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「第1回ポーター賞」受賞企業・マブチモーターの経営戦略に学ぶ -- その1

~中国人の気質を理解しないとマネジメントはできない~

競争戦略論研究の第一人者である、マイケル・E・ポーターハーバード大学教授の名を冠した「ポーター賞」が、2001年に一橋大学大学院によって創設された。独自性のある優れた戦略を実践している日本の企業・事業部門に対して授与される賞だが、「単一事業を営む企業の部」で、「マブチモーター」が、第1回目の受賞企業に選ばれている。マブチモーターの戦略のどこが優れているのかを、筆者なりに分析してレポートする。

筆者が、マブチモーターの馬渕隆一社長に初めてインタビューしたのは12年前のことだ。当時の年商は470億円で経常利益は120億円(ちなみに今は年商約1051億円で約221億円の経常利益)だった。売上的には中堅の粋を出ないが、その経常利益の大きさから、「経営の常識を超えた小さな巨人」と形容したことを思い起こす。

12年前、なぜマブチは好業績を上げられるのかと、聞いたときの答えは、以下のようなものだった。

「私どものような機能性部品メーカーは、どこよりもいい品質のモーターを作ることは当り前のこととして、どこよりも安く提供することが大事になってきます。安く作る一番いい方法は、少機種大量生産です。しかし、少機種というのは、買う側から見ると、バリエーションが少ないからありがたくないんですね。そこで私は、ひとつのモーターにより多くの機能を持たせることで、この問題を解決しようと考えたのです。たとえば、本来なら大きなモーターが必要だとします。この場合、小さなモーターに大きなものと同じ力を出せるような工夫をすれば、大きさのバリエーションは少なくて済みます。当然価格でもバリエーションはいらなくなります」

標準化して、ひとつの機種を大量に生産するようになれば生産コストは下がる。マージンを従来通りに押さえて販売価格を下げたところ、3割も安くなったという。格安になったことで、マブチのモーターが高すぎて使えなかった製品にも使われるようになって用途が広がる。さらに量産効果が出て、生産コストが下がり、価格も下がるので、またまた用途が広がる。結果として、マブチは小型直流モーターで世界のシェアの50%以上を占めるまでになった。

マブチ好業績のひとつの要因は、「少機(品)種大量生産」にあると、馬渕社長は12年前に筆者に語っていた。当時はすでに大量生産は否定的にみられていた。20数年も前、マブチの工場を見学した経営学の大家は、「この大量生産方式を続ければ、近い将来危機的状況に陥る」と指摘したという。ところが、マブチは、いまなお大量生産方式に執着することで、「第1回ポーター賞」を受賞したのだから愉快ではないか。

2002年に入ってからも馬渕社長にインタビューしたが、生産方式についての考え方は、いまも変わらないという。なぜいまも大量生産なのかについては、次の様に説明してくれた。

「経済の合理性は絶対尊重しないといけません。私どもは、ビスのような機能性部品ですから、同じものばかりだから買わないとはいわれないのです。そういう点では、標準化して大量生産して安くする努力を続けていけばいいのです」

たしかに、最終製品を大量生産すると顧客から受け入れられなくなる。しかし、機能性部品ならそんなことはない。ところが多くの経営者は、「世の中は多様化が進んでいるから、製造業はすべからく多品種少量生産に移行しないといけない」と考えてしまう。これが大きな問題なのだ。機能性部品なら、馬渕社長がいうように、よりいい品質でより安く売ればいいに決まっている。それを具現化するには少品種大量生産が一番。これが経済合理性というものだ。ところが、よそが多品種少量生産だと自分たちもそうならなければと付和雷同してしまい、結果として競争力を無くしてしまっているのだ。

馬渕社長は、機能性部品メーカーであることを強く認識した上で、付和雷同することなく、経済合理性にのっとって、ひたすら標準化した上での大量生産によるメリットを追求してきた。これがマブチ好業績の秘密のひとつなのだ。

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2002年5月15日 掲載]

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