Fujitsu The Possibilities are Infinite

 

  1. ホーム >
  2. 富士通ジャーナル >
  3. 先端テクノロジー >
  4. データセンターの省エネ化に向け、温度分布を「見える化」する多点温度測定技術

データセンターの省エネ化に向け、温度分布を「見える化」する多点温度測定技術

ITシステムから排出するCO2の削減が大きな環境問題となるなか、富士通研究所は、データセンターの省エネ化を実現するために光ファイバーを温度センサーに用いてデータセンター内の温度分布をリアルタイムかつ綿密に測定する多点温度測定技術を開発しました。


データセンターの電力消費は4割が「空調」

IT業界では、サーバの高性能化、ITシステムの規模や稼働時間の拡大により、データセンターにおける電力消費が増加しており、地球温暖化問題を背景に、データセンターの省エネ化、省電力化が業界の大きな環境課題となっています。

データセンターの電力消費は、ITリソースが大半を占めると考えられがちですが、実際は「空調・電源・照明」といったITファシリティが55%を占めています。なかでも空調は全体の40%にものぼることから(富士通2006年度実績)、データセンターの空調効率を高め、省エネ化を進めることは、CO2排出量削減を進めるうえで大きなファクターとなっています。

定点温度測定による一律冷却が過剰冷却の要因に

空調の電力消費が多いケースの多くは、室内一箇所で温度を測定し、その温度に準じて室内全体を一律で冷却してしまうために、部分的、一時的に過度な冷却がおこなわれることにあります。ではなぜ、データセンター内の複数ポイントに温度センサーを設置して各ポイントの温度を詳細に把握し、空調効率を高める対策が進まないのでしょうか。

温度を測定するセンサーは、対象物にセンサーを直接接触させる接触式温度センサーと、対象物から放射される熱放射の強度から測定する非接触式温度センサーに大別できます。建屋内で使用されている温度センサーには、接触式で感度がよく正確に温度を測定できる半導体式温度センサー(注1)や熱電対式温度センサー(注2)などが広く利用されています。

こうした従来の温度センサーの場合、測定ポイントに1台ずつ設置するには温度センサーごとに電源および通信ケーブルの配線が必要となり、ケーブル類の敷設・管理が極めて煩雑となります。そのため、コストがかかるうえに、業務変化に伴うサーバラックの増減や機種更新への柔軟な対応も困難となり、多くのデータセンターで多点温度測定が採用されてきませんでした。

光ファイバーを多点温度測定に適用する新技術

しかしながら、比較的安価に多点温度測定を実現できる既存技術がなかったというわけではありません。光ファイバー自体を温度センサーとして用いれば、測定器1台と光ケーブル1本で、同時かつ多点にわたる温度測定が可能です。

光ファイバーを用いた温度測定では、光ファイバーにレーザーを入射したときの戻り光から「ラマン散乱光(注3)」だけを取り出し、その強度の時間変化を1ナノ秒単位で測定します。こうして測定された「時間」と「光強度」を、それぞれ「距離」と「温度」に換算することにより、測定ポイントの温度を得ることができます。

この測定手法は、トンネル内の災害発生を遠隔監視するシステムなどで以前から利用されていました。しかし温度の位置分解能(注4)が2メートル以上と長いため、多数のIT機器が密集するデータセンターには適用されてきませんでした。

富士通研究所では、この位置分解能を短くすることができればデータセンターへの適用が非常に有用であると考え、以下の2つの技術を開発しました。

測定誤差補正技術

測定ポイントの実際の温度と光ファイバーによる測定値を分析し、測定誤差を補正する計算式を独自に開発。温度の位置分解能を1メートル以下にまで向上させました。

光ファイバーの敷設方法最適化技術

高温部と低温部が近接する場所においても正確な測定値を得るために、データセンター内の温度分布を熱流体シミュレーション(注5)で算出。光ファイバーの敷設方法を最適化する技術を開発しました。

低コストで温度分布を「見える化」

光ファイバーによる温度測定は、1本の光ファイバーと測定器1台さえあれば可能です。光ファイバーの価格は比較的安価なため、大規模データセンターの場合、測定ポイントごとに温度センサー器を設置する従来の多点温度測定と比べ、低コストで測定できます。

また、光ファイバーは長寿命で、電気ケーブルよりも極細で敷設しやすく、位置情報も簡単に把握できるため、サーバラックの変更・更新にも容易に対応できます。

この技術をデータセンターに適用した場合、上記のメリットのほかに、次のような効果もあります。

一万個所以上でリアルタイム測定

この技術では全長10キロメートルの光ファイバーで1万箇所以上の正確な温度測定が可能で、測定時間は最長約30秒です。したがって、2,000台超のサーバラックを収容する大規模データセンターにおいても、データセンター全体の温度分布をほぼリアルタイムに把握できます。

設置機器の電気配線への影響なし

光ファイバーはサーバなどに電気的な影響を与えることがないため、光ファイバーの敷設可能な場所であればどこでも温度測定でき、データセンターの利用者側へのセキュリティを十分に考慮した敷設が可能です。

温度異常による災害リスク低減に貢献

サーバや空調システムなどの温度異常をきめ細かく迅速に把握することが可能になるため、火災などの災害リスクの低減にも貢献します。

空調エネルギーマネジメント技術の確立へ

現在、より精細な温度分布把握に向けて、光ファイバーの位置分解能を向上するための技術開発を進めています。また並行して、把握した温度分布情報をもとに空調運転最適化手法を検討しており、2009年度内の空調エネルギーマネジメントに向けた基本技術確立を目指します。

富士通研究所ではこの多点温度測定技術のほかにも、サーバ冷却・実装技術やエネルギー利用技術(先進廃熱利用技術)、ハード製品・ソフトサービスのLCA(環境負荷評価)分析技術など、データセンターのCO2排出量削減にフォーカスした研究開発を幅広くおこなっています。こうしたさまざまな先端テクノロジーとの連携により、富士通の「Green Policy Innovation(グリーン・ポリシー・イノベーション)(注6)」を支えるグリーンIT技術を開発し、お客様の環境負荷低減に貢献していきます。

注記

(注1)半導体式温度センサーとは :
ダイオードなど半導体素子の電気抵抗が温度により変化する特性を利用した温度センサー。
(注2)熱電対式温度センサーとは :
異種金属を接合した1対の金属線から成る温度センサー。接合点の温度に応じた起電力が生じることを利用して温度を測定する。
(注3)ラマン散乱光とは :
物質にレーザー光などの強力な光を照射すると、その光の波長に対し、わずかに長い波長と短い波長の光が散乱する。これをラマン散乱光と呼び、物質の温度に応じて強度が変化する性質をもつ。
(注4)温度の位置分解能とは :
温度をより細かく忠実に再現する能力のことで、近くにある2つの温度を区別するのに必要な最小の距離を表す。位置分解能が高いとは、2つの温度を区別できる距離が小さいことを意味する。
(注5)熱流体シミュレーションとは :
データセンターなど室内の温度分布・空調負荷・風量・風向・流速を高精細画像で見える化する富士通の独自技術。
(注6)Green Policy Innovation(グリーン・ポリシー・イノベーション)とは :
富士通が持つノウハウや技術を活かした製品やサービスを利用し地球温暖化防止など、お客様や社会の環境負荷を低減するプロジェクトのこと。

データセンターに関する記事

[2009年3月2日 公開]

ジャーナル最新のテーマ

今月のテーマ:新世代ERP 迅速な経営判断と戦略展開を支援します 続きを読む


今月のアンケート 第2回集計結果公開中 情報の「見える化」による予測の実現を望む声多数 2009年11月17日集計 気になる結果は?


お客様の声をお聞かせください

富士通ジャーナルに掲載している記事やコンテンツについてのご意見・ご感想を、ぜひお寄せください。

ご意見・ご感想フォーム いただいた、お客様の声


お寄せいただいたご意見・ご感想については、富士通からの回答をお約束するものではありません。ご了承ください。
なお、富士通からのご回答を必要とするお問い合わせについては、
富士通ジャーナルに関するお問い合わせをご利用ください。