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不況に負けない「思考」する経営

~スーパー「サンエー」の5期連続増収増益を支えるものは・・・~

量販店の不振が続いている。ひとり勝ちともいわれたイトーヨーカ堂は昨年、売り場面積を10%も増やしたにもかかわらず減収減益だという。そんな流通業界にあって、ここに紹介する「サンエー」は、5期連続増収増益で経常利益率は5%を超えている。なにがこの好業績を可能にさせたのか。本レポートでは、その秘密に迫る。

「経営者が行うべきもっとも大切なことは、単純な問いを投げかけることである。優れた経営者がこうした類の問いかけをするのは、部下たちが思考するように仕向けるためである」

これはハーバード・ビジネススクールのT・レビット教授が、その著書「有能な経営者」の冒頭に記した言葉だが、筆者も同感である。この不況の中で好業績を挙げている企業は、思考することが社風として定着しているところといってもいい。

沖縄のスーパー「サンエー」を例に検証してみる。先ごろ、大手量販店の2000年2月期決算が発表されたが、悲惨な数字が並んでいた。あの一人勝ちといわれた「イトーヨーカ堂」ですら上場以来初の減収減益を余儀なくされている。そんな中で「サンエー」の2000年2月期決算はどうだったのか。

年間売上高826億円(前年同期比6.6%増)、経常利益42億円(同32.2%増)で、5期連続で増収増益というのだから素晴らしい業績というほかはない。同社の好業績振りを聞いて、サミットを控えて沖縄の景気がいいからではないか、競争相手がいないからではないかと考える方がいるかもしれないがそれは間違っている。沖縄は失業率が8%を超えており景気がいいとはいえないし、ダイエー、ジャスコともに複数店出店していて競争も激しい。

とりわけサンエーが素晴らしいのは既存店の頑張りだ。1999年度サンエーでは、既存店の売上は対前年比99.7%だった。わずか0.3%とはいえ、前年割だからたいしたことはないと指摘されるかもしれないが、イトーヨーカ堂のそれがマイナス8%だったことを考えれば、サンエーの好調振りは理解いただけるだろう。

この消費不況ともいわれる中で、サンエーはなぜ元気印企業でいられるのか。それは、レビット教授がいうところの、「単純な問いを投げかける」ことが、経営のあらゆる局面で日常茶飯事的に行われているからだといっていい。サンエーには思考するということが社風として定着しているのだ。

筆者は縁あって20年も前からサンエーの経営をつぶさに見てきた。古い話で恐縮だが、サンエーが思考する集団に変身するきっかけになった出来事を紹介したい。同社では昭和61年に、「もっといい方法はないか考えよう」という年度目標を掲げている。当時からサンエーの社員は本当によく働いていたのだが、考えないで事にあたるから、空回りしているケースが往々にしてあった。そこで、同じ働くのならもっと考えて働いて欲しいとの願いを込めて、この目標を掲げたのだ。

一年経過しても、まだまだ考える社員が育っていない。そこで昭和62年度の年度目標も全く同じものにした。さらに二年経過しても大きく変わった様子が見られないので社長は、昭和63年も同じ年度目標でいこうという。ところが幹部社員の中から反対の声が上がった。「二年も同じ目標を掲げてのだから、来年は変えましょう。いまのサンエーには問題はありませんから」というのだ。

筆者も同席していたが、社長はこの問題はないとの発言に怒り、63年度の目標は、「もっといい方法はないか考えよう」に「問題がないことが大問題だ」と付け加えている。ここまで徹底すれば、経営幹部ばかりでなく、組織の末端に至るまで、「考える」ということが浸透して行く。考えることが社風として定着したサンエーでは、現状がいくらよくてもそれで満足することはない。常に、「もっといい方法はないか」を考え、あらゆる面での見直しを行っているから、既存店が古くならないのだ。こんな考えを持つサンエーは、新規オープンに際しても派手なことはしない。経営者は静かなるオープンでいいという。無理をせずに静かなオープンをしておいて、お客様の声に応えて、全社員が、「もっといい方法はないか」を考えながら、毎日がリフレッシュオープンの気持ちで日々の営業を実践している。

思考することが社風として定着すれば、景気に関係なく業績が伸びることをサンエーは証明して見せたといえる。ところが今、日本企業の多くが「思考停止」の状況にあるのではないか。組織をあげて考えれば、危機を乗り越える知恵はいくらでも出てくるのだ。

ちなみにサンエーの玄関口にはロダンの「考える人」が設置されている。最近は「自分のこととして考えよう」をスローガンとしている。

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2000年5月31日 掲載]

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