Fujitsu The Possibilities are Infinite

 

第55回 レディーファースト

レストランに着いたとき、さっとドアを開けて中に入れてくれる。
テーブルに座ろうとする自分の椅子をすっと引いてくれる。
帰り際、コートを着る時、そっと着せてくれる。
などなど、男性が心砕いてしてくれる「さっすっそっ」行為は、女性の心を和ませ、よりエレガントにしてくれます。

欧米に出かけるたびに、嬉しくなるのが、この男性諸氏のいたわり動作。
いわゆる『ladies’ first 』の則った彼らの気配りを日本の男性にも見習って欲しいと心から思う所存。
しかし、この『ladies’ first』の起源は、実は、極めておぞましいのです。
中世ヨーロッパでは、騎士の間で、暗殺が日常茶飯におこなわれ、騎士たちは自分の身を守るためにはどんなことでもいとわなかった模様。
そして、妻などの女性を一緒につれて歩いては、暗殺者から身を守ろうとしました。
たとえば、暗い建物内には先に入らせ、刺客が出てくるかどうか様子見をする。
食事もまず彼女たちから口をつけてもらい、安全だと確認したら自分も食す。
「盾」として利用された女性たち、好きな男のためだからこそ、命がけだったのかもしれません。そして時が移り、女性をいたわる気持ちだけは残って今の『ladies first』 となりました。

ここで一応、これだけは押さえておきたいポイントを列記しますね。

  1. 部屋に入るまたは出る時、ドアを開けるのは、男です。そして「Go ahead」「After you」などの言葉がけをしてさっと彼女を通した後に、自分も入って、または出て、そっと背中でドアを閉めます。
  2. 道を歩く時、車道側は男で安全なほうが女性です。時々あべこべのカップルをお見受けしますが、ぜひ守ってあげてくださいませ。
  3. レストランなどで、テーブルにどちらが先頭に立って歩いていくか?格式あるレストランでは、usher (案内人)がいます。彼/彼女が引率する時は、女性が最初で男性が後。Casual でusherが居ない場合は、『men’s first』 で行きましょう。
  4. 女性の椅子を引くのは男性の役目。また万が一、女性がテーブルを離れたとき、戻ってきたらちゃんと席を立って迎えます。
  5. 車の場合、助手席に座っている女性は自分で開けません。運転している男性が彼女のドアも開けてあげること。ただし、前を通らない。後部を通って開けてあげてくださいませ。

などなど〜。

さて、では間違えやすい質問です。
階段の上り下りはどうなるか?
慣れている方でもわかり難いかもしれませんね!

正解は、
上る時は、女性を最初に、降りるときは男性が最初です。
なぜゆえこのようなアクションになるか?

女性がロングドレスを着ていた時代、彼女たちはウエストをぐっと締めてとにかく優雅に見せたかった。女性ならではのカワイイ見栄です。
しかし、実際、きつすぎて、食事ものどに通らない状態だったそう。
気を失う女性が後を絶たず、胸に入れているハンカチには、気付け薬がしみこんであったと聞きます。
特に女性が失神しやすいのが階段で、倒れても受け止められるようにという配慮から、男性の立ち位置が決まったということです。
マンガのようなお話ですね。

現代のように、男女平等であっても、やはり要所要所で、ふと優しいいたわりを受けると、女は嬉しいと思うのです。
Men be gentle (男性よ、優しくなってくださいませ)かな!


石橋眞知子(いしばし まちこ)
エッセイスト&プロデューサー
学習院大在学中から深夜放送のパーソナリティとして活躍。
シカゴ・ノースウエスタン大学で日本語講師。オックスフォード大学留学。
異文化コミュニケーションやマナーをテーマに執筆やエッセイ、そして講演会などで活躍している。
現在の執筆活動の拠点は「Sankei Express」。日曜版5面「女の本音・男の本音」、木曜版1面「よのなか万華鏡」を執筆、その視点にはたくさんのファンから絶賛を浴びている。
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