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日産自動車を再建したゴーン流経営の注目すべきところ

~成功への処方箋はいくつもある~

日産自動車が見事なまでに復活したことが話題になっている。ゴーン流経営が功を奏したわけだが、その経営の特長はどこにあるのか。ゴーン氏が指摘する、リーダーに求められる資質を紹介しながら、これからの経営者像を探ってみたい。

日産自動車が、3311億円と過去最高利益を計上したことがマスコミを賑わせている。売上げが伸 びたわけではなく、約11%の原価低減とさまざまなリストラ策が功を奏して生み出した利益だけに、「犠牲の上に立つ利益」との見方もされているが、カルロス・ゴーン社長の実力は誰しも認めざるを得ない。

そんなゴーン社長が、先ごろ「報道2001」(フジテレビ系)に出演して日産復活劇について語っているのを見たのだが、実に興味深い話をされていた。今回は、番組内でのゴーン社長の発言を題材に、これからの経営者像に思いを馳せてみたいと思う。

リーダーに求められる資質を問われて、ゴーン社長は、(1)現実を認識して手を打つ、(2)コミュニケーション上手、(3)勇気を持って決断する、(4)思慮深くスピーディーに行動する、と4つのキーワードをあげて説明を加えたのだが、本当に理解しやすかった。ゴーン社長は、リーダーの資質のひとつにコミュニケーション上手をあげているが、氏自身がまさにそのタイプに思える。

筆者は職業柄経営幹部にインタビューする機会が多いが、説明能力に長けた人は意外に少ない。「うちの上司は何を考えているのかわからない」と部下に思われているようでは、リーダーシップを発揮しようがないではないか。政治の世界では、小泉首相、田中真紀子外相の人気が高いが、両者に共通するのは、コミュニケーション上手なところだと思うがいかがなものか。

経営の神様とよばれた松下幸之助さんは、経営を実践する上で大事なことはとの質問に、「部下に対して情熱を持っての語りかけ」だといった主旨の発言をされたと聞くが、そのとおりだと思う。ただし、松下さんは、語りかけに際しては、語りかけるべき言葉を持たないといけないともおっしゃったという。単純に「会社のために頑張って欲しい」と語りかけるだけでは、部下はやる気を出してはくれないということだ。

トップは、自らが経営責任を担う組織の将来像を明確に描き、それをわかりやすく説明できないといけない。ゴーン社長は、日産の現状を的確に認識し、さらには将来像を明確に描いて、社員とコミュニケーションをとり、思慮深く、勇気を持ってスピーディーに行動したことで、日産を復活させたと考えればいい。

いまひとつ印象深かったのは、「成功への処方箋はいくつもある」というゴーン氏の発言だ。いまの日産におけるゴーン社長の経営手法は、同じく市場最高の利益を上げたトヨタ自動車の経営手法とはまったくといっていいほど相容れない。その点を質問されたゴーン社長の答えは、「日産にとっていいことがトヨタにとってもいいことではないし、トヨタにとっていいことが日産にとっていいことでもない」というものだった。これもまったく同感だ。

筆者は、この連載で、経営者にとって一番大事なことは、自分たちの組織にとって最適の経営システムを構築することだと書いたことがあるが、ゴーン社長の話には意を強くするばかりだ。経営の世界にはお手本も教科書もない。お手本めいたものがあるにせよ、与えられた条件がすべて違うのだから、最終的には自分たちで考えて、自分たちの組織にとって最適のシステムを構築するしかないのだ。

いってみれば、今はよそと違うことをする会社が元気印になっているのだ。ところが、残念なことに日本の多くの経営者は、同業他社と同じことをやって業績不振に陥っている。多くのビジネスマン、とりわけ経営幹部の皆さんに、「勇気を持ってよそと違うことにチャレンジして欲しい」とエールを送りたい。

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2001年7月17日 掲載]

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