第1回 海外市場進出による売上拡大の実現
日本の総人口は、2005年から減少に転じ、いよいよ少子高齢化の進展が加速していきます。国内市場の拡大が見込めない今、販売先としての海外市場に注目が集まっています。世界全体を見渡し、これから発展する市場はどこか、日本から輸出する場合に有望な市場はどこかについて説明します。
GDPから見た有望な国
まず、現在の市場として有望な国を考えて見ましょう。そのための有力な手がかりとなるのが、国の豊かさを示すGDP(国内総生産)です。2006年のIMF(国際通貨基金)による予測のトップ20カ国は以下の表のとおりです。経済大国としておなじみの国が並んでいますね。
今後の市場進出を考えた場合、市場が拡大している国が有望です。そこで、2004年から2006年の3年間のGDP成長率の平均値を比較し見ます。6%以上の高成長が期待されているのは、中国、インド、トルコ、ロシアの4カ国です。さらに、韓国と台湾が4.5%の成長が予測されています。
この6カ国の一人当たりGDPを見てみましょう。6カ国の間ではかなり差があることが分かります。韓国・台湾は日本の約半分ですが、ロシア・トルコは約1/6、中国は約1/20、インドは約1/50です。ですから、市場と見る際には、この一人あたりGDPの水準を考え、価格設定や製品を選ぶ必要があります。中国・インドは急速に成長していますが、まだまだ成長余地が大きいともいえます。
最後の購買力平価GDPの列を見てください。ドル換算のGDPは、通貨レートで変換したものです。一方の購買力平価とは、物価水準で換算したものです。同じ物(例えば鉛筆)が、いくらで買えるかを基準に換算したものです。これを見ると、すでに中国は日本を抜いて世界2位、インドは日本よりも少し下の4位のGDPとなるのです。つまり、物価水準から見た市場は非常に大きいということが分かります。為替レートは、究極的には購買力平価に近づくと言われています。ですから、将来的には為替レートが修正され、ドル換算GDPでも大きな市場となることが予想されます。
| 国名 | GDP(10億ドル,2006年) | 2004-2006 GDP 平均成長率 |
一人当たりGDP(2006年) | 購買力平価GDP(2006) | |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | アメリカ | 13,124 | 3.7 | 43,804 | 13,049 |
| 2 | 日本 | 4,652 | 2.2 | 36,432 | 4,168 |
| 3 | ドイツ | 2,770 | 1.2 | 33,405 | 2,610 |
| 4 | イギリス | 2,212 | 2.4 | 36,494 | 1,911 |
| 5 | 中国 | 2,172 | 8.9 | 1,654 | 8,877 |
| 6 | フランス | 2,124 | 1.8 | 33,894 | 1,890 |
| 7 | イタリア | 1,723 | 0.9 | 29,666 | 1,770 |
| 8 | カナダ | 1,181 | 3 | 36,408 | 1,168 |
| 9 | スペイン | 1,165 | 3.1 | 28,012 | 1,081 |
| 10 | ロシア | 921 | 6 | 6,554 | 1,707 |
| 11 | ブラジル | 883 | 3.9 | 4,752 | 1,640 |
| 12 | 韓国 | 853 | 4.5 | 17,438 | 1,180 |
| 13 | メキシコ | 824 | 3.6 | 7,696 | 1,122 |
| 14 | インド | 809 | 6.9 | 732 | 3,919 |
| 15 | オーストラリア | 709 | 2.9 | 34,325 | 675 |
| 16 | オランダ | 626 | 1.5 | 38,321 | 523 |
| 17 | トルコ | 373 | 6.3 | 5,115 | 612 |
| 18 | ベルギー | 368 | 2 | 35,310 | 338 |
| 19 | スイス | 359 | 1.4 | 49,306 | 251 |
| 20 | 台湾 | 353 | 4.5 | 15,271 | 675 |
(IMF WORLD ECONOMIC OUTLOOK Database, September 2005より)
人口から見た有望な国
先ほどのGDPは、短いスパンで見た場合の有望度について主に見ました。今度は、より長いスパンの有望度についてみてみましょう。
ここでは、人口推移を見てみます。GDPの予測は難しいですが、人口推移の予測はある程度正確に行えます。人口が増えれば、当然、市場規模は大きくなります。ここでは、2005年の推計人口と、2015年の推計人口、そして、10年間の増加率を示しています。
先ほど取り上げた6カ国の中では、中国とインドが13億人と11億人と、圧倒的に多い人口です。2015年までの増加率を比べると、インドの方が14%と中国の6%に比較して高くなっています。2030年には、インドが中国の人口を抜くと予想されています。いずれにしても、両国ともに巨大な人口を抱えた有望な市場となるでしょう。
ロシアは現在の人口は7位ですが、10年間に4.5%も人口が減る予想です。ただ、先ほど見たように、年平均GDP成長率が6%ですから、人口減以上に経済は成長すると予想されています。人口が今後減るという事実は、抑えておいたほうがよいでしょう。
トルコは、現在17位の人口で、10年間で13%の人口増となり、着実に成長しそうです。
韓国、台湾は、2005年の人口ベスト20に入っていません。
上で上げた以外の国では、インドネシア、ベトナム、フィリピン、タイなどのASEAN諸国やブラジルが人口も多く、また、人口増加率が高くなっています。
こういった国が将来、市場として有望な候補となるでしょう。
| 順位 | 国名 | 2005年(千人) | 2015年(千人) | 増加率 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 中国 | 1,315,844 | 1,392,980 | 5.9% |
| 2 | インド | 1,103,371 | 1,260,366 | 14.2% |
| 3 | アメリカ | 298,213 | 325,723 | 9.2% |
| 4 | インドネシア | 222,781 | 246,813 | 10.8% |
| 5 | ブラジル | 186,405 | 209,401 | 12.3% |
| 6 | パキスタン | 157,935 | 193,419 | 22.5% |
| 7 | ロシア | 143,202 | 136,696 | -4.5% |
| 8 | バングラデシュ | 141,822 | 168,158 | 18.6% |
| 9 | ナイジェリア | 131,530 | 160,931 | 22.4% |
| 10 | 日本 | 128,085 | 127,993 | -0.1% |
| 11 | メキシコ | 107,029 | 119,146 | 11.3% |
| 12 | ベトナム | 84,238 | 95,029 | 12.8% |
| 13 | フィリピン | 83,054 | 96,840 | 16.6% |
| 14 | ドイツ | 82,689 | 82,513 | -0.2% |
| 15 | エチオピア | 77,431 | 97,155 | 25.5% |
| 16 | エジプト | 74,033 | 88,175 | 19.1% |
| 17 | トルコ | 73,193 | 82,640 | 12.9% |
| 18 | イラン | 69,515 | 79,917 | 15.0% |
| 19 | タイ | 64,233 | 69,064 | 7.5% |
| 20 | フランス | 60,496 | 62,339 | 3.0% |
制度から見た有望な国
最後に、日本から市場開拓のために輸出する場合は、関税率が大きな障害となる場合があります。世界的には貿易は自由化される流れですが、WTOを中心とした体制はなかなか交渉が進展していません。そのため、それを補完する形で2国間のFTA(自由貿易協定)が世界中で進められており、日本でも積極的に推進しています。
FTAが締結されると基本的には相手国に輸出する関税が撤廃されるため、輸出には大変有利となります。以下の図は、FTAとの交渉状況です。日本は、ASEA諸国との交渉を積極的に進めています。FTAが発行済みや大筋合意している国は、非常に有力な輸出先となるでしょう。
| すでに発効 | シンガポール(2002年)、メキシコ(2005年) |
| 大筋合意 | フィリピン(2004年)、マレーシア(2005年)、タイ(2005年) |
| 交渉中 | 韓国、ASEAN、インドネシア、チリ |
| 共同研究実施 | インド、オーストラリア、スイス |
まとめ
今回は、統計データとFTAの状況から、今後市場が拡大する有望な市場について分析しました。その結果、中国、インド、ロシア、トルコ、ASEAN諸国(シンガポール、フィリピン、マレーシア、タイ、インドネシア)、ブラジル、メキシコなどが有望そうだということが分かりました。ブラジル、ロシア、インド、中国はBRICsと言われ注目されていますが、この4カ国も入っています。
次回は、より具体的に各々の国の事情について述べたいと思います。
著者プロフィール
小島 琢矢(こじま たくや)
小島経営研究所 代表- 1970年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻 博士課程修了。博士(学術)。チェスの1993年世界青年(U-26)チーム選手権では 日本代表キャプテンを務めた。大学院、NTT基礎研究所では、コンピュータ囲碁の研究を行う。その後、NTTコミュニケーションズ(株)に移り、マーケティング、経営企画などを担当。
2005年3月に独立し、現在、経営コンサルタントとして、コンサルティング業務、講演、各種執筆を行っている。専門は、ブルーオーシャン戦略、経営品質向上プログラム、マーケティング、内部統制、リーダーシップなど。
著書:「ポケット図解 新会社法がよ~くわかる本」(秀和システム) (2005年11月出版)
http://www.kojima-keiei.biz-web.jp
[2006年3月6日 掲載]
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