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第4回 ~想像力の強化 デキる自分を演じる力~
個性を紡ぎだす演技力の育成!
「演技力と個性」が人材を人財に変身させる!
- 広い視野を持ち続け、記録する習慣をおろそかにしないこと
- 問題を放置せず、常に問題解決意識を持つこと
- よりよい段取りをおこなうために情報を整理すること
- いつも客観的・立体的に自分と周囲の状況の把握に努めること
前回までの話を上記のようにまとめてみました。それぞれのテーマに対し、情報の整理術や、心理学的な要因分析や対応方法の理解など、まだまだ多くのエッセンスを自らも学び、人財教育を進めるヒントを得なければなりません。特に人財の個性を認めつつ、多種多様な状況に対応できる能力を育成することは、大変に忍耐強く取り組む必要があるステップです。
「ヒーローなら、どうするか?」演技とは、想像力の源!
「テレビに出てくるような、すごくデキるビジネスパーソンだったら、こんな状況の時、どうすると思う?」
部下が悩まざるをえない状況にあるとき、私はよくこう言います。このセリフは、「自分を客観的に見る」ことへの誘導となります。「自分の内側」にあった意識を、外側に導きだし、客観的に自分と周囲の状況を認識させること、および回答・解決シーンを作りだそうとする道のりへと誘っていきます。
例えばあなたが、A君に“ある仕事”を任せたとしましょう。A君が仕事を遂行する経過で判断に迷うたび、また問題がおきるたびにあなたが答えを用意するのでは、本当に任せたといえません。A君を問題に取り組ませ、いくつかの回答・解決案を用意させたうえで、あなたが決定の手伝いをする。それがA君の経験になり、あなたのノウハウを伝授するよい機会にもなり、最良の教育となるのです。
「A君がもし、テレビに出てくるような、すごくデキるビジネスパーソンだったら、こんな時、どうすると思う?」
A君は、いままで見たテレビや小説、マンガのなかの優秀なヒーロー、ヒロインを思い浮かべ、さまざまなストーリーを思い描くことでしょう。時としてA君の回答は、まさにテレビの中にしかないような突飛な回答になるかもしれませんが、あなたはそれを楽しむくらいの余裕で聞いてあげるといいでしょう。
「じゃあ、A君も知っている、B班のC君だったら、どうするだろう?」
そんな風に、いろいろな人物になってもらいながら、回答を誘います。そうして、A君は演技を通して、幅の広い人財に成長していくのです。演技力は、もちろんお客様との対応時にも役立ちます。お客様に合わせて、自分のキャラクターをどのように変化させればウケがいいか、なんて考えられるようになれば、一流といっていいでしょう。
相手を理解することと、相手に同意することは、違う!
「僕は僕だ。他人(ひと)がどう考えるかなんて、わかりっこない…」
少しでも、そういう思いがA君にあるようなら、まずA君に理解し、信じてもらうべきことがあります。それは以下の3ヶ条です。
- 他人の考え方を否定しては、何も得られない
- 他人の考え方を理解しても、必ず同意する必要はない
- 自分は、より理想の自分に、必ず変化していける
他人の考えに同意できなかったり、なんとなく違和感を感じたり、「それは違う…」と思うことは誰にでもよくあることです。しかし、「それは違う…」を、口に出す前にトライすることがあるはずです。
第2回でお話しした「問題解決」を、思い出してください。おかしなことに出会ったら、“なぜ?”と“要因を突き止める習慣”を持つことが重要でした。情報は、「なぞ付きの情報」のままに放置せず、「なぜ付きの情報」にすることで、意味や意図の解明につながります。「他人の意見には、耳を傾けなさい」と、先達が言うのは、“反省”しなさいとか、“あなたはわがままだ”と言って、プライドを傷つけているのではありません。“他人の意見には、ヒントがあるかも知れない”というのが真意です。
相手の意見や考えに同意できないとしても、相手がなぜその考えに至ったのかを分析することは、相手を理解することにつながります。警戒する必要はありません。「相手を理解する」ことと「相手の考えに合わせる」ことはイコールではないからです。
「相手を理解したうえで、必ずしも同意しなくてもよいのだ。かえって、ヒントを吸収できるチャンスなのだ」
このフレーズを念頭に置くことで、余裕のある大人らしいコミュニケーションが可能になるでしょう。「それは違う…」と言ってしまう前に、自分以外の考え方を知り、ヒントを得、相手を理解することが大切です。そうした理解があればこそ、前述した演技力の幅も増し、さらにいろいろな人物になりきって発想ができるようになるというわけです。
もうひとつ、A君には、“成長は、いつまでも続けられる”ということ信じてもらいましょう。自分は、もっと成長できる。もっとかっこよくなれる。もっとデキるようになる。そうした願望は、単なる夢ではなく、「計画である」と意識させることで、多くが実現に至るのだと教えます。
「自分はこんなものだ…」とあきらめたように思ったとたん「成長が止まる」といいますが、「止まる」のではなく、自ら「止めてしまう」のです。「意識の持ち方は、物理的に脳に影響する」と脳生理学でも言われています。A君が成長をあきらめないように、あなた自身も含めてポジティブに生きる見本となることが、A君にも、自身にも、企業にも、そして家族にとってもプラスになるのです。

“イメージトレーニングで、経験値を上げる!
さて、A君がもしB班のC君だったら、どう考えるか? …という疑似体験=演技を通して、さまざまな考え方を理解してもらうとともに、自分の経験値にするという話をしてきました。ここではそのエッセンスである“イメージトレージング”について、さらに理解を深めて行きましょう。
何人かで考えを導き出しあって情報を抽出・整理・検討する方法として、“ブレインストーミング”が有名ですが、グループでなくとも“イメージトレーニング”は大変に有効な手段です。ご存知かと思いますが、ボクサーがおこなう“シャドウ・ボクシング”は、架空の相手を脳内で想像しながらトレーニングをおこなう方法です。「相手のパンチがこうきたら、こう避けて、こう出る!」というように、バーチャルな体験を積み重ねることによって、脳や身体の反応のトレーニングになるといいます。
例えば、あなたが、A君にとって初対面であるX社に、提案営業に行くように指示したとします。まだ営業に慣れきっていないA君は、たくさんの不安を持つことでしょう。
「X社の担当って、どんな人だろう」
「すぐに断られたら、どうすればいいだろう」
「僕の知識で足りるんだろうか」
そうした不安の軽減のために、あなたはきっと知りうる限りのX社の情報を、A君に伝えたうえで、A君に言います。
「A君なら、きさくなX社の担当さんに気に入られるよ。
X社に到着するまでに、いろんな仮説・仮定のもとで、どんなトークができるか、頭のなかで考えておくといいよ。さあ、いまからA君は、“めっちゃデキるビジネスパーソン”に変身だからね」
A君は、X社とのやりとりについて多くの仮説を立てては、応対のパターンを頭の中で次々と組み立ててみます。バーチャルとはいえ、イメージトレーニングは徐々にA君の経験値を上げていくに違いありません。その「経験値」が、「演技力」の幅を大きくし、お客様に対してA君は余裕を持った対応をおこなえるようになっていきます。

人財育成の最大のポイントは、“個性の発見”!
- 相手の考えを理解し、分析し、吸収して向上する“演技力”
- 仮説に繰り返し対応することでトレーニングされる“経験値”
上記の2つは相互に作用することで、相乗効果を発揮して人財を成長させていきます。演技力が増せば、より複雑な相手を想像することができ、その相手への対応のトレーニングを繰り返せば経験値が増す。「営業マンは、人間的に成長が早い」と、よく言われますが、職種的にこのサイクルが短く、多いからではないかと、私は分析しています。
こうして「演技力」と「経験値」の向上をはかりながらも、見逃してはいけないとても重要なことがあります。それが“個性”の発見です。
A君が演技して“なりきった人物”や、A君が考えた“数々の仮説の傾向”。あるいは、“時系列に考慮したA君の成長過程”。あなたが記録してきた情報や、感覚的に得ているA君の指向性をもとにして、A君の個性とはどういうものかを認識しておきましょう。
- A君は、どうも感覚的な人物の意見は理解しやすい
- A君は、技術者的な人物の感覚の理解が苦手らしい
- A君は、女性の感性に対して、少しアバウトに理解しているようだ
- A君は、以前より、身近なほかのスタッフに興味を示してきているかもしれない
- A君は、困ったときでも笑顔を作りだして、かわいがられる要素がある
- A君は、コンピュータを利用する解決手法や仮説を立てる傾向がある
このように列記しただけでも、なんだかA君の雰囲気が見えてきます。あなたは、A君の個性を常にウオッチし、苦手な点の補強、あまりに偏った指向を示した場合の誘導を、必要に応じておこなっていくという使命があるのです。
今回は、人財力をより実践的に活かすための「演技力」という視点からお話ししてきました。次回最終回は、よりメンタルな面に特化したサーバント・リーディング、カウンセリングについて、そして適材適所の有効性による企業のリスクヘッジについて、一緒に考えて行きたいと思います。
[2009年2月2日 公開]
著者プロフィール
- 山岡 敬章(やまおか たかあき)
株式会社ワイズシステム 代表取締役 1964年生。経営(新規事業・販売促進・戦略人事)および、知的財産、ITシステム コンサルタント。
http://www.wides.com/yamaoka.htm

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