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ダイソー「100円ショップ」躍進の秘密に迫る -- その2

~しつこい品揃えで、あえて効率を追わず~

100円ショップで独走するダイソーの矢野博丈社長は、「しつこい品揃えが何よりも大事」だという。売れ筋商品に絞り込むことを是とする流通業界にあって、あえて売れない商品も定番として残すダイソー。効率を追求しないという矢野社長の真意はどこにあるのか。

100円ショップで躍進するダイソーの矢野博丈社長は、成功の秘訣を問うと、「しつこと品揃えです。」と答える。矢野社長の言う、しつこい品揃えとは、商品の多様化を意味している。

たとえば、竹製品のくずかごだけでも、色・形を変えて10数種類もある。当然、売れ筋とそうでないものが出てくる。最近の流通業界は、死に筋を排除して売れ筋に絞り込んでいくのだが、ダイソーはあえてそういう手段をとらない。売れない商品も定番として残していくという。なぜなら、しつこい品揃えすれば、「お客様は見て楽しいし、選ぶ楽しみがある。」からだ。

このやり方は、売る側から見れば効率の悪いことはなはだしいのだが、「だからこそやってみる価値がある。」と、矢野社長は考えているのだから面白い。「商品を絞り込まないと、不良在庫が多くなるとか、倉庫がたくさんいるとか、出荷が大変になるとか、資本が寝るとか、売る側から見るとマイナス材料ばかりですが、買うほうは楽しいに違いありません。ここまでマイナス材料があれば、ほかは真似できないでしょう。商品を絞り込むと誰でも真似できるから、真似が出来ないように意識的に絞り込まないのです。われわれは、難しく難しくしながら一店ずつ大きくしてきました。ダイソーもどきがでないように注意してやっています。」

現在、100円ショップ業界は、全国で3000店舗、売上規模で3000億円といわれる。

そんな中で、業界トップのダイソーの売上は1434億円で、二番手の山洋エージェンシーの売上200億円を圧倒的に引き離している。ダイソーが100円ショップ業界で寡占状態にあるのは、矢野社長が、あえて効率の悪いことをお客様の立場に立って実践してきた結果といっていいだろう。

ただし、売れない商品を定番として残すことは、財務上マイナスであることは間違いがない。そこで問題になるのが、利益が出ているのかどうかだ。筆者のインタビューに際しても、矢野社長は、取扱商品数や月商については明確に答えるが、商品の粗利や経常利益についてはノーコメントとの言葉しか返ってこない。その理由を矢野社長は次のように語る。

「発表して、儲かっていると、原価がきっと安いのよとか、もっといい商品を出せばいいのにとかいわれるだろうし、少ない利益だと、この会社もうつぶれるんじゃないかといわれるかもしれません。いずれにしても夢がないじゃないですか。」

現実には、監査法人の関係者が出入りしているし、銀行筋からも、「損益管理は十分やっている。」との声も聞くので問題はないのだろう。そうはいっても、筆者などは、在庫の多さが気になる。筆者の耳にも、「過剰在庫が課題」との声が聞こえてくる。しかし、今なお月に50店ペースで新規出店が続いているだけに、全ての問題点は、成長の中で吸収できているともいえる。ダイソーの場合は、いまは過剰とも思える在庫に目をむけるよりは、市場の拡大に重きを置くほうがメリットは大きいとも考えられる。いまは、あえてマイナス面には目を向けないほうがいいのだろう。

ダイソーには、売上目標もなければ出店目標もない。矢野社長は、「何も気にしないで、目先のことを必死になって処理してきただけです。」という。なぜかと問えば、「そんなことを考えている暇がないからだ。」と冗談めかして矢野社長は答えるが、いままでのやり方を万全だと思っているわけではない。

「長期の経営計画も立てず、何も気にしないことを強みとしてやってきましたが、これがいつ弱みにひっくり返るかが怖いのです。常に、明日から売れなくなるかもしれない、銀行がお金を貸してくれなくなるかもしれない、といった緊張感を持って仕事をしています。夜中に目がさめることもあります。緊張、怖さがあるからいい会社ができるのではないでしょうか。」という矢野社長。

この真摯な思いがある限り、ダイソーの躍進は続くと考えたい。

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2000年9月6日 掲載]

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