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第3回 設立等に関する規制の緩和

1.設立時の出資額の下限額の廃止

わが国の経済状況下において、新たな事業の創出・雇用の受け皿の確保による経済活動の活性化が最優先課題とされ、現在の最低資本金制度(株式会社1,000万円、有限会社300万円)が会社設立の障害となっているとの強い指摘がありました。要綱案では、最低資本金に関する規制を撤廃することとなりました(資本金1円での株式会社設立も可能となります)。
では、設立時の払込金が1円で済むようになれば、どのようなメリットがあるのでしょうか?

まず、設立に無駄な資金を用意しなくて済むようになります。
つまり、証券化などで活用されている一定の特別の目的のためのみに設立される会社(これを特別目的会社(Special Purpose CompanyとかSPCといいます)について、わざわざ300万円なり1,000万円なりを用意しなくとも、少額で設立できるようになります。証券化では、新たなSPCを設立するのが原則ですので、非常に便利となります。SPCについては、資本金が1円でも害が全く生じない場合がほとんどです。
例えば、ある会社から特定の財産を切り離してSPCに移転する場合(そしてSPCが当該財産を取得する資金は、当該財産から生じる収益のみを引当とするSPCの社債の発行により調達するとします)には、そもそも、社債の投資家は、SPCの資本金には全く関心が無く、特定の財産がどれくらい収益を生むのかに着目しているわけですので、資本金は1円でも1,000万円でも変わらないことになります。

また、社債を発行できる会社を容易に設立できるようになります。
つまり、SPCが社債を発行するには、有限会社が社債を発行できない現行法(有限会社法59条4項および64条1項但書などからそのように解されています)では、株式会社として1,000万円が必要になってしまいますが、最低資本金の制限がなければ社債を発行できる会社を設立するのも容易となります。

更に、現状では資金はないが、良質な技術やノウハウを持っている者に対して、起業する機会を提供することができるようになります。現在の不況下では、銀行からの融資も容易には受けることができませんので、設立資金として300万円なり1,000万円を用意することも困難であるという者は少なくありません(だからこそ、1円設立に多数の応募があったわけです)。例えば、1円で会社を設立した上で、事業資金を匿名組合(商法535条)の形態で出資すれば、事業者は設立・資金調達コストが低額で済み、出資者もハイリターンを得るチャンスを得て、とても満足いく結果を収める可能性のある仕組みとなるわけです。このように、最低資本金の撤廃は、日本経済の活性化に良い影響をもたらすものと評価できます。
なお、下限額の廃止に対応して、債権者保護の観点から、資本金の額にかかわらず純資産が300万円未満の場合には、剰余金があっても、これを株主に分配することができない規制が新たに設けられます。

2.設立手続簡素化のための諸手続の改正

このほか、設立手続を迅速かつ簡単に行うことを目的として、次のような改正も行われます。

(1) 設立登記の際に必要とされる、銀行等の払込金保管証明書について、残高証明書でもよいこととなります。現行法上、設立の登記の受理に際しては、銀行または信託銀行による払込金保管証明によらなければならないとされています(商法189条、有限会社法12条3項)。この払込金保管証明は設立に時間を要する要因の1つと言われてきました。今回残高証明書でもよいことになりましたので、迅速に処理されることが期待されています。
また、会社設立後の新株発行、新株予約権の行使による新株発行の場合等についても同様の手当をするものとされました。更に、銀行・信託銀行に限定されている払込取扱機関の範囲の拡大についても、郵政公社などを含める方向で検討するとされています。

(2) 現物出資・財産引受けについては、「資本の5分の1」かつ「500万円を超えない」場合に限り、検査役の調査は不要とされていますが、この条件を「500万円」という金額の要件に一本化します。

(3) いわゆる事後設立として、成立後2年以内に一定規模以上の財産を譲り受ける場合に必要とされていた検査役の調査制度は廃止されます。

税理士 赤木 甲太郎
[2005年7月1日 掲載]

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