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小商圏で大型店を24時間営業で増収増益。成功の秘密はどこに -- その1

~スーパーで、担当者ひとりで月30台の軽自動車を売る~

不況でものが売れないといわれる。とりわけ大手量販店の不振が目立つ。そんな中で増収増益を続けるスーパーがある。それもわずか人口27000人の地方都市の大型店が、だ。これまでの流通業の常識では思いもつかない戦略がそこにはある。

本連載でも一度紹介したことのある、鹿児島県阿久根市の「AZスーパーセンター」(以下AZ)を久しぶりに訪ねた。牧尾英二社長の話は相変わらず刺激的だ。不況の中で、ものが売れないといわれるが、AZは順調そのものだ。同社の現状に触れる前に、創業時の姿を紹介しておこう。

AZ開業の前、牧尾さんは売り場面積300坪程度のホームセンターを経営していたのだが、赤字を余儀なくされる状況が続く。周囲の声は、売り場を小さくして再起を期してはというものだった。しかし、小さくしたのでは、それまでの累損をリカバリーできないと考えた牧尾さんは、逆に売り場を5割増やし、商品の間口を広げるという戦略を取った。

これが功を奏して3年ぐらいは倍々で売上げが伸びたという。しかし、売上げが一定水準までくると当然のように伸びは鈍化する。そこで次の手をとなったのだが、牧尾さんはここでも意表をついた策に出た。売り場面積を3500坪に拡張し、それを24時間で営業しようとしたのだ。

人口わずか27000人の阿久根市で3500坪の店を、それも24時間営業でオープンしようというのだから、誰もがあきれ返ったと聞く。銀行も恐れを成してか、融資を断ってきた。結局は、ベンチャーキャピタルの資金で開業にこぎつけている。

開業以来4回の決算を行っているが、売上げは62億円、67億円、72億円、86億円と牧尾さんの予想通りに推移してきている。牧尾さんは、なぜこのような店を計画したのだろうか。

まず考えたことは、大手量販店と競合しない店舗作りだという。そして、三万人程度の小商圏の人たちを相手にして成り立つビジネスを一番の条件としてあげている。大きな商圏を対象とすると、後々大手が出てきたときに、間違いなく顧客を奪われる。しかし、人口3万人程度の商圏では大手も出てこないだろうと考えたと聞く。

筆者は、3500坪の店と聞いて、少なくとも10数万人の商圏を対象と考えていると思っていたのだが、それは違っていたのだ。日常生活での必需品をフルライン(30万アイテム)で品揃えする店は、人口3万人の商圏でも充分成り立つと、事前のシュミュレーションで答えが出ていたと牧尾さんはいうのだ。

これまでの流通業の常識では、牧尾さんの考えは暴論といわれかねないものだ。しかし、結果を見る限り、牧尾さんのシュミュレーションは間違っていなかったというしかない。現在は、その存在が口コミで広がったこともあって、阿久根市以外からの買い物に来る客が多数いるが、ベースになっているのは、阿久根市27000人の人たちなのだ。牧尾さんは、阿久根市民以外の顧客は、あくまでもプラ スアルファだと考えている。

余りの好調さに、昨年売り場面積を増やし、店頭で軽自動車を売るまでになったのだが、その理由もユニークだ。

「このへんでは、車は必需品ですから、履物の延長で扱うようにしたのです。雑貨屋が履物を売るのと同じ感覚です」(牧尾社長)

履物との考えだから、扱う車も、軽自動車の新車と新古車に限られていて、値段も、車を購入するのにかかる全ての費用を含めて表示し、レジで車を売るというのだから面白い。仕入れも含めて担当者はひとりで、ただ店頭に展示しておくだけで、月平均30台は売れるという。車にはガソリンがつきものだから、当然のようにガソリンも売るようになったが、これもセルフサービスシステムを採用して、リッター92円で、必需品扱いだ。

本シリーズで、しまむら、ユニクロの共通項のひとつは、小商圏で高いシェアをとる戦略だと書いたが、AZも全く同じといっていいだろう。(この項次回へ続く)

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2001年7月31日 掲載]

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