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人財に恵まれる人材育成法

第2回 ~人財育成のためのメンタル基礎知識~
自分チェックからはじめるキロク力育成法

前回お話ししたように、感情や感覚的な情報を記録に残し時系列的に分析することは、企業にとっても、個人にとっても、方向性チェックのための基礎資料となる大変に有益な手法であることがわかっていただけたかと思います。

データ(情報)は、点のままでは寡黙(かもく)ですが、時系列に並べる、分類するなど、たくさんの点が集合や線状になったとたんに、落ち着いた口調ながらも饒舌(じょうぜつ)になることがあります。その淡々とした語り口に対して、注意深く耳を傾ける姿勢を常に持ち続けることが、大切な情報を見つけるための努力と言えるのですね。

このように、たくさんのデータから、もしくは加工したデータの塊りのなかから、真に大切な情報を発見することを、データマイニングといいます。

マイニングとは“発掘”という意味です。埋もれた情報から意味のあるものを“発掘”するという表現は、大変にわかりやすいですね。アンケートや意識調査などによくある「ご自由に記入ください」といった、文章(テキスト)で答えさせる情報をデータとして取り込み、どのような“単語”、“意味の言葉”がよく使われているか、どの言葉とどの言葉がよく一緒に使われているか、といった分析によるテキストマイニングという手法も注目を浴びています。

今回は、たくさんの情報から、さまざまなヒントを得る能力の基礎として「情報の記録」にスポットライトを当て、それを個人のシチュエーションにあてはめて話しを進めてみましょう。

キロク力の強化は、最強ビジネスパーソンへの近道!

きろくかと読んだアナタ、正解です(笑)、いえいえ、本当は記録力(キロクリョク)なのですが、記録化(キロクカ)という意味で捉えていただいても正解といってよいでしょう。

人財力を育成する初期の過程で、記録についてのエッセンスを導入し、それを明解に指導することは、その後の学びに非常に重要な役割を果たします。それは、記録する力を発揮してもらうことで、より効果のある学習と結果に結び付くからです。
また、「人財力」と呼ばれる基本能力(第1回参照)が高いだけでは、周囲からの期待に対するプレッシャーやストレスの蓄積といったメンタル的な問題には対処しきれません。自分を知り、頭のなかを整理し、スッキリとした気持ちで仕事をこなすには「キロク力」についてしっかりと理解し、習慣づける必要があるのです。

「昨日、仕事で困ったことはなんだったかな?」
「今日、会社に行って、最初に見たメールはなんだったかな?」
「他のスタッフに伝えておかないといけないことは、なかったかな?」
「明日、会社に行って、一番にこなしたほうがいい仕事はなにかな?」

このように最近の行動や状況について、自分自身に質問をしてみてください。そして、深呼吸しながら、ひとつひとつ丁寧に頭のなかで、もしくは声にして答えてみましょう。

  • 自分は、いまどんな行動のパターンをもっているのか
  • 自分の行動は、適切だろうか
  • 覚えておかなければならないことを、きちんと覚えているか
  • 次にすべきことは、本当にそれでいいのか

「あ、忘れていた!」とか「あ、しまった!」と、時間に追われているときほど、口にしてしまいます。今一度、落ち着いて自分の状況や、判断、予定などについて、ゆっくりと確認することで、頭のなかの記録された情報=脳内データベースを見直し、整理し、最適化することになります。

自分の行動や考えを反芻(はんすう)し、咀嚼(そしゃく)することで、自分の軌道を修正するこの手法は、自分に対するカウンセリングであるといえ、イメージトレーニングの一環として医療やスポーツの世界でも、よく利用されている方法のひとつです。この方法の効果について、より確信を持っていただくために、ひとつ実験をしてみましょう。

目を閉じたまま、左右の手の人差し指をゆっくり近づけ、指の中心をぴったりと合わせてみましょう。いかがですか?

少しだけズレてしまった方がおられたなら、今度は目を開いたまま、ゆっくりと同じようにしてみます。目を開けて何度か試してから、また目を閉じて指を合わせてみてください。どうですか? 指を合わせられる位置の精度が向上したのではないかと思います。

「自己認識」を繰り返すことで、自分の腕、手、指と脳による制御機構を微調整し、動きの精度を上げることに成功したわけです。自己認識による身体、思考、対ストレス能力の向上とは、人間の基本的な治癒力同様、医・科学的であって信頼してしかるべきものなのです。

「なぞ情報」を未然に防ぐ、「なぜ付き情報」

「キロク力」トレーニングをより強力に、効果的におこなうためには、頭のなかへの記録ばかりでは、覚えておかなければ!といったストレスが少々高くなりすぎる場合もあります。そのためにも情報化時代の現在、紙やパソコンという道具を使った記録という方法による脳力の補助は欠かせません。

  • 今日、どれだけの仕事をしたか? = なぜ?
  • 今日、となりのAさんは、どんな仕事をこなしていたか? = なぜ?
  • 今後の仕事のプライオリティ(優先順位)は? = なぜ?
  • そもそも、どんな仕事が、いま残されているのか? = なぜ?

このように、過去・現在・未来、そして周囲に通じて、ぜひ自分と、自分を取り巻く状況を記録してみてください。ただし、それぞれに「なぜ?」を付けることを条件とします。「なぜ、その仕事の優先順位が高いのか?」といった理由を付加していただきたいのです。

「なぜ?」付きの情報にして紙やパソコンに記録することで、頭のなかの記録同様、意味付きの情報として再現することが容易になるうえに、その情報を記録した意義・意図は一体なんだったのだろう? といった「なぞ」付きの情報の発生を未然に防ぐことにもなるのです。
「なぞ」付き情報の大量発生を防ぐことによって、「思い出すこと自体に時間と労力を消費してしまう」ことが激減し、時間効率も画期的に向上するのです!

図1は、物事の意味・進捗、PDCA(Plan, Do, Check, Action)を順次記入することができ、付箋(ふせん)で状態を視覚的に把握できるように、自身のために開発した付箋紙と付箋紙ソフトです。

Pには「きっかけや計画」、Dに「実行の様子」、Cでは「実行した様子、内容のチェック」を、そしてAでは「反省点、改良点」を記入して利用するのが基本ですが、Pに「覚え書、メモ」、Cに「詳細、意味」、C「進行状況」…とアイデア次第で応用できます。
(PDCA付箋参考:http://www.mieruto.com/index2.htm

キロク化といっても、具体的にどんなふうにメモしようか…と考えている方にこの方法を、ぜひお勧めしたいと思います。ほかにも、なぜ付き、意味付きで情報をキロクできるツールやノート、手帳を探してみたり、ご自身で開発することも楽しいかもしれませんね。

自分の頭の中身・思考を、手帳・PDAやケータイ電話、グループウエアにどんどんと記録しながら、もっとよい記録の順番、方法、選択肢を思いついたなら、積極的に変更していきます。思い出した仕事があれば、もちろん追加しましょう。

こうした自分の頭のなかの整理は、“デフラグ”(パソコンなどのハードディスクのデータ順序を整理して、動きをより速める)機能のようなものです。自分のことを認識しなおすという意味で、自己認知・自己理解などともいいます。こうしたトレーニングを積みながら実践し、ぜひ人財教育の場で、自身の体験として、「キロク力」の真価・大切さを認識させてあげてください。

学校で学んできた「記録」という手法。たくさんのノートをとった経験は、多くの方がお持ちだと思います。社会人になっても、まずは記録することが情報処理の原点であることを改めて念頭に置いておくとよいでしょう。
勘や経験を積めばつむほど頭のなかを倉庫にし、また問題を頭のなかだけで処理してしまいがちになり、「キロク力」に対する依存度が低下する場合も多く見られます。

「おいおい、上司が呼んだ時は、必ずメモをとる体制で来るもんだぞ!」
なんて古いセリフのようですが、基本はやっぱり大切。任せたいと思ってスタッフを呼んでも、メモもとらずに長い指示をただ頷いていられると、大丈夫かな? と不安になります。
優秀な営業マンに話を聞くと、お客様と話しをするとき、安心してもらえるように、たくさんメモを書いているフリをすることもあると聞きます。

私のデスク横のスペースにも、私が入力する用途ではないノートパソコンが一台置いてあります。これは打ち合わせや指示のためにスタッフを呼んだとき、スタッフがそのパソコンでグループウエアにメモをとりながら、私と話を進めていくためのものです。

こうすることで、お互いに誤解のない意思疎通がはかれ、指示や情報伝達が非常に効率的になりました。まさにパソコンの真価ではないかと思うくらいです。時代とともに、紙のメモがパソコンになったとしても、「キロク力」という基本はずっと活きているのですね。

連載第2回は、人財力の基本能力を活かすため、そして時間や情報をより効率的・効果的に活用するために必要な「キロク力」の基礎について、お話しさせていただきました。

記録する習慣、何事も見直して整理する習慣、いつも自分を見つめコントロールする習慣をしっかりと身につけることは、メンタル的な面からも必須であり、活躍を続ける最強ビジネスパーソンとしての基礎になるのです。

次回は、キロク力をもとにし、より実務に即した「段取り力」をご紹介します。「聞く、伝える、話す、まとめる、まかせる」といった能力について一緒に考え、チームワークにつながる人財力についてお話していきたいと思います。

[2008年12月2日 公開]

著者プロフィール

山岡 敬章(やまおか たかあき)
株式会社ワイズシステム 代表取締役

1964年生。経営(新規事業・販売促進・戦略人事)および、知的財産、ITシステム コンサルタント。
http://www.wides.com/yamaoka.htm


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