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第3回 営業キャッシュフローを管理する(在庫編)
1. 営業キャッシュフローを減らす要素
前回は、営業キャッシュフローの源泉は利益である、ということを述べました。そもそも、本業においてしっかりと利益を残すことが営業キャッシュフローを稼ぐ基本になります。しかしながら、本業で利益を残せたにもかかわらず、営業キャッシュフローを減らす原因があります。それが、在庫(棚卸資産)と売上債権です。このことは間接法の営業活動によるキャッシュフロー計算書を見ても明らかです。在庫の増加と売上債権の増加はともにキャッシュを減らす原因となります。キャッシュと利益が違う、ということを説明する際に引き合いに出される「勘定合って銭足らず」「黒字倒産」を説明する際にも、その原因は大きく在庫と売上債権にあるとことが示されるでしょう。
2.在庫の持つ意味を考える
販売業や製造業であれば、売上を確保するためにはある程度の在庫を持つ必要があります。在庫を持つこと自体は商売をしていく上で必要な行動です。問題になるのは、「必要以上に」在庫を持っているような場合です。在庫はそのままでは何の価値も生み出しません。有利子で調達した資金を、何の利益も生み出さない資産に投資しているのと同じことになります。「無駄な在庫は持たない」ということが重要な管理目標になります。無駄か無駄でないかの判断はどのようにすればいいでしょうか。財務指標面からのアプローチでは、在庫回転率、在庫回転期間などがあります。これらは、前回お話しした売上高利益率とも関連する指標です。関係性を図にすると次のようになります。

広義の収益性分析の指標は、総資本経常利益率からスタートして売上高に対する利益率と、資産の効率性を見る回転率とに分解されます。回転率の指標は、売上高÷資産という計算式で表されます。前回は利益率(狭義の収益性)について考察しました。今回の在庫については、資産の効率性はどうなっているのかを分析する必要があります。回転率が高ければ効率よく売上を稼いでいることになるし、低ければその逆となります。回転期間の算出式は、在庫÷(売上高÷12)となるので、短ければ短いほど良好である、ということになります。在庫高については、季節変動が無い業種では期末残高を使用しても構いませんが、平均残高を使うほうがより正確に分析できます。
3.在庫を削減する
在庫回転率が前期と比較して改善している、横ばいだからといって、それで何の対策もとる必要がないわけではありません。同業他社と比較して効率的に売上につながっているか、という視点も必要です。
在庫は借金で買っていますから、なるべく早く売上に変える必要があります。在庫を減らすには「在庫管理」を徹底する以外にありません。これは、製造業にも言えることです。製造業では、在庫を抱えていないと短納期化に対応できないという現実があるかもしれませんが、在庫の最小化と短納期というトレードオフの関係にあると考えられていたものを同時に実現したのがかんばん方式です。その根本は、どこに、何が、いくつあるのかを正確に把握することに他なりません。在庫を管理せずに放っておくと、当初は正常在庫であったものが不良在庫、死蔵在庫、棚卸減耗となって、最終的には在庫に投じた資金の全額又はほとんどが回収不能となってしまいます。お金を捨ててしまったのと同じことです。在庫には資金が投下されているということを意識して管理していくことが必要になります。
しかしながら、財務面の都合だけで削減など在庫の適正化をしてしまうと、欠品などの機会損失にもつながりかねません。売れ筋・死に筋などを分析した上で品揃えを最適化するといった市場面の視点も必要になります。財務面だけでは売上減少の可能性があり、市場面だけでは在庫が膨らむ可能性があるため、どちらか一方だけを追求するのではなく、両方の側面から対応していく必要があります。
中小企業診断士 那智久代
[2006年12月27日 掲載]
- 第2回 営業キャッシュフローを管理する(利益編)
- 第3回 営業キャッシュフローを管理する(在庫編)
- 第4回 営業キャッシュフローを管理する(売上債権編)
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