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第1回 “ストップ地球温暖化”が経営戦略を変える
地球温暖化に関する報道は毎日のように目に入ってきます。今月開催される「北海道洞爺湖サミット」の記事や、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスについて排出削減義務を定めた「京都議定書」への対応をめぐる様々な動き、そのために政府が提唱している「チーム・マイナス6%」への参加の呼びかけなどにより、先進国をはじめ、今や世界的に環境問題への取り組みが強まってきています。それに伴い多くの企業が、クリーンエネルギーで大量の省エネ効果をもたらす高効率の太陽光発電パネルの開発や、CO2排出量の少ないハイブリッド・タイプをはじめとするエコカーなど、環境問題を考えた製品開発が注目を集める一方で、製品や生産の仕組みづくりだけでなく、従業員一人ひとりにも環境問題を考えた活動が求められるようになってきています。
しかし、地球が温暖化するといっても、それで明日にも生活環境が激変するとも考えられないし、現在のビジネスのやり方が急に変化するとも思えない、とお考えになる経営者の方も多いのではないでしょうか。地球温暖化=気候変動は、ビジネスにとって今後の重要な課題である反面、社会に与える影響が大きければ大きいほど、対応次第では企業価値を高めていくことも可能となるのです。
このコラムでは全4回に渡り、これからの企業の在り方と経営戦略について一緒に考えていきたいと思います。
1.「地球温暖化」が企業に与える影響
1-1. IPCCの論議に見る、今世紀末の地球
昨年開催されたIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)第27回総会 : 気候変動に関する政府間パネル (注1) において、第4次評価報告書が採択されました。報告書では、世界中が化石エネルギーを重視しつつ、高い経済開発を優先する最悪のケースから、環境保全と経済の発展が地球規模で両立する最善のケースまで、幾つかのシナリオを設定して、今世紀末に地球はどのように温度が上昇しているか、その姿がシミュレーションされました。その結果、21世紀末の地球全体の平均気温は、最善のシナリオでも1.8℃上昇し、開発途上国や中進国もなお一層の経済的発展を目指すという最悪のシナリオとなった場合には、最大で6.0℃も上昇すると予測されました。そして、熱帯低気圧の強度が強まり、大雨の頻度が増加することなどの懸念が強まりました。では、こうした地球温暖化から起り得る気候変動は、企業にとってどんな影響をもたらすのでしょうか。
1-2. 気候変動が企業に与える影響
まず考えられるのは、大雨や勢力を増した熱帯低気圧によって、洪水が多発する事態になれば、その地域に生産拠点がある場合、直接的には生産設備や製品などが被災する可能性があります。また、間接的な被害としては、多くの従業員が被災することで生産要員確保の問題が生じ、道路や交通網が寸断されると製品輸送の問題も生じてきます。さらに、顧客が被災すればこちらからの納品がストップするでしょうし、購入・調達先が被災していれば、部品や素材が届かないという事態に直面することも考えられます。
1-3. 地球温暖化は二酸化炭素(温室効果ガス)の増加に起因
こうした気候変動による直接的・間接的な被害が考えられますが、もっとも根本的な問題は、地球全体の平均気温の上昇(地球温暖化)が、燃料や電力といった形で化石エネルギーが多量に使用され、大気中の二酸化炭素濃度の蓄積的な増加によって、その多くが引き起こされているということにあります。次の図1で示すように産業革命以来、地球を取り巻く大気中の二酸化炭素濃度は増加をはじめ、1950年代以降の「石油の時代」になって二酸化炭素濃度は急激に増加に転じました。

この点については、化石エネルギーといわれる石炭・石油・天然ガスの使用量の地球規模での増大が、地球温暖化の一因となっていると、先のIPCCの報告書でも強い懸念が表明されました。私たちが行う企業活動も、通常は多量の「エネルギー使用」の下に成り立っていますから、このままでは二酸化炭素の排出増大につながり、ひいては地球温暖化の原因の一つだということになってしまいます。
1-4. 「省エネルギー化」が最大のテーマ
地球温暖化=気候変動を食い止めようとすると、「省エネルギー化」は避けて通れないことがわかりました。経済でも現在OPEC(石油輸出国機構)の生産調整を越えた投機マネーが流入しているために原油価格が高騰し、それにつれて世界中でガソリンや食料の価格が上昇している状況です。そのためコスト削減の面からも企業にとって大きなテーマであり、省エネルギー化は企業戦略の面からも有力な手段となるのです。
生産における省エネルギー化だけでなく、製品が「省エネタイプ」であることも重要なポイントになります。製品が省エネタイプになれば、
- BtoBであれば、顧客先のコスト削減に
- BtoCであれば、生活者の生活費削減に
- BtoGであれば、グリーン購入の対象に
となるので、競争力を高めるセールスポイントにもなり、その取り組みがなされてこそ企業価値も高まっていくのです。
“ストップ地球温暖化”を考えることは、いまや経営の根幹に関わる問題だといっても過言ではありません。ここからは、実際にどのような経営戦略が求められているかを考えてみたいと思います。
2. 「地球温暖化」を経営戦略に適合させる
ここで、経営戦略ということを、少し振り返ってみましょう。多くの企業は、「理念・憲章」を持ち、「事業戦略」や「事業ドメイン(事業の範囲)」、それに「経営資源の配分」や「ブランド・マーケティング戦略、製品戦略」、さらにはそれを下支えする「情報・IT化戦略」、これらの経営指針により成り立っています。
では、このような経営戦略の基本概念(理念・憲章、事業戦略、事業ドメインなど)と地球温暖化というテーマは、どのように関連してくるのでしょうか。それは、次のように考えられます。

企業にとって経営戦略とは、「自社にとっての判断・選択の基準や指針となり、その指針の下で決断すれば大きな誤りとはならず、全従業員が頼るべき“羅針盤”の役割を果たす」ものだと考えられます。
そのため、地球温暖化=気候変動というテーマを、競争優位の源泉にしていくためには、今という時代に沿った新しい戦略が必要とされているのです。
3. 全てのステークホルダーに信頼される企業に
従来の経営戦略は、いわば「利益創出のための方法論」として存在していました。これからの経営戦略は「企業価値を上昇させるための方法論」として存在するべきなのです。それが結果的に利益創出に結びつくことになります。
外部のステークホルダーである株主や金融界をはじめ、顧客や取引のある企業そして地域住民に対して、“企業価値を上昇させる”ことは利益の源泉になり、信頼感を生み出すことにつながり、結果的に好感を持って迎えられるでしょう。
そして何よりも、企業が環境問題と取り組む姿勢は、従業員にとっても「尊敬できる企業」と映ります。企業からすれば、従業員と密接なコミュニケーションをとって、企業への参加意識を高めることができ、結果として生産性の向上やコスト削減につながる可能性を秘めており、企業価値上昇の原動力にもなるのです。
ここまで、“ストップ地球温暖化”というテーマに添って経営戦略を見直すことが、企業の内外で有利に働いてくるということをお話ししました。次回は「生産現場における改善」に“ストップ温暖化”を目指す取り組みが従業員のモチベーション向上にとって、具体的にどのように役立つかについて、考えて行きたいと思います。
[2008年6月30日 公開]
著者プロフィール
佐々木 雅一 (ささき まさかず)
グリーン戦略研究所 代表- 1947年生まれ、京都市出身。
京都大学工学部卒、技術士(廃棄物処理)、MBA(経営学修士)、大阪経済法科大学客員教授、関西学院大学商学部講師(非常勤)。
民間会社勤務を経て、環境コンサルティング会社に勤務。この間に神戸大学大学院にて経営学を学び、同会社取締役を退任後、独立し環境・経営コンサルティング会社を設立。
環境とビジネスを結ぶコンサルタントとしての経験は25年以上におよび、環境アセスメント・廃棄物処理計画、ISO構築・認証取得のコンサルティング、環境マーケティング活動・環境報告書作成など、多くの活動と実績を有している。また、各種の講演、講習会において幅広く講師を務めるとともに、関西の大学で「環境論」「環境経営論」の授業を担当し、学生とともに企業の環境対応について学習・研究を行っている。
- 第1回 “ストップ地球温暖化”が経営戦略を変える
- 第2回 “ストップ地球温暖化”が改善へのモチベーションを上げる
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