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第1回 キャッシュフロー計算書の役割

1.キャッシュフロー計算書と資金繰り表の違い

「キャッシュフロー」の考え方は、広く浸透してきているように思いますが、多くの中小企業では、まだまだ「資金繰り」のほうが重要視されているというのが現状ではないでしょうか。
キャッシュフロー計算書も、資金繰り表も現金(キャッシュ)の出入りを管理する、という点では同じものです。しかしながら、その性質は異なります。
資金繰り表は「来月、半年後の資金は足りるだろうか、足りなければどうやって調達しようか」という未来志向の管理資料で、業務的な視点が中心となります。しかしながら、ここには「なぜ資金が足りないのか、どうすれば資金を潤沢にすることができるか」といった根本的な原因の解決という戦略的な視点はありません。このような視点から、経営を考えるための1つのツールがキャッシュフロー計算書であると言えます。

2.キャッシュフロー計算書の構成

キャッシュフロー計算書は、過去の資金の流れを示しているに過ぎないのに、なぜ戦略的な視点からの経営分析に有効だと言えるのでしょうか。
そのヒントはキャッシュフロー計算書の構成にあります。キャッシュフロー計算書は、資金の流れを(1)営業活動によるキャッシュフロー、(2)投資活動によるキャッシュフロー、(3)財務活動によるキャッシュフローという3つの源泉別に示しています。
営業活動によるキャッシュフローとは、その名の通り本業からどれだけのキャッシュを稼いだか、を表しています。通常はプラスになります。投資活動によるキャッシュフローとは、有形固定資産の購入・売却や金融資産の購入・売却などによるキャッシュの増減を示しています。設備投資が必要な業種であれば、マイナスになるのが一般的です。財務活動によるキャッシュフローとは、借入金や増資などの資金調達によるキャッシュの増減を表しています。

3.キャッシュフロー計算書の役割

キャッシュの源泉別に、結果がプラスかマイナスかを見ることにより、おおよその企業の状況を把握することができます。

  A社B社C社
営業CF
投資CF
財務CF+/- +/-

A社は、本業でしっかりとキャッシュを稼ぎ、それを投資に向け、過不足を借入金等で調整できていると推測できます。一般的に、このようなキャッシュフロー計算書の状態が理想的だと言われています。B社は、本業でキャッシュを稼ぐことには成功していますが、投資を行っていないと推測できます。投資は現状の売上規模の維持や新たな売上拡大のため、つまり将来の営業キャッシュフローを生み出すために行うものなので、投資を行わないという現在の意思決定が、長期的に見て最善の戦略なのかを検討する必要があります。C社は本業でキャッシュを稼ぐことができずに、資産の切り売りや金融機関等からの借入でその場をしのいでいることが推測されます。このような状況では、現金化できる資産が底をつく、あるいは資金の出し手がいなくなった時点で資金ショートに陥ってしまいます。本業の建て直しが急務であると言えます。

上記は一般的な目安であり、ある単年度だけが理想的ではないキャッシュフローの状況に陥ることもあります。計画していたほどキャッシュが残らない、という事態が起こるかもしれません。ここでご理解いただきたいのは、そのような状況になった時に、その原因を特定し、懸念事項なのか懸念事項ではないのかを判断し、継続的にキャッシュを稼ぎ出せる体質になるように対策を講じていく必要がある、ということです。その一連の活動こそが「キャッシュフロー経営」であると言えます。

次回以降は、それぞれの区分ごとのキャッシュフローについて詳しく見ていきたいと思います。

中小企業診断士 那智久代
[2006年10月27日 掲載]


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