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第5回 投資キャッシュフロー・財務キャッシュフローを管理する
1.3つのキャッシュフローの関係
第2回から第4回までの3回にわたり、本業から稼ぐキャッシュである営業キャッシュフローを増加させていくために何をすべきかを述べてきました。営業活動によるキャッシュフローに重きを置いて説明したのは、本業の強化こそがキャッシュフローを良くするためです。キャッシュの源泉は利益であり、本業で多くの売上をあげること、かかる経費を少なくすること、そしてキャッシュを減らす原因となる資産を過度に抱え込まないこと、に他なりません。投資活動によるキャッシュフロー(財テクや含み益を抱えた資産の売却)や、財務活動によるキャッシュフロー(借入金)で企業全体としてのキャッシュフローがプラスになったとしても、それは一時的なものです。借入金について言えば、将来必ず返済しなければなりません。継続的にキャッシュを稼げるのは営業活動しかあり得ないのです。
キャッシュフロー経営の目的は、企業のフリーキャッシュフローを最大化することである、と言われます。フリーキャッシュフローには様々な定義がありますが、「営業活動によるキャッシュフロー-現状維持のための設備投資」と言えます。現状維持のための設備投資は必要不可欠であると考えられるためフリーキャッシュフローからは控除します。このように算出されたフリーキャッシュフローは、その名の通り企業が「自由に」使えるキャッシュです。このキャッシュで新たな事業へ投資をしてもいいし、借入金を返すことも、投資家へ配当するのも自由です。このフリーキャッシュフローをどれだけ生み出せるかが企業価値を決めます。フリーキャッシュフローを大きくすることが目的なら、現状維持の設備投資だけして、余計な投資などしなければいい、と思われるかもしれませんが、商品やサービスにはライフサイクルがあります。早い段階から次の手を打っておかないと、3年後、5年後には現在ほどの営業キャッシュフローが生み出せなくなるかもしれません。そのためにも、フリーキャッシュフローを新たな投資に配分していく必要があるのです。フリーキャッシュフローの範囲内で新規投資を行うことが理想ですが、時にはフリーキャッシュフロー以上の大きな投資が必要になることがあるかもしれません。そのような時は財務キャッシュフローが必要となります。このように、営業活動で稼いだキャッシュを投資活動に向け、過不足分を財務活動で調整しながら更に多くのキャッシュを稼ぐ営業活動を行っていく、という一連の流れがキャッシュフロー経営であると言えます。
2.投資の意思決定
キャッシュフロー経営の観点からは、投資案がキャッシュフローを増やすものであるのか、という投資効率を考慮したうえで意思決定を行う必要があります。将来キャッシュフローを生まない投資は、行う価値がありません。もしそのような価値の無い投資を借入金で賄っていたとしたら、返済原資が生み出せないことになります。
将来見込めるキャッシュフローの金額は、その投資を実行することによって増加する利益を算定し、「税引き後利益+減価償却費」で計算できます。投資案件を実施するか否かを判断する方法に、正味現在価値の考え方があります。正味現在価値とは、その投資によって得られる毎年のキャッシュフローを現在価値に割り引いたものの合計額から、投資額を差し引いて算出されます。正味現在価値がプラスであるなら、その投資は将来のキャッシュフローを増加させるので実行できます。投資案が複数あるなら、最も正味現在価値の大きい投資が有利、ということになります。
ここで、投資によって増加する利益は、あくまで現時点での「計画」です。計画通りにいかなかったらどうするのか、という問題が当然出てきます。しかしながら、ここで重視すべきなのは「計画がある」ということです。当初計画していた通りに行かないとすれば、どの部分が計画通りではないのかがわかります。売上高なのか、費用の部分なのか、売上高だとすれば数量の問題なのか、価格の問題なのか、数量だとすれば供給量(生産体制)の問題なのか、需要量(ニーズ、販売方法)の問題なのか。このように、計画があり、実施した結果と違う場合は原因を究明して対処する、これこそがPDCAのマネジメントサイクルに他なりません。
中小企業診断士 那智久代
[2007年2月22日 掲載]
- 第4回 営業キャッシュフローを管理する(売上債権編)
- 第5回 投資キャッシュフロー・財務キャッシュフローを管理する
- 第6回 キャッシュフロー経営の実践
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