないが、「当時の専務が、自殺して保険金で借金を返そう」というまで追いこまれるが、昭和39年年末に、全自動化を完成させる。

昭和40年の正月三日には、手袋メーカーを集めて臨時の内覧会を開催したところ、その日だけで60台もの受注があった。翌月全国の業者を集めて展示会で約600台の受注。創立から3年間の売上と同じ額を一日で達成したという。この異状とも言える受注は、画期的な機械だったことの証にほかならない。

さて、ここまでだとよくある成功話に過ぎない。島精機が高く評価されるのはその後の歩みがあってのことだ。

「全自動手袋編み機は線香花火のようなもので、ドカーンとあたっても、これがこけると島精機は左前になるといわれたことがあります」と島社長は語っているが、この言葉には、「腹を立てるのではなく、いいことを教えてもらった」とプラス思考に転じて考えたという。

島社長が次に取り組んだのが、衣料の編み機、いわゆる横編み機の開発だった。島社長が横編み機の開発をと考えたのには理由がある。それは手袋づくりの原理が応用できると考えたからだ。手袋の親指と小指を袖と考え、真中の三本の指を一つにして胴体部分にすればセーターになるとの発想だった。当時、国内では、手動式の機械が主流だった。欧州のメーカーがコンピュータ横編み機を出してはいたが、これは柄の作成をコンピュータ化したものにすぎなかった。島精機が開発したのは、コンピュータで編み針を制御して編んでいくという画期的なものだった。

島精機の歩みはこれで終わるわけではない。その後については、次回に書きたいと思うが、現在、島精機の全自動手袋編み機は80%近くの、コンピュータ横編み機は60%ものシェアを世界市場で占めている。ちなみに、最近の業績は、年商390億円で経常利益50億円だ。

島社長は、会社を創業したときから、「いつも世界にない機械を作ろうと考えていた」という。この思いが、コンピュータ編み機で世界一の企業を育て上げたのだ。

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2002年6月24日 掲載]

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