ITILベースの構成管理を支援する統合CMDB技術
既存DBを仮想的に統合してシステムを見える化

富士通研究所は、システム運用を効率化するITILベースの構成管理データベース統合技術「統合CMDB(Federated CMDB)」を開発しました。この技術は「Systemwalker(システムウォーカー) IT Process Master」へも搭載され、標準化が進められています。
ITIL導入に欠かせない構成管理
近年、ITシステムはオープン化やマルチベンダー化が進んでおり、サーバ台数の増加やストレージ容量の増大と相まって、大規模化・複雑化しています。このため運用コストが増大しているだけでなく、人的ミスによるシステム停止やサービス品質低下の多発が大きな問題となっています。
こうした問題を解決するために、ITサービスの品質向上とコスト低減を目的とし、ここ数年注目されているのが、「ITIL(注1)」を規範としたITサービスマネジメントの手法です。そして、そのなかで基盤として考えられているのが、サーバやストレージ、アプリケーションといったITの構成アイテムを管理する「構成管理」です。
既存データベースを仮想的に統合する新手法
データセンターの運用においては、サーバ管理やネットワーク管理、サービス管理、資産管理など、それぞれの管理業務に最適化された運用管理ミドルウェアが存在します。
ところが各ミドルウェアは固有の構成管理データベース「CMDB(注2)」を保持しているため、アクセス方法やデータ形式が異なり、各データベースの連携は人を介さざるをえないのが実状です。
そのため、高いスキルの管理者に運用ノウハウを依存してしまったり、人的ミスによって管理情報の記述漏れや不整合が発生したりするといった問題を、多くのデータセンターが抱えています。

そこで富士通研究所では、こうした問題を解決するために各ミドルウェアの既存CMDBを仮想的に統合することにより、運用の効率と品質を向上させる「統合CMDB(Federated CMDB)」技術を開発しました。
これにより管理者は、アプリケーションのパッチ更新やハードウェアの保守、あるいはトラブルシューティングなど、運用におけるあらゆるシーンでシステムの情報を必要とする際、単一に仮想統合されたデータベースを参照すればシステム全体の構成を容易に把握できるようになります。
統合CMDBにおいてポイントとなる3つの技術を説明します。
データ形式の共通化
たとえば表形式やオブジェクト形式など、ミドルウェアごとに異なる名前・構造で管理されている構成情報を、統一されたXMLベースの「RCXML(Resource Control XML)」に変換することによって共通化します。
このRCXMLは、富士通が2004年に開発した記述言語です。データモデルを統一化できるため、「インフラ情報~サービス情報~ビジネス情報」の関係を管理することが可能となるほか、「購買~設計~構築~運用・保守」の各フェーズをまたいだ情報管理も可能となります。データの整合化
散在するデータベースの形式を統一しても、同一のサーバであると識別するための情報がシステム上にないために人手で対応付け(名寄せ)していた作業を、判断基準となるルールを設定することにより自動化します。
ユニークな値を持つ共通プロパティをキーとして異なるデータベースの同一の構成アイテムを特定する際に、DMTF(Distributed Management Task Force)で策定中の標準仕様で規定されている「Identifying Property」をもちい、どのように同一性判定をおこなうかを、外部からルールとして与えることができます。データの連合化
ミドルウェアごとに異なるデータベースを横断的に検索するために、各種CMDBを仮想的に束ね、統合ビューにより提供します。特定のサーバの管理者やリース状況を確認するなど、現状の構成を簡単かつ確実に把握することができるようになります。

このような統合CMDBを導入することにより、システムの見える化が実現し、いつでも最新の構成情報を確認できます。加えて、各種データベースの情報が自動的に関連付けられるため、たとえばあるスイッチがダウンした際に影響をおよぼすサービスを特定するといった影響調査にも応用できます。
さらには、システムの購買から設計、構築、運用、保守といったライフサイクル全体でデータモデルが統一化されているため、設計情報とその設計に基づいて構築・変更されたシステムの実機情報を統合的に管理し、自動的に比較することによって、設計どおりに変更されたかどうかを確認する予実管理に活用できます。

構成管理は、ITILが体系化しているプロセスの中心に位置付けられるものであり、統合CMDBはこの構成管理を、人手を中心とした作業にITを連携させ、運用管理の自動化、高品質化を目指した技術です。したがって、統合CMDBを活用して構成情報を適切に管理することにより、ITILの効果的な適用にもつなげることができます。

IT投資のおよそ7割は既存資産のメンテナンスや運用保守コストで占められると言われています。統合CMDBを導入することによって、影響調査漏れや設定ミス、作業手順の検証にかかる人件費削減につながり、運用保守コストの大幅削減が期待できます。また、既存データベースを有効活用できることからTCO(Total Cost of Ownership)を削減でき、見える化によって内部統制の要件にも応えることができます。
業界に先駆けて統合CMDBを製品化
富士通では、他社製品の構成管理データベースと連携するための標準規格の策定にも取り組んでいます。
2006年4月に発足した「CMDBf標準化WG」の初期メンバーであり、2007年10月には仕様1.0をDMTF(注3)に提案しました。現在、同WGはDMTF配下の「CMDB Federation WG」として、2009年2月に予定している標準仕様1.0勧告に向けた活動を推進しています。
また、統合CMDBの製品化にもいち早く取り組み、6月には業界初となる統合CMDB暫定仕様に準拠した運用管理ミドルウェア「Systemwalker IT Process Master V13.3」を出荷しました。統合CMDBと既存データベースのインターフェース部分に暫定版標準仕様のWebサービスを採用し、統合CMDBと個々の既存データベースを管理するアダプター部分に富士通が開発したMDR(Management Data Repository) Subsystemを搭載しています。
これにより、既存データベースに変更をかけることなく統合CMDBへそのままアドオンすることができます。
富士通では、これまでも社内のデータセンター運用部門と協力して先行適用試験を実施してきており、その結果は標準仕様、製品に活かされています。

自律するシステムを目指して
富士通研究所では、システム自身が判断し、障害復旧やシステム最適化を自律的におこなう「自律コンピューティング」を研究テーマの1つとして掲げており、今回の統合CMDB技術の開発はその一環となるものです。システムみずからが状態を監視し、自律的に制御することにより、お客様が安定したサービスを提供できるIT環境を目指し、これからも尽力していきます。
注記
- (注1)ITILとは:
- IT Infrastructure Library。システム運用管理、ITサービス管理に関するベストプラクティスを集めた手引集。1980年代後半に英国政府が策定し、現在、著作権はOGC(Office of Government Commerce)にある。ITサービスのプラン、開発、提供、維持の各プロセスに関するガイドラインが定められていて、IT部門はその各ガイドラインに合わせてサービスレベル合意書(SLA)を締結。日々のプロセスを改善し、全体最適を目指す。
(【出典参考】 it-SMF JAPAN オフィシャルサイト) - (注2)CMDBとは:
- ITIL用語。ITILにもとづく運用管理においてITシステムのコンポーネントに関する全ての情報を保持する概念的なDBで、サーバ情報、管理者情報、イベント情報などが含まれる。ITILプロセスはこのCMDBの情報にもとづいて動作するため、「CMDBはITILの中枢」とされる。
- (注3)DMTFとは:
- Distributed Management Task Force。システム管理に関連する標準化活動をおこなっている業界団体。1992年創設。
[2008年10月1日 公開]
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