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一味違うベンチャービジネス論 -- その2
~ベンチャービジネスの先駆者、堀場製作所・堀場雅夫会長に学ぶ~
日本での数少ないベンチャービジネスの成功者には共通項があると堀場さんは指摘する。それが「小心で我慢の出来る人」だというのだから面白い。「小心者」は、その性格ゆえに、世間では、ハイリスク・ハイリターンの世界といわれるベンチャービジネスをローリスク・ハイリターンにしてチャレンジするから成功するとの話は、実に興味深い。
エンジン分析機器で世界シェアの8割を持つ堀場製作所の堀場雅夫会長は、最近はベンチャービジネス(VB)育成のために東奔西走の日々だと聞く。若い起業家と幅広く交流する堀場さんは、VBにチャレンジして成功する経営者には共通項があるという。
「小心な人が多い。奈良県に登山道具を作っている会社があるのだが、その人の話が興味深い。ロッククライミングをやるほどの山登り好きがこうじて会社を起こしたのだが、友達の多くが山で亡くなっていて、元気なのはわずかだという。そんな危険なことをしていて今まで生き残れたのはなぜかと聞くと、"自分は小心者ですから"との答えが返ってきた。ロッククライミングは、むやみやたらと登るのではなく、事前に登攀ルートの写真をとって、どこに手を伸ばすのか等々までを考えてチャレンジするという。小心者だから事前の準備をきちっとやっておくということのようだ。
これはビジネスも一緒。VBも外から見ると、ロッククライミングと一緒で、むちゃくちゃ危険だから、誰もがやらないでいる。ところが、やると決めてマーケティングもやり、あらゆることを想定して緻密な計算のもとでチャレンジすると、ハイリスクではなくなってしまう。外から見るとハイリスクに思えるビジネスを、ローリスクにしてチャレンジするのが本当のベンチャーで、それの出来た人たちが成功を納めているといってもいい。ハイリスク・ハイリターンやローリスク・ローリターンなら誰でも出来る。万が一の世界をローリスク・ハイリターンにするのが、成功するVBだと思う」
同様の主旨のことを、アメリカの起業家の一人が言っている。「どんなビジネスにも必ずリスク要因はある。だからチャレンジはしかたない。ただし、賢明な試みでなければならない」と。この両者の言葉は、実に示唆に富んでいる。
世間では、「VBはハイリスク・ハイリターンだから、失敗は許される。だから、失敗を恐れずにチャレンジしろ」という。たしかにその通りなのだが、無謀な冒険であってはならないのだ。
例えば、新しい事業にチャレンジするに際して、徹底的に事前の調査をしたとする。出た結果が5分5分の場合にどう考えるかだ。5割もの失敗の可能性があると考えてチャレンジしないのは、起業家とはいえない。起業家は5割もの成功の可能性があると考えてチャレンジする人たちだ。ただし、その中で成功を手にするのは、5割の成功の可能性を、6割、7割に高める努力をし、賢明なチャレンジのできる人たちといっていい。
当然、ハイリスクの世界をローリスクに持っていくには事前の準備に時間がかかる。一般的には、現代の経営ではスピードが重要視されているが、VBと時間の問題についても堀場さんならではの考えがある。
「VBがローリスク・ハイリターンになっていくには時間が必要だ。大切なのはすぐにあきらめないで我慢してやっていくこと。企業経営では、あらゆる問題をスピーディーに処理することが大事なことはいうまでもない。しかし、我慢することとスピーディーに処理することは全然別問題なのに、それが一緒になってしまっているのが問題だと思う。商品開発をやっているとなかなか結果の出ないことが多い。結果として、我慢できずにどこかで妥協してしまい、画期的な商品が生まれてこない。失敗作に終わったものも、我慢して最後までかじりついてやっていれば、うまくいったのではないかと思えるものが一杯ある」
早く見切ることも時には必要だろうが、VBでは我慢も必要だという堀場さんの指摘は実に興味深い。スピードを重視する経営で知られるマクドナルドの藤田さんは、「ユダヤ人は一攫金はビジネスではないという。商売に満塁ホームランはない。ステップバイステップしかない」という。説明の仕方こそ違うが、その言わんとするところは全く同じだ。
金融機関も含めて支援する側もチャレンジする側にも我慢強さが欠如していたことも、日本にVBが育ちにくい要因のひとつといえる。
著者プロフィール
疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰- 日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp
[2000年7月5日 掲載]
- 第11回 一味違うベンチャービジネス論 --その1
- 第12回 一味違うベンチャービジネス論 --その2
- 第13回 年間400もの視察団が訪れる滋賀県長浜市の「黒壁運動」
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