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業績不振企業も1年で再生、日本電産永守社長の経営に学ぶ
~勝ち組、負け組、分岐点は些細なレベルで決まる~
当り前のことを当り前に実践できる企業が本当に少なくなってきた。こんな時代になると、当り前のことをきっちり実践できる企業が際立って見える。超小型精密モーターで世界一の「日本電産」、筆者が日本一のビジネスホテルと評価する「ふく井ホテル」は、その最たる例といっていい。両社を題材に元気印企業への道を探る。
超小型精密モーターで8割のシェアを持つ日本電産は、元気印企業の代表的存在だ。1973年創業の同社は、90年代以降、経営不振に陥った企業を次々と買収してきた。グループ企業は、国内外で22社に達すると聞く。不思議なのは、日本電産のグループに入った企業は、経営陣はそのまま、社員のリストラもしないのに、1年後には会社の赤字は解消し、事業は軌道に乗るという。
なぜ、この厳しい不況の中でそんなことが可能なのか。同社の永守重信社長は、そうした問いに次の様に答えている。
「私は、買収した会社の若い社員には3つのことしか言いません。始業時間が9時30分ならば5分前に来い。職場をきれいにしろ。会社は休むな。これだけです。始業時間ぎりぎりに出社してくる社員は心に余裕がないのでミスが多い。整理整頓ができていないと仕事の効率が悪くなる。会社を休めば自ら仕事のチャンスを失ってしまう。仕事の正否なんて意外だけれど、そんな些細なレベルで決まるんですよ」(日経ビジネス2001年7月23日号特別編集版)
永守社長は、かつて、「同業他社よりも3割余計に一生懸命真面目に働けば勝てる」といった主旨の話をしてもいる。そんな単純なことで業績不振に陥った企業が再生できるのかとも思うのだが、永守社長は、実践でそれを証明して見せているのだから、その言葉に間違いはないというしかない。なぜ、そんなに「些細なレベル」のことが、ビジネス上の勝ち組、負け組の分岐点になるのか。この答えも実に単純だと筆者は考えている。
それは、日本の多くの企業が、「些細なレベル」での当り前のことが当り前にできていないからだ。筆者は、勝ち組、負け組といった分類はしたくないのだが、ビジネスの世界では、現としてそれはある。しかし、勝ち組と負け組の取り組みに、それほど大きな違いがあるとは思えない。些細なレベルの取り組みの差が、結果として、勝ち組負け組の大きな格差につながっているのだ。
筆者は、ここ10年、年間100日はホテルに泊まっている。旅行会社に籍を置いていたこともあって、ホテルを見る眼は厳しい方だと思う。そんな筆者が、日本一のビジネスホテルと評価するのが、北海道帯広の「ふく井ホテル」だ。
シングル1泊6300円と価格がリーズナブルなこともあるが、設備とサービスの質が実に高い。フロントの女性の対応が心地いいのは当り前にして、エレベーター前には夕刊がサービスで置かれている。室内はシンプルだが、サイドテーブル等々、ビジネスマンにとって使い勝手がいい工夫がされている。室内のトイレはウォシュレットで地下には天然温泉の大浴場があり、24時間利用でき、バスタ オルは使い放題。朝刊もサービスで部屋に届けられる。1000円の朝食は、和食洋食ともに、宿泊以外の人が食べに来るほどに評判がいい。インターネットで「ふく井ホテル」を検索すると、「盲導犬にやさしいホテル」と感謝の声を寄せている人がいた。
先ごろも二泊したのだが、その折、ふく井ホテルの山田勝三社長の話を聞く機会を得た。筆者は、お世辞でもなく素直に誉め言葉を口にするのだが、山田社長は、面映い風なのだ。山田社長にすれば、ビジネスホテルとして、当り前のことを当り前に実践しているとの思いしかないのだ。たしかに、ふく井ホテルのサービスに奇をてらったものはない。考えてみれば、極々当り前のことなのだが、それが徹底して積み重ねられると、同様の取り組みができていないところが多いだけに、際立って見えるのだ。
帯広は、ここ2、3年ビジネスホテルのオープンが相次ぎ、客室数は倍近くになった。1泊朝食付4980円のホテルまで出てきて過酷な競争を強いられている。ふく井ホテルも影響を受けてはいるが、いまでも80%を越える客室稼働率があると聞く。
日本電産、ふく井ホテルともに、「些細なレベル」の取り組みを、愚直なまでに積み重ねてきたことで元気印企業になったのだ。
著者プロフィール
疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰- 日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp
[2001年8月28日 掲載]
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