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もう一度と思わせてこそ事業は成功する

~リピーター獲得が元気印への道~

日本の企業人は、欧米生まれの経営手法を有りがたがる傾向が強い。ここ10年来話題になった「顧客満足度経営」は、その最たるものといっていい。しかし、そんな言葉登場以前から、顧客の支持を得るために何を成すべきかを考えて成功した日本の経営者がいる。大塚製薬グループの創業者・大塚正士さんがその人だ。

大塚製薬グループの創業者、大塚正士さんの口癖は、「もういっぺんと思われてこそ事業は成功する」だったと聞く。

大塚製薬に限らず、順調に業績を伸ばしている企業が共通して持つのは、この『もう一度…』という考えのようだ。本連載でも紹介した、めがねの三城の多根会長は、「一度来られたお客さんに、もう一度来ていただくためにどうすればいいのかを一生懸命考えなさい」と話し、宮崎県を日本有数の観光地に育て上げた。宮崎交通の創業者、岩切章太郎さんは、「また、来たいと思わせるためになにをなすべきかを考えなさい」と、話していたという。

「もう一度あの人に頼みたい」「もう一度あの商品を買いたい」「もう一度あそこにいきたい」―――消費者にこう言われる存在になれるかどうか、ここに元気印企業になるためのカギがある。

単純には、リピートのきく存在になれるかどうかで、商品なり企業の価値は決まるといっていい。これは、ここ数年来いわれてきた顧客満足度経営にもつながる考えだ。一般的には、顧客満足度を計る指標として、ヒューマン(接客態度)、ハード(品質)、ソフト(アフターサービス)、プライスがあげられる。

たしかに、企業の総合評価は、こうした要素ごとに顧客の満足を得ているかどうかでなされるのだが、単純には、リピーターを獲得できていれば顧客満足度が高いと考えて間違いはない。リピーター獲得への努力が、イコール顧客満足度を高める経営につながると筆者は考えている。

こう書くと、「いや、うちは仏壇を販売しているので、もう一度買ってもらうと考えてもしょうがないよ」といった類の反論があるかもしれないが、それは違う。一見客相手のビジネスでも、この「もう一度 …」のキーワードは生きてくる。いかに一見客相手のビジネスといっても、口コミ、評判というものがある。

アメリカの経営学者が、「ひとりの満足したお客さんは5人の客をつれてき、ひとりの不満を持ったお客さんは5人の客を連れ去る」といったと聞くが、まさにその通りで、「あそこはいいよ、あの商品はいいよ」と評価される存在にならない限り、消費者の支持を得られないということだ。

大塚さんが、「もういっぺん…」との考えを持ったのは、同社飛躍のきっかけとなった、オロナイン軟膏の販売に際してだ。発売当初は、いくら宣伝費をかけても売上が伸びない状況が続いた。このとき、大塚さんが考えたのは、「一度でもオロナインを使用したお客さんに、どうすればもういっぺん買ってもらえるのか」ということ。

購入者にアンケートを実施すると、大塚さんんの意に反して、「再び使用したくない」との意見が3割近くあり、その理由は、「魚油のような臭いがするから」というものだった。

そこで、大塚製薬は、オロナインの無臭化に努力し、当時問屋レベルで在庫状態にあった従来のオロナインと交換している。以後、オロナインのリピーターが増え、順調に売上を伸ばしていったのだ。その後開発されたオロナミンCの発売に当っては、大塚さん自身が近所の小学生に無料提供してまわり、もう一度飲みたい味かどうかを、ひたすら聞いたという。

当然、商品が息長く売れ続けるためには、品質はいうに及ばず、価格等々、さまざまな要素で満足を得ないといけないが、もっとも重要なのは、「もう一度…」をキーワードに、すべての活動を実践することだといえる。

大塚さんは、この考えはどんな仕事にも通用するというが、それは、最近のテーマパークを見てもよくわかる。「永遠に未完成」との考えを持つディズニーランドは、絶え間ない新しいアトラクションの投入で、リピート客を増やして安定した経営を行っている。一方、長崎のハウステンボスは、リピート客が取れずに苦戦を強いられている。

「もう一度…」と思われることが、元気印企業をつくるのだ。

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2001年5月29日 掲載]

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