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成功への手法は千差万別
~ベンチマーキングの限界~
元気印企業に共通するのは、それぞれの会社にとって最適のシステムを構築したところにある。経営者の多くも、よそと同じ事をやっていたのでは勝てない、というのだが、現実は、よその会社と同じ事をやって、苦境に陥っている。なぜ、そんなことに成るのかを解明しながら、元気印企業への道を探る。
経営の神様と称された松下幸之助さんは、経営のコツはと問われて、「これは一言ではいえませんな。その人の持ち味というのがありますからね。知恵によってやり方が変わってくる。ですから同じ成功するにしても、そのやり方は千差万別ありますな。そこに面白みがある。したがって誰でも成功する可能性はありますよ」と答えたと聞く。
20数年間、企業を取材してきた筆者も、まさにその通りだと思う。経営の世界には、教科書もお手本もなく、自社にとって最適のシステムを構築した企業が成功しているといえる。筆者流には、「自社最適システムの構築」が元気印企業への道と説明している。
自社最適システムの構築とは、同業他社と同じことをしないということだが、現状の多くの企業は同じ事をして苦境に陥っている。業績不振の企業の経営者も、口では「よそと同じ事をしていては勝てない」というのだが、結果として同じ事をやっているケースが多い。なぜそういうことになるのか。そ れは、経営者があまりにも同業他社の動向を気にかけすぎるからだといっていい。
同業他社を研究することは大事なのだが、その後の対応を間違いがちなのだ。研究すればするほど、自社と違った取り組みをやって成功している。他社のやり方が気になり、とらわれ、結果として同 じ事をやって、同質の競争に陥ってしまっているのだ。同質の競争は、往々にして値下げ競争につながり、その先には利益なき繁忙があるだけだ。
なんのために同業他社を研究するのか。それは、同業他社がやっていないことをやるためだと考えないといけない。同業他社と同じ事をやるぐらいなら、研究しないほうがいいといいたい。連載32回で取り上げたユニ・チャームは、なぜ、後発でありながら一番手に成り得たのか。それは、先発企業と違う戦略をとったからにほかならない。
自社最適システムを構築するために大事なことはなにか、と聞かれれば、筆者は「物真似をしないこと」と答える。「学ぶは真似る。すべては模倣から始まる」といわれるだけに、筆者も物真似の大事なことはよくわかっている。しかし、それは一定のレベルまでの話だ。物真似に終始していたのでは永遠に勝ち組にはなれない。
ここ数年、新しい経営手法として「ベンチマーキング」が注目されている。ベンチマークとは、水準点のことで、それぞれの分野で、水準の高いシステムがあれば、同業他社のでもいいからそれを研究して自社に持ちこめばいいとの考えだ。たしかにそうすれば、ローコストで最新のシステムを自社に持ちこむことができる。
しかし、どうだろうか。いまのように情報が公開されている世の中になると、やる気さえあれば、誰もがベンチマーキングはできるのだ。とするなら、ベンチマーキングをやった結果、高い水準点に達しても、同じベンチマーキングをやった同業他社との差別化はできない。お互いの水準は上がっても綱引きの状況に変わりはないのだ。
問題は、ベンチマーキングで水準を高めた後の取り組みなのだ。ベンチマーキング後に、自社ならではのやり方を付加し、さらには進化させ続けることが、真の競争優位性につながるのだ。冒頭、教科書もお手本もないとは書いたが、ベンチマーキングの対象となるようなお手本めいたものはある。 しかし、それを研究し導入しても、競争力にはつながらない。もっといえば、お手本めいたものがある にせよ、与えられた条件は違うのだから、最後は自分たちで考えて、自社にとって最適なシステムを 構築するしかないのだ。
著者プロフィール
疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰- 日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp
[2001年5月18日 掲載]
- 第33回 「自らつくらず、自ら売らず」の東洋エクステリア
- 第34回 成功への手法は千差万別
- 第35回 もう一度と思わせてこそ事業は成功する
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