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オールドエコノミーもITと融合すれば元気印企業に

~1998年度ニュービジネス大賞は理・美容業のキュービーネット~

日米の経済力格差は新規開業率の差からくるといわれる。なぜ日本では起業家が育たないのか。それはニューという言葉にこだわりすぎるからだ。オールドビジネスもITと融合すればニューエコノミーになることをキュービーネットは実証した。

日本とアメリカの経済力格差を象徴するデータとして、両国の新規開業率の差が最近よく引き合いに出される。中小企業白書によると、日本の新規開業率4%に対してアメリカのそれは10数%と圧倒的に高い。そればかりでなく、日本では平成元年以来廃業率が開業率を上回っているのだが、アメリカではここ10年来、常に開業率が廃業率を上回っている。日本は開業率が低く企業の数は減るばかりなのに、アメリカは開業率が高いばかりでなく企業の数が増え続けている。この違いが両国の経済の明暗を分けていると思える。

そんな状況を打破すべく、政府は創業支援のための施策を次々と打ち出してきているのだが、あいも変わらず日本では新規開業者が増えてこない。なぜ、日本では起業家がアメリカ並みに出てこないのか。筆者は、ここ10年来頻繁に使われるニュービジネスという言葉が阻害要因になっているのではないかと考えている。

ニューとくると、どうしても、全く新しいものでないとだめなのではないかと考え、特殊な技術、他に類を見ない商品を持たないと起業できないと思いこんでいはいまいか。アメリカでは、新規開業する企業の事業内容は、研究・開発型ばかりでなく、フードビジネス、事務請負、サービス関連等々、既存の事業分野での起業の方が多いと聞く。

新規開業、新規事業への挑戦は、特殊な技術、能力がなくてもできる------筆者は、かねてよりこうした考えを持っていたのだが、それを証明して見せてくれたのが、1998年度ニュービジネス大賞最優秀賞、通産大臣賞を受賞した「キュービーネット」(店名QBハウス)だ。

キュービーネットはニュービジネスの最高峰と評価されたわけだが、その事業内容は、オールドエコノミーそのものの『理・美容業』だというのだから面白い。同社のなにがニューなのか。それはサービスの有様が従来の理・美容業界とは違うところにある。

同社のサービスはいたってシンプルで、「10分で1000円のカット」しかない。シャンプーもなければ髭剃りもない。ここ数年、この業界も価格破壊が進み、カット千数百円の店も有るが、そうしたところもシャンプー000円、髭剃り000円と追加料金で他のサービスも提供している。ところがキュービーネットは、「10分で1000円のカット」に特化している。ここが他の価格破壊型の店との大きな違いだ。

なぜ、カット以外のサービスをオプションでつけないのかには理由がある。10分のカットしかないのだから、お客さんは待ち時間を簡単に計算できるのだ。客から見ればれが、10分で1000円は大きな魅力だが、待ち時間がわかることも人気の秘密であるという。

さて、ここまでだと新しいタイプの理・美容業であることは理解できても、これだけのことでニュービジネス大賞が授与されるのかと不思議に思われる方もいるだろう。たしかにその通りで、キュービーネットがニュービジネスの最高峰と評価される所以はいまひとつある。

キュービーネットは、4月末現在50数店舗展開しているが、全店職人だけで運営しているいて、本部の人間が店に顔を出すことは殆どないという。なにがそれを可能にしているのか。その答えはインターネットなのだ。同社の創業社長の小西國義社長は次のように説明する。

「センサーとインターネットを活用すれば本当にローコストで店の管理はできます。店を開けた時間、閉めた時間はセンサーが感知してインターネットで送ってきますし、券売機から売上は集計できます。椅子ごとに担当の職人が決まっていますが、これもセンサーで管理していて椅子ごとの売上も管理でき、レジもタイムカードも要りません」

キュービーネットは、10時開店、20時閉店だが、当日の20時には全てのデータがインターネット経由で本部に送られてくる。今年中に中国に出店するのだが、これもインターネットで管理するという。

ここ数年、既存のビジネスをオールドエコノミー、これに対してネット関連のビジネスをニューエコノミーとして分類してきた。ついこの前までは、ニューエコノミーが大きな顔をしていたが、今後は違う。たしかに、地に足のついたニューエコノミーの活躍の場も広がるだろうが、それ以上に、元気印の企業は、キュービーネットのように、ITを融合させたオールドエコノミーのなかから排出するのではないかと筆者は考えている。

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2000年4月27日 掲載]

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