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小商圏で大型店を24時間営業で増収増益。成功の秘密はどこに -- その2
~常識破りのローコストオペレーションで効率を追いかけずに効率経営~
小売業の素人を自認する人間が、プロが思いもつかぬような店をはじめて顧客の支持を得ている。経営には、「お手本も教科書もない」と筆者は言い続けてきたが、AZスーパーセンターは、そのいい例だ。元気印企業をつくる新しい経営者像がここにある。
人口27000人の鹿児島県阿久根市で売り場面積3500坪の大型店を、それも24時間営業で経営する「AZスーパーセンター」(以下AZ)は、これまでの流通業の常識を根底から覆したといってもいい。これは結果論ではない。牧尾英二社長は、AZの構想を持ったときに、最初から日本の大手量販店がやっていないことをやろうと考えたというのだから、常識にそぐわないのは当たり前といっていい。
牧尾さんが大手量販店と違うことをやろうとしたのにはわけがある。
「私が、先輩たちと同じタイプの店を始めても、追いつくのが精一杯ではないかと、素朴な疑問をもったのです。それと先輩たちにつぶされないためには、競争のないところでやればいいと考えたのです」
そこで思いたったのが、前回も書いた人口3万人の商圏で成り立つ店だ。しかし、ここから先が、まさに牧尾流だった。これまでの常識からすれば、3万人を商圏とするのなら、売り場面積は500坪がいいところだろう。ところが牧尾さんは、3500坪の売り場を持つ店を描き出したのだ。なぜそうした結論に至ったのか。
牧尾さんは、「損得で考えずに、役割をどう果たすかを考えた結果」だという。一般的に量販店は、坪当たりの売上げを高くするために売れ筋商品に絞り込む、商品の回転率を高める、といった具合に、効率追求を第一に考える。そうしてできあがったのが、日本の大手量販店だ。いってみれば、従来の小売業は供給者サイド(売り手側)の論理が優先されている。
ところが牧尾さんは、逆に、消費者側の利便性を第一に考えた店づくりに取り組んだのだ。阿久根市市民27000人に、小売業としてどのような役割を果たせば支持されるのか‐‐商品構成は、営業時間はと考えた結果としてできあがったのが、生活必需品をフルラインで品揃え、24時間営業のAZだと考えればいい。生活必需品をフルラインで品揃えすると、必然的に3500坪との答えが出てくるのだ。
小売業の果たすべき役割は、「欲しい商品を、欲しいと思ったタイミングで、納得のできる価格」で販売することだと、牧尾さんは考えている。それだけに一年に一個しか売れないような大きな鍋まで品揃えしている。そんな考えだと、経営効率が落ちて、会社として存続できないのではないかといわれるが、それが違う。
AZでは、徹底したローコストオペレーションを実践することで、こうした業態でありながら、経営効率そのものは高めてきているのだ。一般的な小売業では、年間坪当たり売上げ200万円程度が損益分岐点だといわれる。あの「しまむら」ですら、120万円弱だといわれるが、AZのそれは90万円だというのだから、そのローコストオペレーションへの取り組みは半端じゃない。どこよりも安く売るために、平均粗利を18%に押さえているのだが、それでも年間坪当たり売上げ90万円が損益分岐点だというのだから驚異的といってもいい。なぜそんなことが可能になるのか、それは人使いの妙によってだ。
AZにはバイヤーはいない。売り場担当者が商品を仕入れて自分で陳列する。青果もパートが仕入れているし、技術が求められる鮮魚も19歳の若者が担当している。20数台あるレジのどことどこをあけるのか、人員配置をどうするのかは、一時間単位できめ細かに調整される。
ほかにも、日替わりの目玉商品はつくらずエブリディロープライスだからチラシもないとか、電力は、九電から購入するものと自家発電を時間帯によって使い分けるといった具合で、あらゆるところでローコストを心がけてもいる。
牧尾さんは、もともと車の設計者で小売業では素人だった。それだけに、素人を使うことに躊躇がなかったし、業界の常識めいたものにとらわれることもなかった。それが常識破りの繁盛店を生んだのだ。新しい経営者像を牧尾社長に見る思いがする。
著者プロフィール
疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰- 日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp
[2001年8月7日 掲載]
- 第39回 小商圏で大型店を24時間営業で増収増益。成功の秘密はどこに --その1
- 第40回 小商圏で大型店を24時間営業で増収増益。成功の秘密はどこに --その2
- 第41回 業績不振企業も1年で再生、日本電産永守社長の経営に学ぶ
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