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第2回 できる社員の言葉の伝え方
 ― 好感度を上げる5つのポイントとマジックフレーズ ―

第1回では、様々なビジネスシーンでの間違った表現・不快な表現について、言葉遣いの基本を見直していきましたが、いかがでしたか? 自身を振り返り「使っていた」「知らなかった」と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

言葉は相手に対する敬意の表れであり自身を表現することから、話し手の品格を現します。「話し手の品格」は、発する言葉に対して現れるということはもちろん、直接お客様と顔を合わせるようであれば見た目や表情、口調や声のトーンにも現れます。ただ文法上正しい敬語を使うだけでは、コミュニケーションが円滑にいくとは限りません。

そこで第2回は、相手の立場や人格を尊重し、「好感度を上げる5つのポイント」をお伝えします。相手に受け入れていただくためのテクニックを使い、実践に繋げていきましょう。

ポイント1. 「クッション言葉」「配慮の表現」で謙虚な気持ちを示す

相手に何かをお願いする時や言いにくいことを伝える時に、内容を伝える前にひと言添えることで、クッションのように相手の心に与える衝撃を和らげる魔法の言葉、それが「クッション言葉」です。特に、相手の意向に添えない「お断り」「お詫び」、「依頼」やプライベートな情報を伺う際には、クッション言葉を用いることで、話し手の謙虚な気持ちを示すことができます。


「クッション言葉」の使用例
クッション言葉使用例
失礼ですが失礼ですが、どちら様でいらっしゃいますか?
恐れ入りますが恐れ入りますが、こちらの椅子にお掛けになって少々お待ちいただけますか?
申し訳ございませんが申し訳ございませんが、あいにくAは入荷待ちの状態でございます
もしよろしければもしよろしければ、Bではいかがでしょうか?
お手数ですがお手数ですが、こちらにご記入いただけますか?
ご足労をお掛けいたしますがご足労をお掛けいたしますが、弊社までお越しいただけませんでしょうか?
差し支えなければ差し支えなければ、生年月日をご記入いただけますか?
せっかくですが せっかくですが、その日は所用がございまして、参加いたしかねます

ビジネスシーンで「クッション言葉」を使いこなせば、相手に対する意識とスキルの高さを感じさせ、安心感・信頼感に繋がります。

また、相手への「配慮の表現」でも話し手の謙虚な気持ちを示すことができます。状況に応じて、正しい敬語と言葉を尽くした「配慮の表現」で相手への気持ちを示しましょう。


「配慮の表現」の使用例
状況使用例
わざわざ来てもらった時 わざわざお越しいただき、申し訳ございませんが…
上司へ声を掛ける時ただ今 お時間よろしいでしょうか?
意向に添えない時あいにく 佐藤は席をはずしておりますが…
自分の主張を柔らかく伝える時ただちょっとそんな気がしたものですから…
相手の意見を受け止める時なるほど そういう見方もあるかもしれませんが…
夜遅く連絡する時 夜分遅くに申し訳ございません

(注)太字は、「配慮の表現」となる部分

ポイント2. 命令形ではなく、「依頼形の表現」で話す

相手に何か依頼するとき「~してください」と言っていませんか?
例えば、お客様に待っていていただく時の「こちらでお待ちください」という表現は、丁寧な言い方に聞こえますが、実は命令を丁寧語で表現したもの。相手に対し一方的に言葉を投げる命令形であり、威圧感・不快感を与えます。上司やお客様に対しては失礼な表現です。この場合、相手に配慮し「こちらでお待ちいただけますか?」と相手に依頼する形に変えます。すると、「はい、いいですよ」と判断するのは自分なので、嫌な気持ちを抱かず素直に行動することができるのです。

さらにポイント1の「クッション言葉」と「依頼形の言葉」をセットで用いてみましょう。

恐れ入りますが、こちらで少々お待ちいただけますか?[クッション言葉]+こちらで少々お待ちいただけますか?[依頼形の表現]

「こちらでお待ちください」よりも“恐れ入りますが”という「クッション言葉」と、“お待ちいただけますか?”の「依頼形の表現」にすることで、相手の受け止め方もずいぶん変わってくることと思います。

ここで注意していただきたいのが、口調やトーンを現す「音声表現」です。言語表現が良くても、語尾で音を下げてしまうと、威圧的な命令調に聞こえます。語尾は優しく音を上げること。ファーストフード店の「ご一緒にポテトはいかがですか?」と聞かれ、思わず「はい、お願いします」と言ってしまうような、明るく語尾を上げた表現を意識しましょう。

ポイント3. 否定的な言葉は「肯定形の表現」にして、更に代案を提示する

「できません」「わかりません」と頭ごなしに否定することは、冷たい印象を与えます。マイナスの印象を避けるためにも、否定形ではなく「肯定形の表現」に置き変えていくと良いでしょう。

「できません」→「いたしかねます」
「わかりません」→「わかりかねます」

例えば、会社として出来ないことをお客様からお願いされた場合

大変申し訳ございませんが[クッション言葉]+ご希望には沿いかねます。[肯定形の表現]

「クッション言葉」+「肯定形の表現」にすることで、ネガティブな内容を柔らげることができます。ですが、ここで終わってしまうと相手の期待には添えないままです。そこで、何か必ず代案を提示します。

もしよろしければ、○○であれば可能ですが、いかがでしょうか?[代案(語尾は相手の意向を確認する形にします)]

「クッション言葉」+「肯定形の表現」+「代案」と3つのステップを踏むので、この話し方を“3ステップ話法”と言います。
否定的な内容だからこそ、相手への配慮・思いやりを示しましょう。

ポイント4. 自分勝手な「D(ディー)ワード」は使わず、「YES+BUT法」で切り返す

「でも」「だって」「だから」といった頭文字の“D”を取ったこの言葉は、「Dワード」と呼ばれています。相手の話を受け入れない自分勝手な表現です。消極的でマイナスのイメージや幼稚な印象を与えてしまいますので、ビジネスシーンでは避けましょう。

相手が話している時に「でも」で遮ってしまうと、不快感を与えクレームにも繋がります。

まずはいったん「そうですか」「はい」「なるほど」など“YES”で受け止めてから、「しかしながら」「ですが」など“BUT”で言葉を続けます。この話法を「YES+BUT法」と言います。
この場合、「Dワード」は次のように置き換えましょう。

ビジネスにふさわしい「Dワード」の使用例
Dワード使用例
でもそうですか。しかしながら~
だってそのようにおっしゃいましても~
だからはい、ですから~

“YES”で相手の言葉・意見を受け止めることは、相手を認めること。相手を大切に思う気持ちの表れです。「でも」「だって」「だからぁ」と感情的に返すのではなく、「そうですか」「はい」とうなづきながら“YES”で受け止めることで、冷静な気持ちに切り替えて論理的に伝えましょう。

ポイント5. 身振りや姿勢、表情…言葉の伝え方を意識する

人は五感(視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚)を使って、コミュニケーションをとっています。相手に快く受け入れてもらうためには、言葉そのものも大切ですが、それを伝える時の身振りや姿勢、表情など言葉ではない“非言語メッセージ”も意識しなくてはなりません。

例えばお客様からのクレームに対し、「申し訳ございません。すぐにお取り替えいたします」と強い口調で言い、お辞儀もしないで商品を受け取るのと、お客様にちゃんと体を向け、しっかりと目を見て、お客様の話をうなずきながら聞き、「申し訳ございません」とお辞儀し、「すぐにお取替えいたします」と商品を受け取るのとでは、どちらが誠意を感じられるでしょうか? もちろん、後者ですね。お詫びする時には、申し訳ない表情と態度で表すことが必要です。人は言葉を伝える際に、感情もやりとりしているのです。

文法上正しい敬語であっても「優しい表情と暖かい口調」であるか、「無表情で事務的に冷たい口調」で言うかで受け取る印象は違ってきます。相手に好印象を与え「この人の話を聴いてみよう」「この人と話をしてみよう」と相手を受け入れる気持ちになってもらうことが大切なのです。

声を聴くだけで笑顔がイメージできる声を笑声(えごえ)と言います。笑顔と笑声(えごえ)で好印象を与えましょう。


今回は、相手の立場や人格を尊重し、「好感度を上げる5つのポイント」についてお伝えしましたが、いかがでしたか。品格を表すということが、どういうことかご理解いただけましたでしょうか。

最後にとても大事なことを一つお伝えしたいと思います。それは、心をこめて相手と接するこということです。人と人との心が通い合った状態(信頼関係)を心理学では『ラポール』と言います。『ラポール』とは、フランス語が語源で「橋をかける」と言う意味。コミュニケーションは、相手と自分の心に橋をかけることなのです。相手を大切に思う心を言語・非言語で表現していきましょう。


次回は、「部下のやる気を引き出すほめ方・叱り方」として部下を育てる上司からのコミュニケーションをお伝えします。

[2009年9月1日 公開]


著者プロフィール

山田 千穂子(やまだ ちほこ)
人財育成コンサルタント、株式会社レインボーコミュニケーション 代表取締役、岡崎女子短期大学 非常勤講師

愛知県瀬戸市出身、南山短期大学人間関係科卒業
安田火災海上保険株式会社(現 損保ジャパン)にて支店長秘書を勤め、2000年より人材派遣会社にて研修講師登録、企業の人財育成とともに数多くの講師育成にも携わる。
2007年3月、株式会社レインボーコミュニケーションを設立、代表取締役就任。
コミュニケーション心理学ともいわれる交流分析やNLP(神経言語プログラミング)など心理学をベースにした豊富な知識で人間力を高める研修を実施。
講師を軸に人財育成コンサルティング、キャリアカウンセラー、催眠療法士としても幅広く活動中。

主な著書:『なんで挨拶しなきゃいけないの? マナーの「ナンデ?」がわかる本』
http://www.rainbow-c.jp


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