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ビジネス視点で見る“ストップ地球温暖化”

第2回 “ストップ地球温暖化”が改善へのモチベーションを上げる

前回は、地球温暖化=気候変動を食い止めるために、企業の「省エネルギー化」へ向けた取り組みが不可欠であることをお話ししました。
原油価格が高騰している現在、製品の競争力を高めるという観点からも、コスト削減を図るという面からも、企業にとって「省エネルギー化」は大きなテーマとなっており、それに向けて新たな経営戦略の「見直し」が必要とされています。

では、この「省エネルギー化」への取り組みが従業員にとってどのような効果をもたらすのでしょうか。従業員にとって、自分たちの企業が社会的に“尊敬できる企業”であることは、そこで働く意欲やモチベーションを高め、結果的に生産性向上やコスト削減につながる可能性があります。

しかし、これまで作業や工程の改善に取り組むために「提案箱」と「報奨金制度」を設けてみたが、年間に数えるほどの提案しか得られず、思ったような効果を見出せなかった。また品質管理活動として「QCサークル」を実施してみたが、回を重ねるごとに、単に生産ライン合理化のための“定期的な集まり”という「やらされ感」が強まり、いつしか止めてしまった。という経営者の声を耳にすることも少なくありません。

そこで今回は“ストップ地球温暖化”がどのように従業員のモチベーションを高め、生産性改善へ役立つのかを考えてみましょう。

1.「改善」の根底にある企業風土や文化

1-1. なぜ「トヨタ生産方式」が注目を集めているのか

どんな企業でも、作業や工程を改善するために何かしら試みているでしょう。
いま世間では「トヨタ生産方式」という言葉が流行しています。書店の経営書のコーナーには、この方式に関する数多くの書籍が並んでいるのを目にします。
なぜいま「トヨタ生産方式」がもてはやされているのでしょうか。

「トヨタ生産方式」とは、「問題があればラインの作業者自身の判断でラインを止め、表面的な事象の陰に隠れている真の原因=「真因」を徹底的に調べる」ことに則っていると言われています。この姿勢が企業全体の「改善」への風土となり、実績を上げることに成功しました。

中でも、最近注目を集めているのが『見える化』と呼ばれている手法です。これは、個人の到達目標などをグラフ等で表現し、そこへ進捗を記入することにより全体で個々の動きを把握していくという方法です。

このように『見える化』された情報は、達成への励みとなるだけでなく、上司や他の人に状況を知らせることで、その人がいまどのようなサポートを必要としているかを理解し、共有できるようになるのです。

1-2. 真の原因を追求する『5回のなぜ』

また、トヨタ生産方式では『5回のなぜ』という言葉も知られています。これは何かトラブルが発生した時、「表面的な原因=その場での理由」の発見で終わらせずに、その陰に隠れている「真の原因=構造的欠陥」にまでさかのぼるために、何段階にも「それはなぜか」という問いかけを積み重ねて行く、という考え方です。

構造的欠陥は、表面的な原因のもつ「特殊性」を乗り越えた「普遍性」を持ち、全ての職場に還元できる要素を含んでいるからこそ、これを究明することがとても重要なのです。

1-3. こうした手法が活きる企業風土と文化

しかしこうした手法は、職場の風土や文化が異なれば、マイナス要素となり逆効果になることも考えられます。
改善手法といっても、その基盤には「みんなが支え合って努力する」企業風土や文化が存在することが必要だと言えるでしょう。従業員一人ひとりのモチベーションが高まり、日々の改善のために注意を払い、それに時間を費やせるような企業風土があればこそ、可能になるのです。

企業風土は、一朝一夕に出来上がるものではありません。企業風土や文化を築いていくために「省エネルギー化」への取り組みは、従業員の行動を揃え、モチベーションを高めるうってつけのテーマとなってくるのです。

2.「省エネルギー化」に取り組むことへの結束

2-1. まず「職場単位のスローガンと実行目標」を掲げる

この「省エネルギー化」の取り組みは、単なるコスト削減=合理化努力として行うのでなく、私たちの暮らしが豊かになった原動力である「化石エネルギー(石炭・石油・天然ガス)」を、将来世代に少しでも多く贈り物として渡すことです。それは従業員にとって高い「使命感」に支えられた目標となります。

そのためには、現場の一人ひとりが自分は何が出来るのかを考え、職場ごとに議論し、「職場単位のスローガンと実行目標」を掲げ、行動を『見える化』して行くのです。

このように現場での実践目標が、企業や事業所の「実行目標」や「計画」に採用されることで、従業員のモチベーションは徐々に高まってきます。

2-2. 生産現場の「改善」へ

ISO14001「環境マネジメントシステム(EMS : Environmental Management System)」 (注1) 」近年では、認証取得後の年数を経るに従ってスタート時点の活気が消え、「惰性感」と「やらされ感」が広まってきています。そのマンネリ感をどうすればうち破ることができるのでしょうか。

それには、省エネルギー活動が、ただ「昼休みの消灯」や「冷房設定温度28℃」という従来型の実行プログラムに終わることなく、「職場単位での目標」に従った計画によって、「自分たちで決めた目標は、自分たちで責任を持って達成する」という雰囲気を職場に植えつけ、新たな仕組みを持ち込むことが必要です。

段階を追って仕組みを導入するには、まず進捗や達成状況をグラフ化して『見える化』による情報の共有を浸透させます。現在は、IT(情報技術)を利用することで、より効率的な『見える化』が可能になります。そして達成できなかった場合には、その「真因」を探るために『五回のなぜ』を繰り返し、原因を探ることを実行し検討していきます。
最終的に、その結果から得られた「真の原因=構造的欠陥」を職場に留まらず、幅広く全社展開するのです。

2-3. 「将来世代への贈り物」として外部へ活動を宣言する

次に前述してきたことをさらに徹底するために、外部へ活動を宣言して行きます。
現在、CSR(企業の社会的責任)報告書という形式で、従来の環境保全活動だけでなく、社会的活動全般を外部に情報公開する企業も増えてきています。こうした考え方の延長線上に「職場のスローガンと目標」を位置づけるのです。

つまり、自分たちの環境問題や省エネルギーに賭ける思いや取り組みを、事業所が存在する地域の子どもたちに知ってもらうために、定期的に手作りの環境報告書や達成状況などを報告するのです。これはリレーショナル・マーケティングの一環として、CSRや企業活動のPRにおいても有効であり、さらに「授業」や「工場見学」へ誘導することで企業理解を深め、環境教育としても重要な役割を果たすことになるのです。

企業が外部に約束すること、これが「将来世代への贈り物」宣言となります。
こうして打ち出した宣言と活動は、外部に「見える」企業像として、従業員の自覚や意識をさらに高め、達成に向けた責任感も強められるのです。そして、改善に向けた仕組み自体が評価を受け、社会化されることで、従業員も自分たちが「尊敬される企業」をつくり上げる一員であることへの参加意識を持つことができるようになります。

改善活動は「やらされ感」から脱却し、「明確な動機づけ」が与えられれば活性化します。“ストップ地球温暖化”のために省エネルギー化と取り組むことは、「将来世代への贈り物」であるという考えを明確にすることで、従業員のモチベーションを上げる強い動機づけとなるのです。

次回は、製品を通した“ストップ地球温暖化”が、どのように企業競争力を高めるのか、マーケティングの視点を含めて、考えてみたいと思います。

用語解説

注1: ISO14001「環境マネジメントシステム(EMS : Environmental Management System)」
ISO14001として知られている「環境マネジメントシステム」は、企業の自主的努力によって、事業活動や製品・サービスにおける環境負荷の低減を目指す、環境管理の一手法です。具体的には、Plan(計画) - Do(実行) - Check(検証) - Action(行動)のサイクルを回しながら、らせん状に上昇してゆく方法が用いられています。

[2008年7月29日 公開]

著者プロフィール

佐々木 雅一 (ささき まさかず)
グリーン戦略研究所 代表
1947年生まれ、京都市出身。
京都大学工学部卒、技術士(廃棄物処理)、MBA(経営学修士)、大阪経済法科大学客員教授、関西学院大学商学部講師(非常勤)。
民間会社勤務を経て、環境コンサルティング会社に勤務。この間に神戸大学大学院にて経営学を学び、同会社取締役を退任後、独立し環境・経営コンサルティング会社を設立。
環境とビジネスを結ぶコンサルタントとしての経験は25年以上におよび、環境アセスメント・廃棄物処理計画、ISO構築・認証取得のコンサルティング、環境マーケティング活動・環境報告書作成など、多くの活動と実績を有している。また、各種の講演、講習会において幅広く講師を務めるとともに、関西の大学で「環境論」「環境経営論」の授業を担当し、学生とともに企業の環境対応について学習・研究を行っている。

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