![]()
中国での「モノづくり」に勝算はあるのか。現地レポート(2)
~ストをうたれた大連マブチ~
前回は、大連マブチを中国進出企業の成功例として紹介した。しかし、その歩みは決して順風満帆といえるものではなかった。思いもかけない情況に遭遇することも多々あった。大連マブチは、問題点をどのようにしてクリアし今日の成功を手にしたのだろうか。
日系独資の第一号として設立された大連マブチは、中国では最も有名でなおかつ、最も成功していると誰もが認める日本企業といっていい。いまでは、進出企業の多くがモデル企業として相談に訪れ、「中国の企業経営に問題点はなにもありません」(西村祥ニ総経理)いうほどに順調な大連マブチだが、その歩みは決して順風満帆といえるものではなかった。
西村さんが、大連マブチに総経理として赴任した1993年当時は、社内のいたるところに、「日本小鬼子」というような日本を揶揄するような落書きがされていたという。94年3月には、日本では違法な「山猫ストライキ」を打たれもしている。
94年3月24日午後7時頃、工場を巡回していた西村さんは異様な光景を目にすることになる。工場のラインについている従業員の手が動いていないのだ。班長を見つけて声をかけると逃げ出してしまう。部品切れのトラブルかと思うのだがそうでもないらしい。西村さんは全く状況が把握できないでいたという。
中国の企業にはどこにも中国共産党の傘下組織として「工会」がある。当時、この工会を日本の労働組合と同じものと認識して対処していた西村さんは、責任者を呼び出し、事情を調査させた。なんと、工会の責任者の知らないところでストライキが行われていたというのだ。
当時でも、大連市政府にとっては模範的企業だった大連マブチでのストライキだ。開発区の政府と工会は、やっきにになって情報収集に走り、全従業員に、「なぜストライキをするのか」とアンケート調査を行った。そこででてきたのが、会社に対する不満だった。
当時の中国はいまとちがってインフレだった。従業員からすれば、大連マブチの賃上げ率に不満があった。いまひとつ、94年2月に、中国政府は4月から1週間の労働時間を48時間から44時間に短縮するとの政策を決定したのだが、その対応にも不満があったようだ。それまで、大連マブチでは国が制定した休日以外に社の定休日を制定していた。西村さんは、このすでにある定休日で労働時間の条件は満たしているから、新しく休みを増やすことはないと考えたのだが、従業員たちは違った。従来の社の定休日は既得権として、新しく休日を増やすべきだと考えていたというのだ。
西村さんは、毎年の賃上げや労働条件の変更については、すべてを工会に説明し、了解を得た上で実施していた。ところがそうした情報が工会から従業員には伝達されていなかったのだ。
問題点が明確になってから、解決には時間は要さなかった。会社側も従業員の要求を一定レベルまで受け入れ、ストは3日間で終了した。当時の中国には、ストを想定し、取り締まる法律はなにもなかった。そんな状況では投資インフラは未整備といわれかねないと考えたのだろう。わずか2ヶ月後には、ストに関する条例が急遽出されている。最近の大連市政府は、苦情を言えば、すぐに係官が企業を訪問して、即座に対応してくれると聞く。
スト以後の大連マブチでは、階層別に従業員との労務協議会を設け、労使間の矛盾は早い段階で解決するようにしているという。ストが解決してからは、社内での落書きは見事なまでになくなっている。ただ、西村さんは、日本人が中国人を管理するのは本当に難しいとの考えをもっている。いまでも8月から9月にかけては、抗日戦争の模様が毎日のようにテレビで放送されるし、学校でも過去日本軍が中国で何を行ったかを教え込んでいる。当然のように、潜在意識では日本人に対していい感情を持っていないと考えるべきなのだ。一方、西村さん(1937年生まれ)の世代の日本人は、中国人に対して遠慮がある。
そこで大事になるのは、中国人のなかからマネジメントのできる人材を育成するということだ。大連マブチは、6000人の従業員中日本人はわずか3人で、なおかつ2人の中国人が役員を務めている。これが、大連マブチを成功させたのだ。
著者プロフィール
疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰- 日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp
[2002年4月15日 掲載]
- 第52回 中国での「モノづくり」に勝算はあるのか。現地レポート(1)
- 第53回 中国での「モノづくり」に勝算はあるのか。現地レポート(2)
- 第54回 中国最新ビジネス事情
ジャーナル最新のテーマ
お客様の声をお聞かせください

富士通ジャーナルに掲載している記事やコンテンツについてのご意見・ご感想を、ぜひお寄せください。
お寄せいただいたご意見・ご感想については、富士通からの回答をお約束するものではありません。ご了承ください。
なお、富士通からのご回答を必要とするお問い合わせについては、
富士通ジャーナルに関するお問い合わせをご利用ください。





