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遊び上手な経営者が元気印企業をつくる

~労働は美徳、そして遊びも美徳と説いた本田宗一郎さん~

時代の変化、消費者のニーズの変化をつかまえろという。まさにその通りなのだが、問題はどうすればそうした変化はつかまえられるのかだ。さまざまな手法があるだろうが、筆者は遊びが効果的だと考えている。遊びの効用を説きながら好業績をあげている経営者の声を交えて、その真意を解説する。

このシリーズで筆者は、日本電産を例に「ハードワークが成長の原理原則」と書いた。たしかにその通りなのだが、元気印企業の経営者にはハードワーク以外にもいまひとつの共通項がある。それは、矛盾するようだが、遊び上手ということだ。ホンダ技研の創業者、本田宗一郎さんはその著書の中で、「労働は美徳、そして遊びも美徳」と書いておられる。これからは、本田さんタイプのようなバランスのとれた経営者が活躍できると筆者は考えている。

世の中が成熟すればするほど、遊び下手の経営者は会社をだめにするし、社員を遊ばせられない企業は生き残れないと考えたほうがいい。これには大きな理由がある。

いまビジネスの世界、とりわけマーケティングで大事なことは、時代の変化なり消費者のニーズの変化をつかまえることだといわれる。まさにその通りで、そうした変化に応えるサービスなり商品を提供すればビジネスは成功するというのは、当たり前ことだ。そこで問題になるのが、そうした変化はどうすればわかるのかということ。ではどうすれば時代の変化は把握できるのか。

インターネットを駆使すれば、事務所に居ながらにしてできるという人もいるだろう。たしかに、インターネットにアクセスすれば、世界中の情報を手にすることができるようになったことは間違いない。しかし、それは頭でわかったように感じているだけのこと。実際に見たり聞いたり触れたりすること以上の効果は望めない。時代の変化をつかまえようと思えば、最先端の事象が起こっている場所に自ら足を運んで体感するのが何よりいい。「百聞は一見にしかず」だ。

門扉、フェンス、ガーデニング関連の商品を主力として好業績をあげる東洋エクステリアの杉本英則社長は、寝室にまで仕事を持ち込むタイプの経営者だが、一方で次のように遊びの効用を説く。

「私は昔から世界を遊び歩くのが好きで、お金のない頃からちょっと暇ができると出かけていくような癖があった。そんな行動の中から、先進国の住まい方だとか、生活の仕方だとかを見て、エクステリアという仕事に段々深入りしていった。遊び回る中から偶然に仕事が生まれてきたようなところがある」

杉本社長は、時代にふさわしい遊び方のできない経営者は、いい商品を作れないし、社員を引っぱっていくこともできないとの考えを持っていて、「私が社員だったら、ビューティフルに遊べる経営者のもとで働きたいからね」ともいう。

消費者のニーズの変化をつかまえる方法にも同じことはいえる。一番簡単なのは、自分をお客さんの立場に置き換えることだ。自分がお客さんなら何をやってほしいか---これが一番簡単な方法といっていい。

では今の消費者はどうなっているのか。不況がいかに長引こうが本当によく遊んでいる。遊び方は時代と共に変わってきたが、遊びに割く時間が増えるばかりであるのは間違いない。相変わらずのグルメブームだし、温泉旅行やアウトドアライフを楽しむ人も増えるばかりだ。

遊び上手な消費者のニーズの変化をつかまえようと思えば、同じレベルの遊びをしなければつかむことはできない。だからこそ、ハードワークの一方での遊びがいまは求められているのだ。

遊びの場に身を置き、お客の立場に身を置き換えることで、客観的にものを見ることができるようになる。これが業績向上に寄与することの具体例として、前回も紹介した日本一のメガネチェーン「三城」の多根裕詞会長兼社長の言葉を紹介しておこう。

「お客さんが何を望んでいるかは、自分が客の立場に立てばわかることでしょう。日本人は、自分が主役だったら、いつまでも主役だと思っている。そんなおかしなことはないんで、僕はメガネを提供する時以外は消費者ですから、自分が消費者の時に勉強するんです。脇役の目を持てない人は主役ができませんよ。いまの日本は主役になりたい人ばかりだから、うちの会社がいけているんじゃないかな」

東洋エクステリアの杉本社長は、自社で開発した商品は、先ず自分がお客の立場で最初に使ってみるという。多根さんも杉本さんもその考えの基本は同じところにある。

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2000年6月21日 掲載]

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