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ドメイン名の不正取得・不正使用
Q
私は「たこ坊」というたこ焼き屋を営んでおります。長年の営業努力もあって顧客も増え、雑誌などにも取り上げられるほどになりました。また、「www.takobou.jp」というドメイン名でWebサイトを立ち上げ、店の宣伝などを行っています。ところが最近、「www.takobo.jp」というドメイン名のアダルトサイトができ、お客様からクレームがくるようになりました。しかも、そのサイト名は「たこ坊」とはまったく違うものです。対応に苦慮していたところ、そのサイトの運営業者から「www.takobo.jp」のドメイン名を買い取ってほしいという連絡がありました。このような場合、どう対応すればいいのでしょうか。
A
「takobou.jp」とわずか一文字違い(「u」があるかないか)のドメイン名「takobo.jp」を取得してアダルトサイトを開き、さらに、ドメイン名の買い取りを申し込んできたことから、ドメイン名の不正取得・不正使用と考えることができます。
この場合、2通りの対応策をとることが可能です。ひとつは、日本知的財産仲裁センターに、ドメイン名紛争処理方針に則って当該ドメイン名(takobo.jp)の登録取り消し、あるいは移転の裁定を求めて申し立てを行うというもの。
もうひとつは、不正競争防止法(第2条第1項第12号)に基づき、当該ドメイン名の使用差し止めを求めて訴訟を行うというものです。
いずれにしても、一度弁護士に相談された方がいいでしょう。また、日本知的財産仲裁センターでも、弁護士による法律相談を受け付けています。
【ドメイン名の不正取得・不正使用】
インターネットの発展に伴い、インターネット上の「住所」であるドメイン名は、電子商取引などのビジネスにおいて、消費者を特定のWebサイトに誘導するために重要な機能を果たしています。ドメイン名の価値が高まる一方、その取得は「先願登録制」(先願主義)と呼ばれ、実質的な審査もなく先着順に取得できるようになっています。そのために、実際にそのドメイン名を必要とする者以外の第三者によって不正取得され、さまざまな問題を引き起こしているのです。
ドメイン名の不正使用等の具体例には、以下のようなものがあります。
- 著名な組織名や登録商標などと同一、または類似するドメイン名を取得し、その知名度や信頼にただ乗りしたビジネスを展開する。
- 取得したドメイン名を使用せず、対象となる会社や商標権者などに登録にかかる実費を上回る高額で買い取らせようとする。
- 取得したドメイン名を、対象となる会社や商標権者などの信用を傷つけるようなWebサイト(アダルトサイトなど)に使う。
また、このような行為をサイバースクワッティング(Cybersquatting=サイバー不法占拠)と呼んでいます。
【ドメイン名紛争処理方針による裁定】
日本知的財産仲裁センターは、日本弁理士会と日本弁護士連合会が共同運営する団体で、2000年にJPNIC(社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター)と協定を結び、「JPドメイン名に関する認定紛争処理機関」となっています。
日本知的財産仲裁センターのドメイン名紛争処理方針によれば、当該ドメイン名の登録取り消し、あるいは登録の移転を申し立てることができます。
申し立ての要件は、
- 対象となるドメイン名が、申立人の有する商標などと同一または類似していること
- 登録者が、そのドメイン名登録についての権利または正当な理由を持たないこと
- 登録者のドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること
の3つになります。3番目の、不正の目的による登録・使用の内容については、「実費金額を越える対価で転売することを目的として登録している」「消費者の誤認混同をねらって、他人の企業名や商標などをドメイン名として登録・使用しているとき」などがあげられています。
【不正競争防止法】
不正競争防止法においては、従来、ドメイン名の不正取得・不正使用について「不正競争」にあたるかどうかが明確ではありませんでした。ドメイン名のような存在を想定していなかったからです。そこで、平成13年の改正で、ドメイン名の不正取得・不正使用が改めて「不正競争」の類型として追加されました。
不正競争防止法
第2条第1項第12号 不正の利益を得る目的で、又は他人に損害を加える目的で、他人の特定商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章その他の商品又は役務を表示するものをいう。)と同一若しくは類似のドメイン名を使用する権利を取得し、若しくは保有し、又はそのドメイン名を使用する行為
これにより、今まで見てきたような不正取得・不正使用の行為については、不正競争防止法に基づいて規制することが可能になったのです。
不正競争防止法による場合、ドメイン名の使用差し止めを請求することができますが、さらに、そのドメイン名を不正に取得・使用され営業上の利益を侵害された者は、そのドメイン名を使用できた場合に通常受けたと考えられる利益に相当する額を、損害額として請求することができます。
【裁判と日本知的財産仲裁センターによる裁定との差】
日本知的財産仲裁センターによる裁定では、ドメイン名の登録取り消し、または移転になります。これは、不正競争防止法には規定がありません。したがって、裁判で使用の差し止めが認められても、ドメイン名そのものの登録取り消しや移転は、改めて日本知的財産仲裁センターに申し立てることになります。一方、裁定では、信用毀損などの損害を受けた場合でも、損害賠償を求めることはできません。
なお、裁定の場合、すべて書面に基づいて処理されるので、関係者が出頭する必要もなく、最長でも申立から原則55営業日(約2ヶ月)で結果が出ます。また、結論が出るまでの間、当該ドメイン名の移転などは制限されます。
ITコンサルタント 磯野 康孝
[2006年6月8日 掲載]
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