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第11回 組織再編行為に関する見直し関係

1.対価の柔軟化

現行法上、吸収合併、吸収分割または株式交換を行う場合、消滅会社の株主・分割会社またはその株主・完全子会社となる会社の株主に対して、存続会社・承継会社・完全親会社となる会社の株式を交付する必要があり、金銭その他の財産のみを交付し、株式を全く交付しない処理を行うことはできないと解されています。

現行法の下では、例えばA社がB社を吸収合併する場合、B社のある事業部門を吸収分割により承継する場合、B社を株式交換によって完全子会社化する場合には、必ずA社に新たな株主が生じることになります(B社の株主が新たにA社の株主になります。)このため、A社がC社の完全子会社であるような場合には、当該完全親子会社関係を維持したままB社を吸収合併等することができなくなりますが、少数株主が存在すると、親子会社間の利益相反の問題や株主代表訴訟を提起されるリスクが生じ、また株主総会費用もかかることになるため、グループ会社内の経営の柔軟性・効率性を害する面があります。特に、外国会社は国内会社と合併・会社分割・株式交換を行うことができないと解されているため、国内に100%子会社を設立し、完全親子会社関係を維持したまま合併等を行う強いニーズがあります。

要綱試案は、対価柔軟化を認めることにより、上記の例で言えば、A社がB社の株主に対して金銭その他の財産を交付することによって、C社との完全親子関係を維持したまま、B社を吸収合併等することを認めようとするものです。

すでに産業再生法上、経営資源再活用計画等の認定を受けた上で、金銭または他の会社の株式を消滅会社の株主等に交付することが認定計画の実施のために「必要かつ適切である」ことについて主務大臣の認定を受けた場合には、吸収合併・吸収分割・株式交換において存続会社等の株式に代えて金銭または他の会社の株式を交付することが認められています(産業再生法12条の9)。これに対して、要綱試案は、主務大臣も認定を必要とせずに、対価柔軟化を一般的な制度として会社法に取り込んでいる点に大きな意義があります。

対価柔軟化が認められれば、子会社が他の会社を吸収合併する場合にその親会社の株式を対価として交付するいわゆる三角合併や、消滅会社の株主に金銭のみを交付するキャッシュ・アウト・マージャーが可能となります。また、買収会社が受皿会社を新設または取得した上で、受皿会社による公開買付けを実施して対象会社の議決権の3分の2以上の株式を取得し、受皿会社と対象会社との間で現金等を対価とする合併または株式交換を行うことによって、対象会社の少数株主を排除して対象会社を非公開化するといったいわゆるゴーイング・プライベート取引にも活用されることが予想されます。

なお、新設合併・新設分割・株式移転という会社設立型の企業再編行為については、株式を交付しないと会社を設立することができないため、対価柔軟化は検討されていません。
このような規定が盛り込まれたのは、組織再編行為の多様化・国際化に伴い、金銭や、存続会社等以外の他の会社の株式をもその対価とすることを認めるべきとの要望が、国内外の実務界から強く寄せられており、これに対応したものです。

ただ、政府は法案提出の直前になってこの規定の1年凍結を決定しました。ライブドアによるニッポン放送株の買収攻勢が自民党や経済界などに敵対的な買収への危機感を高めたためと言われています。一方、導入を訴えていた海外投資家などからは反発が予想されています。

2.いわゆる「合併差損」等が生ずる場合の取扱い

以下にあげる場合においても、組織再編行為を行うことができるものとし、所要の開示手続を義務付けることとしています。

  1. 存続会社等が承継する負債の簿価が資産の簿価を超える場合(たとえば債務超過会社を合併する場合)
  2. 交付する対価の存続会社での簿価が、承継する純資産額を超える場合(たとえば代用自己株式を利用した場合)

現行法では、合併等において、存続会社等に差損が生じる場合を想定した規定はありません。(1)の場合のような、合併差損(消滅会社が債務超過)が生じる合併を認めるかについては、現行法においても議論のあるところですが、実務では、合併差損が生じない程度に時価以下主義のもとに、任意に資産の評価替えや「のれん」を計上するなど、恣意性が入りうる柔軟かつ不透明な処理がなされることが多くあったと思われます。しかし、今後、新しい企業結合会計基準による持分プーリング法を適用すると、適正な帳簿価額で引き継ぐこととなり、「のれん」等の計上が認められなくなるため、従来の時価以下主義を前提とした考え方を整理する必要性が生じました。要綱案では、上記のように、手続上の透明性を図るために必要な開示を行うことを条件に、合併差損が生じる組織再編行為を制度上正面から認めることとしています。
また、前述したように、合併等の対価の柔軟化が行われると、(2)のような局面がより多くなることが考えられるため、同様に法制上の手当を行っています。

税理士 赤木 甲太郎
[2006年1月23日 掲載]

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