第1回 少子高齢化・人口減少で社会はどう変化するか
本番になった「2007年問題」と「年金問題」が落とす影
ここ数年、2007年から団塊の世代の定年ラッシュが始まり本格的な高齢化社会に突入するという、いわゆる「2007年問題」が取沙汰されてきました。企業経営においては高い技能やノウハウを持つ団塊の世代の大量退職によって、生産性の低下や技術・ノウハウの流出が起こると懸念されてきました。
また一方では、退職金による可処分所得の一時的な増加によるシニア向けビジネスの本格化、生活時間帯や生活地域の変化による消費行動パターンの変化など、新たなビジネスチャンス到来の機運も盛り上がりました。
さて、その2007年に入り皆さんの周りではどのような変化が起きているでしょうか?思っていたのとはかなり異なる状況になっていませんか?
ここ数年の景気回復により雇用環境が改善され、大企業を中心として早期退職から定年延長へとトレンドが変化。これにより、団塊世代の大量退職問題は先送りされつつあります。また、ここに来て俄かに取沙汰されてきている年金問題の影響で、消費活動よりも生活防衛に高齢者の意識が変化しつつあります。
このコラムでは、あらためてこれからの少子高齢化・人口減少時代でのビジネスのあり方、経営の舵取りの方向などを、4回にわたって考察していきたいと思います。
「高齢化社会」とは本当はどのような社会なのか
「高齢化社会」という言葉を耳にしない日はありません。皆さんは高齢化社会というとどのようなイメージをお持ちでしょうか?高齢者がどんどん増加する社会、という風にイメージされていないでしょうか。

図は総務省から発表されている人口推計の変化予想です。確かに80年代以降、65歳以上の高齢者層が急激に増加してきていますが、そのピークは2010年代、つまりあと10年以内に到来し、それ以降は緩やかに減少していきます。いわゆる団塊の世代が高齢者の仲間入りをする頃が高齢者人口のピークとなるわけです。
一方、社会を支える中核となる就業者層である15歳から64歳に目を転じると、こちらは80年代をピークに今後一貫して減少を続けていくと予想されています。
このことは、今までの高齢化社会と今後の高齢化社会とでは、その中身が大きく異なるということを示しています。つまり、80年代から「これまでの高齢化社会」とは高齢者人口が急激に増加する社会変化であったのに対し、「今後の高齢化社会」は就業者層の人口が減少することで、高齢者の相対的な比率が高くなっていく社会であるということです。
これをビジネスの観点から考えると、これまでは急激に増加する高齢者向けの社会インフラの絶対数不足に対する対応が緊急課題であったのに対し、今後は減少を続ける就業者人口を背景にどのようにして社会活力の維持を図っていくかが課題となってくると思われます。この点については、第3回・第4回のコラムでしっかりと検討していきます。
目の前にあるビジネスチャンス=団塊の世代をどうとらえるか
企業業績の回復により、団塊の世代の大量退職問題はほんの少しですが先送りされた感があります。しかし、定年延長があるといってもせいぜい5年程度。この世代に対するビジネスチャンスそのものがなくなったわけではありません。そこでもう一度、団塊の世代に関しておさらいをしておきましょう。
団塊の世代とは、正確には1947年(昭和22年)から49年(昭和24年)の3年間に生まれた世代を指します。人口としては約680万人、これに昭和25年生まれを足すと約800万人という巨大な世代集団です。日本の人口が約1億3000万人ですので、約8%=12人に1人が団塊の世代であるといえます。
団塊の世代の最大の特徴は「数が圧倒的に多い」ということです。この、数が多い世代のライフステージが変化する際には、これまで必ず次の2つの現象を引き起こし、新たな消費マーケットを形成してきました。
- 圧倒的な数を受け入れるためのインフラ(社会基盤)の絶対量が不足する
- 圧倒的な数により従来とは異なる価値観が発生する(彼らの価値観が社会の主流となる)
具体的には、彼らが小学校に上がった時には学校数が不足し学校建設が急ピッチで進められ、大学進学時には「受験地獄」という言葉とともに教育産業が発展、社会人になると分譲住宅や自家用車が飛ぶように売れていきました。
団塊の世代が動くとき、すべてが社会現象となったといっても良いでしょう。ビートルズ世代、全共闘世代、フォーク世代、モーレツサラリーマン、アンノン族、クロワッサン族、ニューファミリー、友達夫婦・・・。これほどさまざまな名前をつけられてきた世代は他にありません。
では、団塊の世代の資産はどうなっているでしょうか。2004年の総務省家計調査では、この世代の持家比率は約9割近く、金融資産も約1700万円程度持っているといわれています。これに、数年以内に大卒平均で約2400万円の退職金(労務行政研究所「退職金・年金事情 2005年版」による)が積み上げられることとなります。また、この世代は国民年金や厚生年金ならびに企業年金など企業の福利厚生策をまともに享受できる最後の世代であるともいわれています。
ここ数年盛り上がりを見せている「シニアビジネス」は、この、数が多く金融的にも恵まれている団塊の世代をまさにメインターゲットとしています。確かに年金問題などの発覚によって、一時ほどバラ色の高額消費型ビジネスが広がるという絵図は描きにくくなってはいますが、それでも他の世代と比較して多額の金融資産を有する、企業にとって魅力的な世代であることには変わりはありません。
次回は、この団塊の世代を中心とした新たなシニア層を対象とした、今後のビジネスの考え方について、事例を交えながら解説していきたいと思います。
著者プロフィール
西村 健一
エヌ・コンサルタンツ 代表取締役- 1962年生まれ 大阪府出身、同志社大学法学部卒 中小企業診断士
証券会社にて中堅・ベンチャー企業のIPOに向けての育成指導や事業戦略策定、システム開発プロジェクトのマネジメントなどを経験後、国内独立系コンサルティング会社に入社。取締役東京代表を務めた後、東京事務所をMBOし2002年エヌ・コンサルタンツ設立。
通信会社や電力会社などにおける社内起業家制度の運営支援、大手ケミカル会社での新規事業進出計画策定支援、製薬会社における中期事業計画策定支援など、新規事業関連での実績多数。近年は研究機関での技術シーズの産業化などにも注力している。
シニア市場に関しては、2001年に公的機関における研究会のコーディネータに任ぜられて以降、一貫してコンサルティングに取り組んでいる。
著書「中堅企業・中小企業の経営革新・事業転換戦略構築法」(平原社刊)
http://www.n-cons.com
[2007年9月13日 掲載]
- 第1回 少子高齢化・人口減少で社会はどう変化するか
- 第2回 シニア市場の商品・サービスの切り口
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