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第1回 企業間取引構造の変化と影響
企業間取引構造変化の概要
最初に企業間取引構造の変化について概観します。
高度成長期以来、我が国の製造業では親企業を頂点とした企業集団による階層的な分業構造が維持されてきており、これに応じて親企業と下請企業が長期安定的な取引構造を形成していました。
しかし1990年代以降は、グローバル化、特に東アジアへの展開が進展し、近年では中小企業も東アジア現地の製造業ネットワークに進出する動きが活発化しています。また取引環境としてのITの高度化や標準化、部品や製品の規格化が進んだこともあり、これまでの企業間取引構造が変容しつつあると考えられます。
これらに伴い取引先数は増加するとともに、特定取引先への依存度は低下しており、製造業においては多数の取引先との多面的な取引関係への変化(取引関係の「メッシュ化」)が進展しています。
従来の取引構造のメリット
それでは取引構造変化が製造業の経営にどのような影響を及ぼすのでしょうか。まず従来の取引構造のメリットを整理し、構造変化によってこれらのメリットがどう変わるのかという観点で検討します。
これまでの親企業と下請企業の長期安定的な取引構造は、親企業にとっては受注変動の吸収、投資の節減や賃金・労務管理の外部化、専門的技術の活用といったメリットを、一方で下請企業にとっては業績の安定化、販路開拓への負担軽減、相対的に乏しい経営資源を新製品や技術の開発に集中することが可能といったメリットを生んでいます。
また同時に、企業集団が完成品を中心とする関連裾野技術の集合体を形作っていたため、長期安定的な取引関係は、技術や市場に関する情報の流通網としても機能していました。即ち親企業は下請企業から利用可能な基盤技術の情報を、下請企業は親企業から完成品や必要な技術に関する動向を、それぞれ取得できやすい状態にあったのです。
取引構造変化の及ぼす影響
ところが企業取引構造の変化はこれらのメリットを喪失させつつあります。
- 東アジアをはじめとする海外の現地企業を含めて取引候補先が拡大することによってコスト・品質・納期等の競争が激化し、業績の安定化が難しくなってくる。
- 完成品を組み立て、これを自ら販売する企業を除いては、販路を積極的に開拓する必要が生じ、これらの負担が増加する。
- これまで企業間で密接にやり取りされていた技術情報・市場情報の流れが停滞することで、技術開発の方向性が不透明になり、方向性を誤ることによる経営リスクが増大する。
上記のようだとは言え、取引関係の「メッシュ化」が我が国製造業のグローバル展開に伴う構造的な変化である以上、不可逆的であり、今後も一層進むと想定されるため、積極的な対応が必須です。一方で取引候補先が増えることを成長・発展の機会と捉えることもできます。
次回以降は、このような企業間取引構造の変化にいかに対応すべきかについて考えます。
中小企業診断士 島田 豊慈
[2007年11月27日 掲載]
- 第1回 企業間取引構造の変化と影響
- 第2回 取引構造変化への対応の方向性 -その1
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