第53回 体を使った英語表現 その2
日本語にも英語にも多くある、体の部位を用いた表現について、今回は、先日カフェでたまたま耳にした男女の会話を例にあげ、わかりやすくご紹介します。
表参道のオープンカフェ。寒空にもめげず、たくさんの外国人が町の景観を眺めながら、お茶をすすっています。
私も暫し、外のピリッとした冷気に当たろうと、一人毛布に包まって座っていると、英国人らしきカップルのひそひそ話が伝わってきました。
‘Oh, no, I’ll lose my face in a way.’
と男性が両手を肩まで挙げて、顔をしかめると、彼女が首を横に振って言いました。
‘I’m sure you won’t. He’s just pulling your leg.’
でも彼は聞き入れない様子で、
‘Oh, come on! He’s just a pain in the neck.’
とまた手を大きく振り払いました。
傍で聞いている限り、さっきから『face』 だの『leg』 だの『neck』だのと、会話の端々に体の部位表現が出てきます。
二人の間柄やら問題などはともかくとして、生きた英語に感動しつつ、昨年一度だけ‘からだの部位表現’を書いたのを思い出しました。
年も改まったついでに、再度、体の部位表現をご紹介してみましょう。
会話に出てきた『face』、『leg』、『neck』について
face
まず『face』 は、「顔、顔色」のほかに「表面、面、文面」などを指します。
ゴルフクラブの打つ側もフェースと言いますよね。
また、「面子、面目」の意味にもなり、
- Lose one’s face
といえば、「面子をつぶす」となるし、反対に
- Keep one’s face
となれば、「面子を保つ」となるのです。
日本語の面と同じ使い方なのが面白いですよね。
leg
一方、『leg』 を使った表現も多彩です。
- Shake a leg or you'll be late for work.
『Shake』とは、「振る」の意味ですが、
- Shake a leg
で「急ぐ」になります。
通常、命令形が多く、上の例文のような言い方を良く耳にします。
- Let’s stretch our legs.
イギリス人は、ホント歩くのが大好きで、すぐお茶をしたがる典型的日本人の私とは、正反対。冬の真っ最中でも、ただひたすら歩く彼女たち。
ダベリングよりウォーキング好きな国民性ですが、それだけ歩けば、足も重くなります。
ここらでお休みと言う感覚はまさに
- Stretch one’s legs
「足を伸ばす」なのですね。
さて、始めの会話にも登場した
- Pull one’s leg
も、そのまま訳せば、「足を引っ張る」という意味に取られてしまいますが、そんなに強い悪意はありません。
「からかう、ごまかす」なので要注意。
- She’s all legs.
そのまま「彼女は足だけしかない」と訳されますが、まさに「ひょろ長い足をしている」という羨望をこめた表現であります。
顔が小さくて脚の長いモデルタイプかな。あ~羨ましい!
さて、ここで質問!
Q : 耳に all を用いたらどんな意味になるでしょうか?
‘I’m all ears.’
そのまま訳すと、「耳だけになる」。
そうです…。つまり「一心不乱に耳を傾ける」の意味になるのです。
neck
そして最後に、『neck』。
- He’s just a pain in the neck.
と言っていましたが、
‘a pain in the neck’ とは、「首に感じる痛み」。
つまりは、いらいら、うんざりさせるような厄介な人やことを指します。
もう一つ良く使 う『neck』の表現を上げました。
‘be up to one’s neck in ~’
もめごとや問題などのような大変な状況に巻き込まれている感覚を表します。
- She is up to her neck in debt. (彼女は借金を抱えている)
首までどっぷり浸かっているイメージがしますね。
ところで、体の部位を使った表現が多いのは、なんといっても日本語がダントツだと言います。
日々の感情を体ごと表そうとする日本人の心が、見える気がしますよね。
石橋眞知子(いしばし まちこ)
エッセイスト&プロデューサー
学習院大在学中から深夜放送のパーソナリティとして活躍。
シカゴ・ノースウエスタン大学で日本語講師。オックスフォード大学留学。
異文化コミュニケーションやマナーをテーマに執筆やエッセイ、そして講演会などで活躍している。
現在の執筆活動の拠点は産経新聞「ビジネスアイ」。日曜版5面「女の本音・男の本音」、木曜版1面「よのなか万華鏡」を執筆、その視点にはたくさんのファンから絶賛を浴びている。
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