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景気の良し悪しと業績は無関係
~求められるのは経営者の質向上~
ここまで不景気が続くと愚痴りたくもなるが、それで景気がよくなり業績が伸びるわけではない。もっといえば、景気なんかに関係なく、元気印企業は生まれてくる。デフレ経済では、低価格が勝ち組への道といわれるが、それだけがすべてではない。「高質化」をキーワードにデフレ下での経営を考える。
企業経営者に、最近の業績はどうですかと聞くと、「悪い」との答えが圧倒的に多い。続けて、一番の原因はどこにと問うと、「景気が悪いから」という。たしかに、経営者にとって景気は悪いよりいいほうがいいに決まっている。しかし、経営者は、「景気が悪い、政治が悪い」と、愚痴ばかり言っていていいものだろうか。
いまの政治状況を見るにつけ、筆者もそう言いたい経営者の気持ちはよくわかる。しかし、愚痴を言いつづけることで、政治がよくなり、景気がよくなるのならそれもいいだろうが、現実は違う。そうであるなら、経営者は、景気が悪いと愚痴る前に、今の状況の中で、どうして自社の業績をあげるのかに全力を注ぐべきなのだ。
もっといえば、一般の企業にとっては、景気の良し悪しと業績の良し悪しは関係ないと考えるべきなのだ。それが証拠に、この連載で取り上げた企業は、長引く不況の中にありながら、元気印企業になっているではないか。
なぜ、景気と業績は関係ないのか。その理由は実に単純だ。100%のマーケットシェアを持っていれば、景気が悪くなって需要が10%落ち込めば自社の業績も10%落ちる。しかし、そんな会社は極々まれだ。極端なことをいえば、100%のシェアを持たない限り、他社が業績を落としても自社は伸びると考えてチャレンジするのが本物の経営者で、そうした会社が景気に関わらず元気印となれるのだ。
そこで、いまこそチャレンジをと考えている企業に、是非とも取り組んでいただきたいことがある。それは、経営に関わるあらゆる面で質を高めるということだ。経営者の質、社員の質、技術の質、営業の質、福利厚生の質、利益の質、財務内容の質等々を高めることが、元気印企業への道なのだ。
こう書くと、デフレの経済社会では、ちょっと質を落としてでも、価格を落とすことが大事ではないかといわれるかもしれないが、それは違う。たしかに、デフレ下では、低価格が大きな武器になるが、今の日本の消費者は、質のともなわない商品はいくら安くても買ってはくれない。逆に、質を評価すればそれなりの対価を払ってくれる。それは、いま話題のコーヒーのチェーン店、スターバックスをみれば理解できるだろう。
本連載でも何回か紹介した「しまむら」や「ユニクロ」は、価格の安さがその成功要因といわれる。たしかに、両社は低価格が武器だが、そればかりが評価されているのではない。両社の社長は、異口同音に、「品質向上への取り組みが経営の最優先事項」といった趣旨の話をしている。「半額」販売で業界に旋風をおこしているマクドナルドの藤田 田社長も同じ考えだ。
大塚さんが、「もういっぺん…」との考えを持ったのは、同社飛躍のきっかけとなった、オロナイン軟膏の販売に際してだ。発売当初は、いくら宣伝費をかけても売上が伸びない状況が続いた。このとき、大塚さんが考えたのは、「一度でもオロナインを使用したお客さんに、どうすればもういっぺん買ってもらえるのか」ということ。
デフレだから低価格でなければ勝ち残れない。まさにそうなのだが、その前段階として、高質化への取り組みがなければならないとご理解いただきたい。品質を上げながら低価格を実現して利益も出す経営はどうすれば可能なのかを思い出して欲しい。
経営のあらゆる面で質を高めて欲しいとはいうが、まず高めて欲しいのが経営者の質だ。組織はト ップの器以上にならないといわれるが、これほどの真実はないだろう。企業は社長の器以上には成長できない。とするなら、組織の長は、いまある器の中で努力するばかりでなく、みずからの器そのものを大きくするように務めないといけない。
社員教育が大事だといい、社員の質向上を口にする経営者は多いが、自身の質向上にまで思いを馳せられる経営者は意外に少ない。デフレであっても、質向上がまず求められるのだが、企業はトップの舵取りいかんで成長もし、衰退もするのだから、とりわけ経営者の質向上が何より肝要だと筆者は考えている。
著者プロフィール
疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰- 日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp
[2001年6月15日 掲載]
- 第35回 もう一度と思わせてこそ事業は成功する
- 第36回 景気の良し悪しと業績は無関係
- 第37回 開高 健氏もびっくりのルアーで日本一の会社
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