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人財に恵まれる人材育成法

第3回 ~あなたとは違う! 客観的な視野と段取り力!~
「段取り上手な人財」育成は、立体思考の基本理解から!

「聞く、伝える、話す、まとめる、まかせる」を理解する

皆さんは「段取り八分」という言葉をご存知でしょうか? 段取りが充分であれば、仕事が大変効率よく進む、という意味の言葉です。
ところが、段取りという言葉の意味を知らない若者も最近では多いようです。辞書によると、前準備や前もっての手順のような意味が列記されています。いわば「計画」であると認識いただくのが良いでしょう。
万全な計画であれば、実行しやすく、問題が起きる可能性も低い。こうした計画を策定できる能力が「段取り力」といわれるものです。

では「段取り力(=計画を上手に立てられる能力)」とは、具体的にどんな能力なのでしょう。

  1. 聞く
  2. 伝える
  3. 話す
  4. まとめる
  5. まかせる

このように5つに分解するとわかりやすいでしょうか。
第1回でお話しした、「広い視野」、「問題解決力」、「グループ力」の基本能力を、より具体的に分解したものであるこの5つの能力を、実際にどのようなバランスで養っていくのかを、お話ししていきましょう。

「聞く」「伝える」「話す」とは?

「聞く」「伝える」「話す」というと簡単そうですが、「効果的に聞く」「効果的に伝える」「効果的に話す」というと、ちょっと高度になってきます。

「聞いてる?」

スタッフに指示を出しながら、そういう質問をしたことは誰しもあるでしょう。おそらく多くの場合、「はい、もちろん」というような頼もしい返事が返ってくることと思います。

そこで、次のように質問を少し変えてみたらいかがでしょう?

「十分理解してるよね?」

ここでのポイントは、“聞いているのはもちろん、意味を理解したか”という認識を問う形に変わったところです。聞かれた本人の頭のなかは、それぞれ、次のような感じでしょうか?

「聞いた?」 もちろん、聞いていたから、「はい」と即答。
「理解した?」 “え! ちゃんと聞いてはいたけど、意味は…たぶん理解したよなぁ”
と自分に問いかけ(自己認識)、そして返答。

微妙な問いかけの変化には、返答の変化が追従します。さらに、「十分」を付けた場合、こうなります。

「十分、理解してるよね?」 “自分なりに理解はしたと思うけど、十分かなぁ? よく考えて返事しなきゃ、まずいな。”

この変化、素晴らしいことではないでしょうか!

「理解した?」のように一方的ではなく、「してるよね?」という言い回しに、質問する側の気づかいが見て取れます。この「気づかい」に対して、答える相手はきちんとした返事をしなければ、という心理が働きます。すると、「自己認識」に加え、「反芻(はんすう)・咀嚼(そしゃく)」という効果がプラスされます。自分が理解しているかをチェックし、そのチェックをさらに繰り返して精度を高めてから、しっかりとした返事をしなければ…、と思うわけです。

慣れない間は、返答にやや時間がかかるスタッフもいると思いますが、決して「おい、どうしたんだ!」なんて怒ってはいけません。人は思っていることや、話したいことを考えている途中で遮られると、大きなストレスを持ちます。これが繰り返されてトラウマになってしまうと、いくら優しい言葉で問われても、なかなか返答できない性格・性質になってしまうこともあるのです。

あまりにも返答が遅いと判断した場合には、「少しでもわからないとか、納得できない部分は、いくらでも聞くから言ってみてね。考えてから、あとで返答に来てもいいよ」とフォロー続けることが、相手の立場に立つということにつながります。

簡単な一例でしたが、これが「サーバント・リーディング」と呼ばれている技術の一端です。上司が、サーバ(“仕えるもの”という意味で、パソコンの指示によって情報を提示するコンピュータのサーバと同様の意味)になって、スタッフのモチベーションを維持しながら、どのように上手に仕事をしてもらうか、というリーダーシップの取り方の概念のひとつです。

「聞く」「話す」、そして「反芻(はんすう)・咀嚼(そしゃく)」という流れがあって、「伝える」能力の基本になることに気付いていただけましたでしょうか。
「5と5と5…」と聞いて、「5が3つ…」とか「5×3…」と端的に伝えることもできる、という小さな気付きや工夫を重ねること、より伝わりやすい表現を選んで話す技術こそが、「伝える」ことなのです。

「まとめる」「まかせる」とは?

前章における「伝える」を基本に、より大きな観点で事象・状況・条件などといった情報を整理し、取りまとめる技術のことが効果的に「まとめる」という技術です。まとめる技術は、下記のように“グルーピング”することからはじまります。

  1. 情報を、同じ「課題」ごとにグルーピングする
  2. 情報を、同じ「目的」ごとにグルーピングする
  3. 情報を、同じ「手法」ごとにグルーピングする

さまざまな情報を、「課題(問題)」「目的」「手法」のいずれか、もしくは複合によって、グルーピングして考察する習慣を持つことは、分析能力の原点でもあります。スタッフにまず「まとめる」テクニックを身に付けてもらうことは、次にお話しする「まかせる」技術をより効率的に覚えていただくために必須でもありますので、おさらいしてみましょう。

(1) ロケットAは、ジェットエンジンの効率がよくなく、燃料をたくさん使う

(2) ロケットBは、ジェットエンジンの効率はよいが、なぜか燃料をたくさん使う

(3) ロケットCは、電子制御の機器に不具合の発生が多いが、ジェットエンジンの効率はよい

この3つのケースを、まず「課題(問題)」で分類するとどうでしょう。

この図のようにロケットAとロケットBの共通点は、「燃料をたくさん使う」。そして、ロケットBとロケットCが、「エンジン以外の不具合の可能性」でグルーピングされそうですね。

このように整理・分類=グルーピングすることが、「仮説の検証」の一例となります。
問題を解決するには、仮説をいくつか立て、検討していくという基本的な思考ロジックがあります。ぜひ、日々現実にある情報を前に、「グルーピングしてみよう!」と、スタッフとともに楽しんで仕事に取り組んでみましょう。それが、次に必要な「まかせる」という技術であり、まかせられたスタッフも、「まかせる」技術を自然と学びとっていくことになります。
「聞く、伝える、話す、まとめる、まかせる」という5つの能力は、それらが補い合うように成長するものなのです。

あなたとは違う! 客観的な視野の「段取り」とは?!

「聞く、伝える、話す、まとめる、まかせる」と進めてきましたが、話をクルクルクルっと最初に戻してみましょう。情報を取得し、整理し、まとめ、どのように消化するかを考えられるようになれば、計画する能力=「段取り力」が向上したと言えませんか?

ここまで「聞く」「理解する」についてお話してきましたが、実際の「聞き方」、「理解の仕方」の心得について、最後にお話ししましょう。

先ごろ、「あなたとは違うんです。私は自分を客観的に見ることができるんです。」というような発言が世間で注目を浴びました。この発言に対して賛否両論あるなか、私はまわりの反応に注目し、“やはりそうなのか”と別の角度から確信めいた気づきに行き着いたのです。

A) 「自分の置かれている状況を、“客観的”に見て考えるなんて、そんなの普通じゃないか」

B) 「自分の置かれている状況を、常に“客観的”に見続けるって、ほんとに難しいものだ」

A) をヒモ解くと、「自分の置かれた状況を考える=自分の状況を、まわりから見たように分析するテクニック」であり、B) については、「自分と周囲を客観的に見続ける=自分を俯瞰(ふかん)する能力そのものを常に使い続ける」ことについての批評であると思われます。

私は、「段取り力が発達している人」は、将棋やチェス、サッカーといった複数の要因が同時に働いているゲームも得意であるという仮説を持っています。自分というコマ、ポジションを俯瞰(ふかん)で見ながら、まわりの状況や進み具合なども同時に把握しつつ、トータルに分析しながら、自分と周囲にも指示を出し続けることができる能力。これを、「立体思考力」と呼び、段取り力の原動力であると考えます。

「立体思考力」は、A) のように、自分を中心に情報・状況を分析するという意味だけでなく、B)のように、常に移り変わる周囲の状況・条件などを含め、自分を背後から見ているような視野を持ち続けることを定義しています。分析手法そのものではなく、常に客観的な視点と分析回路をリアルタイムに働かせることができるというのは、常に周囲に興味を持ち、アンテナを張り巡らし、見渡し続けるトレーニングによって、どんどんと磨いていける能力なのです。

今回は、人財力を個人だけでなく、組織として活かすための第一歩について、お話ししてきました。ここまでの連載で、最強のビジネスパーソン養成の基礎が整ってきたのではないでしょうか。
次回は、いよいよ「キロク力」「段取り力」「立体思考力」などをベースにしつつ、これを活かせるビジネスパーソンの姿について、「演じる力」という観点から一緒に考えて行きたいと思います。

[2009年1月5日 公開]

著者プロフィール

山岡 敬章(やまおか たかあき)
株式会社ワイズシステム 代表取締役

1964年生。経営(新規事業・販売促進・戦略人事)および、知的財産、ITシステム コンサルタント。
http://www.wides.com/yamaoka.htm


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