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日本一のめがね小売業「三城」の「考える社員」を育てる経営

~接遇にマニュアルは不要。また来てもらうために一生懸命考え、一生懸命応対。~

めがねの三城は、現在海外を含めて800を越える店舗を展開し、年間売上800億円弱で経常利益を130億円近くも上げる優良企業だが、同社には、接遇のためのマニュアルは存在しないという。なぜ、マニュアルは不要なのか。それは、「考える社員を育てるため」にだと・・・・・。

連載6回目では、沖縄のスーパー「サンエー」を例に、思考する集団の強さを書いた。今回はその続編として、サンエーに類する企業をいくつか紹介したい。

考え、知恵を出す社員を育てるためには、単純な問いかけが肝要になってくるのだが、多くの企業は全く逆で、上司は部下に対して「ああしなさい、こうしなさい」と指示、命令を出している。これでは考える社員は育たないといわざるを得ない。たしかに、指示、命令が通用する時代はあった。それは、高度経済成長期の黙っていても仕事が入ってきた頃の話だ。仕事が十分にあれば、効率よく処理することが競争力につながる。それだけに上司が部下社員に対して、画一的な指示を出すやり方が有効だったのだ。

ところが今は違う。新しい商品なりサービスを開発し、新たな顧客を獲得しないといけない時代になった。こうした時代には画一的なやり方が通用するわけがないのだ。

考える社員を育てることに留意することで好業績を挙げる企業のひとつに、めがねの「三城」がある。年商800億円弱で130億円近い経常利益をあげる同社の多根祐詞会長兼社長に、売り場に立つ社員の教育にマニュアルは使うのかどうかの問いを投げかけたのだがその時の答えは次のようなものだった。

「どうやるかについては自分で考えないと----。こうやれと指示すると考えない社員になるから、私どもにはマニュアルの類は一切ない。マニュアルがあるとそればかりに意識がいって、お客さんをみなくなってしまう」

ただし、三城ではマニュアルは作らないが考えるためのヒントは与えている。多根さんは、社員にはこういう説明をしている。

「店に来られたお客様にもう一度来てもらうにはどうすればいいのかを一生懸命考えなさい。今日三城に見えたお客様が晩御飯のときに、応対したあなたのことや、技術、サービスが話題になるように一生懸命応対しなさい。お客様がなにを望んでいるかは、自分を客の立場において考えなさい」

社員に対しては、こうした話をするだけで具体的なやり方は一切指示しないという。現在三城は、海外を含めて800店舗以上を展開する日本一のめがね小売業者になったが、多根さんが父親から継承したときには兵庫県姫路の商店街に一店舗しかなかった。それが今日の業容になり得た原動力のひとつが、考える社員を育ててきたことだと筆者は考えている。

多根さんは、高度成長期からこうした考えを実践してきた。ところが多くの経営者が、画一的なやり方の通用しない今のような経済状況の中でも、指示、命令で社員を動かし、マニュアルで社員を育てようとしている。これでは元気印企業になれない。

たしかに、今の時代にマニュアルを効果的に使いながら好業績をあげる会社もある。マクドナルド、しまむらがその代表的な会社だが、この両社と多くの中堅企業を同一に論じるわけにはいかない。なぜなら、両社にはマニュアルを使わざるを得ない理由があるからだ。それは、徹底したローコストオペレーションを実践し、社員に占めるパート、アルバイトの比率が圧倒的に高いことだ。両社ともに、集客力を高める戦略は本社がたて、現場であるお店は効率よく顧客をさばくことに専念しているからだ。

しかし、多くの中堅企業は両社ほどにシステム化された運営手法を持ち合わせていない。両者と同じ土俵で競争するのなら話は別だがそうでない限りは、三城のようにマニュアルにこだわらずに考える社員を育てる努力をするほうがいいと筆者は考える。

ただし、マクドナルド、しまむらともにマニュアルが徹底しているとはいえ、100%こだわっているわけでもない。筆者の記憶に間違いがなければ、昨年の1月からはマクドナルドもマニュアルを遵守した上でよりいい方法があれば考えてやりなさいとの指示が出ている。しまむらも、マニュアルにプラスするものがあればどんどん提案してほしいとパートに話していると聞く。

マニュアルで知られる東京ディズニーランドの経営陣の1人から、「マニュアルで教えられることは70%にすぎず、当社では残りの30%の教育に力を入れている。これはOJTで教えていくしかない」と聞かされたこともある。考える社員をどこまで育てられるか。勝ち組、負け組の分岐点はこの辺にあるように思える。

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2000年5月11日 掲載]

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