第9回 株式関係 (3)
1.剰余金の分配にかかる規制の見直し
(1)会社財産の払戻し(剰余金の分配)の統一的財源規制
「利益の配当」「中間配当」「自己株式の買受け」「資本及び準備金の減少に伴う払戻し」は、株主に対する会社財産の払戻し行為という点では同じ意義を持つものですが、現行法では、上記に関する各規定は分散化され、それぞれの根拠規定、上限額なども異なっており、「わかりやすさ」を目的とする現代化の意義からしても、全体的にこれらの規定の調整を図る必要が生じていました。
要綱案では、この点に対応し、上記の払戻し行為を「剰余金の分配」という概念にまとめ、それぞれの行為を区別することなく、統一的に分配の財源規制を適用します。
(2)剰余金分配可能額の計算方法等の見直し
≪1≫ 計算方法の見直し
現行の配当可能額は「純資産額」から「資本等の額」を控除することによって算出しますが、最近行われた資本の部に関する改正により、資本の部の構成や勘定科目が複雑となり、現在の「引き算」的な計算方法が、必ずしも明確かつ合理的であるとはいえない状況となりました。
要綱案では、分配可能額の計算を最終の貸借対照表の留保利益等(分配できる額)から自己株式および当期に分配した金額(分配した額)を控除することとし、明瞭化のための工夫を行っています(図表参照)。
なお、この計算方法の見直しは、分配可能額について、現行法の実質を変更するものではありません。
≪2≫ 分配可能額の算定の基準時の見直し
現行法では、たとえば、定時株主総会の配当可能額は、対象となった決算日現在の貸借対照表にもとづいて算定すればよいこととされています。したがって、決算日後、決算確定時(総会の日)までの間に多額の自己株式の取得が行われても、この点についての法制上の特別な手当はされていません。要綱案ではこの点などを考慮し、次のように規定しています。すなわち、最終の決算期の貸借対照表から算出される分配可能額に、その分配を行う時までの分配可能額の増減(金銭の分配、資本金の減少等による増減をいい、期間損益による変動は含まない)を反映させることとしています(図表参照)。
図表 剰余金分配可能額(配当限度額)の計算例

≪3≫ 取締役会の決議による剰余金分配制度の創設
要綱案では会計監査人を設置し、かつ、取締役の任期が1年の株式会社(委員会等設置会社または監査役会設置会社)は、定款で剰余金の分配を取締役会の決議で決定できる旨を定めることができることとしています。
要綱案において、一般の株式会社の剰余金分配手続の原則は「いつでも、株主総会の決議によって、剰余金の分配を決定することができるものとする」となっており、株主等に対する利益配当の回数の規制は廃止されることになります。さらに上述のように、一定の要件を満たしている株式会社は、剰余金分配を、いつでも、取締役会限りの決定で行うことができることとなります。これは、現在の委員会等設置会社の規定との相違を整理することも目的の1つですが、本来的には、配当等の株主への利益払戻政策を弾力的に行うことを可能にする意図のものと考えられ、株式を公開している上場会社等の多くは、この規定を採用することになるものと予想されます。
なお、この定款の定めをした株式会社の営業報告書には、株主への情報開示を充実するため、剰余金処分の理由その他法務省令に定める事項を記載する必要があります。
2.法定準備金の減少額の規制(4分の1規制)の廃止
現行法では、法定準備金について、資本の4分の1を超えない部分を減少させたいときは、先に資本金を減少させなければならず、債権者保護の観点から資本金の維持を最優先すべきとしている商法の考え方とに、一種の矛盾が生じているとの指摘もあり、この規制は廃止されます。したがって、決定準備金を全額取り崩すことが可能となります。
なお、現行の利益準備金の積立に関する規定は、今後も維持されます。
3.定時総会関係の見直し
(1)定時総会の開催時期の弾力化
会計監査人等に計算書類等を提出してから一定期間を経過しなければ定時総会を開催することができないとする規制は廃止されます。
たとえば、大会社においては、総会の8週間前までに会計監査人等に計算書類等を提出しなければなりませんが、この規定があるため、会計監査人等の監査報告書が早い時期に作成されても、計算書類提出後、8週間を経過しなければ株主総会を開催することができません。決算確定の迅速化・弾力化を望む実務界から、これらに関する規定の見直しの要望が出されていました。
(2)株主持分変動計算書の作成義務
株式会社は、従来の貸借対照表、損益計算書および営業報告書に加え、株主持分変動計算を作成し、定時総会の招集通知に添付することになります。
国際的にも、株主持分変動計算書は決算書の一部として定着していること、また、前述したように、剰余金分配に関する規制が緩和されることなどが、作成が義務付けられる理由と考えられます。
税理士 赤木 甲太郎
[2005年11月25日 掲載]
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- 第9回 株式関係 (3)
- 第10回 合同会社(日本版LLC)関係
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