Fujitsu The Possibilities are Infinite

 

  1. ホーム >
  2. 富士通ジャーナル >
  3. 先端テクノロジー >
  4. FTPの約20倍の転送速度を実現する技術「BI.DAN-GUN」

FTPの約20倍の転送速度を実現する技術「BI.DAN-GUN(ビーアイドットダンガン)」

「BI.DAN-GUN」は、標準プロトコル「UDP」と富士通研究所独自の消失訂正技術「RPS符号」の融合により、遠距離拠点間で大容量ファイルの転送を約20倍にまで高速化します。


遠距離拠点間のファイル転送の実情

生産拠点を海外に置くなどしてグローバルな事業展開をする企業は増える傾向にあり、遠距離拠点間でのファイル送受信が増えている一方、取り扱うファイルのサイズも肥大化し続けています。そのため、以前よりもファイル転送(FTP)に時間がかかり、業務がスムーズに進まないといったケースも少なくありません。

大容量ファイルを転送する際、同じ事務所内であれば高速に転送されるのに、海外に送るとなると極端に時間がかかる、あるいはコストをかけて回線を2倍に増強したにも関わらず、転送速度は2倍にならない、といった現象を経験されたことはないでしょうか?

転送速度はRTTで決まる

ファイル転送が速くならない原因は一般に、使用されるプロトコルにあります。ファイルは一度にまとめて送られるのではなく、ある一定のサイズに分割され、少しずつ送信されています。現在、インターネットなどで使用されている「TCP(注1)」は、データを確実に届けられるように、受信側でデータを正しく受け取れたら確認応答(ACK(注2))を返す処理をおこなっています。

送信側は受信側のACKを受け取った後に次のデータを送信しますが、しばらく待ってもACKが来ない場合は送信が失敗したとみなし、ACKを受け取れるまで同じデータを再送します。また、再送回数がある一定数を超えた場合は以降の送信を中止し、ファイル転送自体をキャンセルします。TCPではこうしたエラー訂正のためのやりとりが発生するため、同じ回線速度であっても、データがネットワークを往復する時間(RTT(注3))が大きくなるほど転送遅延が大きくなり、転送速度が低下するのです。

RTTは、同じ事務所内であればほぼ0ですが、日米間で約100ミリ秒、日欧間で約200ミリ秒になります。ファイル転送速度は、このRTT値と転送データサイズで決まるため、RTTが大きいと、たとえ回線が空いていても帯域がフルに使用されることはなく、転送速度は速くなりません。

RTTの影響を受けないUDPに着目

RTTが大きい回線を使用しているお客様から、「海外との通信を高速化したい」というご要望を受け、富士通研究所では、RTTの影響を小さくするために、TCPに代わり「UDP(注4))を利用した高速転送の検討を開始しました。UDPにはエラー訂正の機能がなく、TCPのように受信側でACKを待たずにデータをどんどん送信します。そのため、TCPよりも高速転送が可能ですが、消失したデータは受け取れなくなります。音声や画像のストリーミングでは、途中で多少データがなくなっても全体への影響はそれほど大きくないため、UDPが用いられていますが、途中でデータがなくなるとファイルが破損してしまうファイル転送には通常使われません。

そこで、UDPのデータ消失を保証するために、消失訂正符号(注5)「RPS符号(注6)」を新たに開発。それまで日米間の6Mbps回線で500MBのファイル転送に26分かかっていたところを5分に短縮することに成功し、約5倍の高速化を実現しました。このUDP転送とRPS符号の融合によって実現した超高速化技術をパッケージとしてご提供しているのが、「BI.DAN-GUN(ビーアイドットダンガン)」です。

RPS符号の最適化

既存の代表的な誤り訂正符号としては、DVDやRAID6、二次元バーコードに使用されているRS(リードソロモン)符号というものがあります。この符号は消失訂正も可能ですが、そのぶん計算に時間がかかります。また、HDDなどに使用されているLDPC(low density parity check codes)符号は、計算は早いものの、データのオーバーヘッドが大きくなってしまいます。

RPS符号は、これらRS符号とLDPC符号のちょうど中間の特性を持ち、消失したデータを復元する処理に特化することで、可能な限りオーバーヘッドを減らし、かつ、計算式を簡略化することを目指しました。富士通研究所では、1と0の組み合わせで構成された1000×1000の行列から、最も高速かつオーバーヘッドの少ない行列を探索。その結果、LDPC符号の1.007よりも少ない1.002 にまでオーバーヘッドを抑えることができました。

高速転送技術を結集した「BI.DAN-GUN」

符号化をおこなうとその処理にかかる時間が生じますが、「BI.DAN-GUN」では、圧縮、暗号化、符号化、転送の各処理を複数のプロセッサを用いて並行しておこなうことにより、転送時間を極限まで小さくしていきました。こうして高速化された「BI.DAN-GUN」を性能評価するために、富士通研究所では、ネットワークエミュレータを用いて帯域10Mbps、RTT 330m秒の回線(日本と欧米間の専用線を想定)を擬似的に再現。「BI.DAN-GUN」をインストールするマシンは、送信側・受信側ともにCPU:Xeon(TM)3GHz、OS:Windows XPを用意し、転送速度を評価しました。

評価の結果、TCPでFTPを使った500MB のファイル転送に190分かかっていたところ、「BI.DAN-GUN」では10分にまで短縮され、従来の約20倍の効果が得られました。このように「BI.DAN-GUN」では、RTTの大きい遠距離間、また回線品質が十分でなくデータ消失が発生しやすい環境ほど、転送効率を高めることが可能になります。

「BI.DAN-GUN」では、高速転送機能のほかにも、回線の空き状態に応じてデータの送出量を自動制御する帯域の自動最適化や、マスタファイルの変更をローカル拠点と瞬時に共有できる自動ミラーリング、といった機能も搭載しています。また日本語に加え、英語にも対応しているほか、SEによる24時間サポートセンターを用意するなど、お客様のグローバル環境を考慮した支援体制を整えています。高速転送のソリューションは他社からも提供されていますが、そのほとんどは専用のハードウェアと独自プロトコルを使用したものです。「BI.DAN-GUN」は、PCにインストールして使うソフトウェアでご提供していますので、導入やバージョンアップの作業が容易におこなえる点でも優位性があります。

「BI.DAN-GUN」のさらなる高速化と利用シーン拡大を目指して

「BI.DAN-GUN」は企業内のファイル転送で広く利用されているいるうえに、2010年4月サービス開始予定の災害情報システムでは、インターネット衛星からの画像データ配信に使用されるなど、その利用シーンは拡大しています。現在は、携帯電話への高速ファイルダウンロードも視野に入れ、UDPが使用できない通信環境や、動画配信などにおいても高速転送を実現する技術の開発を進めています。

富士通研究所は、RPS符号計算をもっと高速化する技術、さらには、RPS符号を消失訂正だけでなく圧縮にも使う技術といった、新たな技術の開発をおこなっていくだけでなく、これらを最適に組み合わせて、より高速で、確実な転送を実現できるIT技術とソリューションをご提供していきます。

注記

(注1)TCPとは :
Transmission Control Protocol(トランスミッション コントロール プロトコル)の略。伝送制御プロトコル。エラー訂正などの機能を持つため、UDPよりも速度が落ちるが、信頼性のある通信を実現する。
(注2)ACKとは :
Acknowledgement(アクナリッジメント)の意。「確認応答」や「肯定応答」などと訳される。
(注3)RTTとは :
Round Trip Time(ラウンド トリップ タイム)の略。「ネットワーク往復時間」などと訳され、データが出て戻ってくるまでの時間をさす。
(注4)UDPとは :
User Datagram Protocol(ユーザー データグラム プロトコル)の略。エラー訂正機能を持たないためTCPよりも信頼性に劣るが、高速に転送できる。
(注5)消失訂正符号とは :
本来のデータとは別に冗長なデータを付加することで、何らかの原因でデータの一部が消失してしまった場合でも本来のデータを復元することを可能にするための技術。
(注6)RPS符号とは :
Random Parity Stream(ランダム パリティ ストリーム)の略。富士通研究所が開発した独自の消失訂正符号。

BI.DAN-GUN(ビーアイドットダンガン)に関する記事

関連情報

[2009年6月8日 更新]

ジャーナル最新のテーマ

今月のテーマ:新世代ERP 迅速な経営判断と戦略展開を支援します 続きを読む


今月のアンケート 第2回集計結果公開中 情報の「見える化」による予測の実現を望む声多数 2009年11月17日集計 気になる結果は?


お客様の声をお聞かせください

富士通ジャーナルに掲載している記事やコンテンツについてのご意見・ご感想を、ぜひお寄せください。

ご意見・ご感想フォーム いただいた、お客様の声


お寄せいただいたご意見・ご感想については、富士通からの回答をお約束するものではありません。ご了承ください。
なお、富士通からのご回答を必要とするお問い合わせについては、
富士通ジャーナルに関するお問い合わせをご利用ください。