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導入事例/株式会社富士通ITプロダクツ

徹底した見える化で、従業員の意識を変え、プロセスを改善し、製造リードタイムの半減、倉庫スペースの大幅な削減を実現
富士通ITプロダクツ(以下、FJIT)では、組織の壁を超えた、全員参加による生産革新活動に取り組み、大きな成果を出しています。そこでは、ラインでのミスをなくすRFID導入や、「おせっかい活動」など、ユニークな試みがなされています。


[連載索引] フィールド・イノベーション人が主役のIT活用を目指す |  2008年は実践の年 |  徹底した「見える化」による生産革新 |  富士通フォーラム2008ご紹介 |


「見える化」し、人の意識と行動を変えるまで

やる気にならなければ改善は進まない

代表取締役社長 高田 正憲

「現場で働く従業員一人ひとりが納得し、やる気にならなければ、いくら言葉だけで言っても、真の改善は進みません」と、高田は語ります。それは、2003年以来取り組んできた生産革新活動でトップが身をもって感じたことでした。

富士通グループのコンピュータシステム製造拠点であるFJITでは、QCD(品質・コスト・納期)の追求による顧客満足度の向上を目標に、2003年10月から生産革新活動を開始しました。2004年4月にはコンサルタントを入れ、トヨタ生産方式(以下、TPS)を導入。「整流化」「1個流し」「後工程引き取り」など、TPSによる製造現場での改善を進めました。

しかし、1年を経過しても思うような成果が上げられませんでした。それは、言葉だけで、TPSの仕組みを真に理解しておらず、従業員の意識改革もできていなかったことに原因がありました。

ラインを止めることの意識を変える

製造技術統括部 尾田 順一

「たとえば、TPSでは製造ラインで問題が発生したときにすぐに下がっているヒモを引き、ランプを点灯させてラインを止めるという『アンドン』というものがあります。問題が起こったらヒモを引くだけですから、仕組みとしては単純なのですが、ラインを止めるのは「悪」であるという思い込みがありますから、最初はこれができないのです」(尾田)。

現場の作業者にとっては、ラインを止めることは自分のミスを認めることであり、同時に周りに迷惑をかけるという思いもあって、かなりの抵抗があります。しかし、そのままラインを流し、不良品を出し続けるよりは、一刻も早くラインを止めることの方が、全体にとってはより良いことなのだという全体の共通認識を持たせることが大切になります。現在、全てのラインにアンドンを設置することができました。

単に用語を覚え、仕組みを真似るだけでは、真の改善はできません。何よりも従業員一人ひとりの意識改革がいかに重要であるかが、これらをを通じてよくわかります。

工程の「見える化」を始める

そこで、従業員の意識改革を進めるとともに、だれもが理解できる工程の「見える化」を始めました。たとえば、それぞれの現場で「物と情報の流れ図」を模造紙で手書きに書いて貼り出し、「現状」「狙う姿」「あるべき姿」の3つの工程を書き出しました。

こうすることによって、現状でどこに滞留があり、どこを改善すればあるべき姿に近づけるか、問題点が明確になり、意識して改善していけるようになりました。

さらに、現場にモニタとスキャナを備えた「Idea Post」を設置。思いついたときに備え付けの「気づきシート」に提案やアイデアを書いて読み込ませれば、すぐに社内のイントラネット上に反映される仕組みを作りました。もちろん、提案した者にインセンティブも与えました。その結果、提案件数は飛躍的に伸びました。

しかし、ある時期から提案件数が鈍化し始めたのです。

成果に対しては必ずリターンを返す

いくら良い提案をおこなっても回答者の滞留があり、意欲がそがれていたのが原因でした。

そこで、回答者にもインセンティブを与える仕組みを作りました。その結果、現在では提案件数は年間3万件以上、一人平均30件にものぼっています。


提案件数の推移

「成果に対しては必ずリターンを返すこと。改善活動ではこれはとても重要です」(高田)。

同社では、経営の要は「人」であるという考えから、人材育成への取り組みを積極的におこなっています。そのひとつに、リーダー実践教育である「研修塾」があります。これは、リーダーが1週間現場を離れ、丸1日別のラインを観察し、改善点を見つけ、その現場が納得すれば、ラインを改善し、生産革新をおこなうというものです。2006年後半から実施し、現在2カ月に一度おこなわれ、7回目を迎えています。組織の壁を取り払い、自ら改善をおこない、その結果が目に見える形で現われることで、意識改革を促すとともに、生産革新活動の推進につながっています。


2カ月に一度リーダー実習研修(研修塾)を実施

プロセスを改善し、RFID導入によりミスを削減

ミスを起こさない仕組みをつくる

生産革新活動を開始し、高田が優先したのが、とにかくひとつでもいいから早く成功事例を作ること。それによって、現場の意識が変わり、改善への意欲も高まると考えたからです。その代表的な例がプリンタ組立のラインです。ここは工程が短く、月に20種類のものを作る多品種少量生産となっています。

「ラインを巡視していると、社員が私の前に来て、『先日、私がプリンタを壊しました』とあやまりました。しかし、『それは違う』と諭しました。ミスが出る状況を放置している上司に責任がある。全責任を社員個人に帰してしまうと、改善策や仕事に対する意欲は出てきません。ミスが起こるなら、ミスを起こさない仕組みをつくればいいのです」(高田)。

たとえミスがあっても、決して従業員に対して怒らない。それが高田の信念です。怒ることでその場は解決できたとしても、それによって社員が萎縮し、仕事や改善の意欲がそがれてしまっては何にもならない。社員の意欲を引き出すことこそ第一に考えるべきであるとの思いがそこにあります。

組立ラインにRFIDシステムを導入

プリンタ組立では、作業者はライン脇の部品置き場から、所定の部品を取り出し、取り付けるようになっています。しかし、部品点数が多く、どれも似たような部品が多いため、熟練していないと、ここで間違った部品を取り出してしまうことでミスが起きていました。

そこで導入したのが、「ポカヨケシステム」と社内で呼んでいるRFIDシステムの導入です。これは、作業者の腕にRFIDリーダをつけ、部品の棚にある部品情報が書き込まれたRFIDタグで照合し、間違った部品を取り出そうとすると、振動で通知する仕組みです。現場では派遣社員が増加し、作業前の打ち合わせや、ベテラン社員が付いて作業手順を教えるなどの手間も増えています。プロセスを改善し、RFIDを活用することで、作業が効率化し、ミスの削減にもつながりました。

また、現場では装置の組立~試験という一連の作業が完了すると、次のものを流すように、天井を伝っている透明のパイプでピンポン玉を流すというユニークな仕組みも取り入れました。工程順に1台ずつ組み付け次第次工程に流す1個流しや、後工程引き取りのために使われ、大きな効果を発揮しています。


プリンタ組立ラインにRFIDシステムを導入

さまざまな生産革新活動を実践

FJITではこの他にも、ものをつくるペースメーカーとして「平準化ポスト」を設置し、15分単位でいま何を作ればいいのかを「見える化」する仕組みや、人(Man)、機械(Machine)、材料(Material)、方法(Method)という4Mの視点でチェックして、その日の変更点を見える化した「変化点管理ボード」を設置し、現場の全員が変更点をすぐに確認できるようにし、ミスの削減を実現しました。

さらに、富士通のデジタルモックアップ「VPS」を活用し、3次元データを用いた重量物の作業検証や作業手順書の自動生成をおこなうことで、開発部門と連携し、設計の段階から製造を考慮したものづくりが可能となりました。

こうしてさまざまな生産革新活動を積み重ねた結果、製造リードタイムが半減。12カ所あった外部倉庫などのスペースを1カ所に集約できました。

製造リードタイムが半減

互いの信頼関係を築く「おせっかい活動」

そして、2007年2月から高田が最も力を入れて取り組んでいるのが「おせっかい活動」です。

「昔は上司も部下も互いの私生活に入り込み、個人的な悩みの相談にも乗って信頼関係を築いていました。個人情報やプライバシーの問題はありますが、徹底的におせっかいをすることで改善点を見つけることはできると考えているのです」(高田)。

導入後2カ月で全従業員の3分の1にあたる370人が参加し、1341件の提案が上がり、全て改善しました。また、日常活動の中でも、皆が『おせっかい』をかけて、注意した人にメッセージを添えて贈る「ありがとうカード」も総務の女性の発案で作りました。

「活動は長い時間をかけて、粘り強く継続的に進めていくことが重要です。今後は、製造部門だけでなく、間接部門へも活動を拡大していきたいと考えています」(高田)。

常に現場を日課のように歩き回り、従業員と会話を交わし、活動の意義を高田は説き続けている。生産革新活動を成功させるために、トップがその重要性を説き、旗を振り続けることの大切さを実感し、自ら先頭に立って実践を続けています。

組織を超えたおせっかい活動を展開

[2008年4月1日掲載]

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